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6Ⅰ9~3人の使者~  作者: 笹丸一騎
3章「容疑者」
14/37

14,「11名」

「マンホール、未来、黒坂君の娘、不敗の騎士。そして、別人の白仮面。前回よりも情報量が多すぎる」


猪狩講師は、自身の研究室にあるホワイトボードに、先ほど述べたキーワードを箇条書きでまとめた。


確かに彼女が言った通りだ。前回と比較しても、最初の状況から向こうの滞在時間まで、何もかもが異なっている。いや、最後の最後で白仮面が登場し、俺が記憶を失うことは、共通点ではあるか。


「最初の話を聞いていないからあれッスけど、そうポンポン未来や過去に、行けるもの何ッスか?」


「異能者なら可能と言いたいが、私も少しかじった程度にしか、異能者のことは語れない」


彼女は、ホワイトボードに「1945年 ゲルマニア宣言」と記載すると、彼女の特別講義が始まった。


「今から65年前の大戦争において、とある独裁者が、異能者という存在を、世間に公表した。この事は後に“ゲルマニア宣言”と呼ばれ、全世界に異能者という存在が広く認知されるようになった」


「そう改めて言われると、よく共存していますね?」


俺の質問に彼女は「理由は、その割合だろうな」と言いながら円を1つ描いた。


北浦が「割合?」言うと、円に線を加え始める。その線の割合は、大体7対3の割合だった。7割の部分には“無能者”と、3割の部分には“異能者”と付け加える。


「戦争終結後、各国で異能調査が行われた結果。その割合は3割を超えたという」


「3割も?」


「ああ意外だよな。また潜在的、後天的に能力を得るケースも少なくなかった。これはとある学者の意見だが、本当は人類の半分近くが異能者であると言っていた」


更に、5対5になるように、彼女は点線を加える。


「『明日は我が身』ではないが、終戦から現在に至るまで、世論を巻き込んだ差別対象にはならなかった。それでも、持つ者と持たざる者の溝は、埋まることはない」


彼女が言う“溝”というのは、恐らくあのことを指しているのだろう。


「確か、夏休みに入ったあたりで、いつもあの飛行機事故の追悼番組をやっていたッスね」


今から10年前、1999年の世紀末の夏。飛行機の墜落事故が発生した。その飛行機には多くの異能者が搭乗しており、異能者の存在がクローズアップする年となった。


そういえば、あの事件は、1度目の過去と同じ年だったか――。


「そう考えると、今回の出来事。黒坂和樹が関係しているのは必然なのかもしれないな」


「どういうことッスか?」


「彼が在学する大学の学生が、今回の事件に巻き込まれた。その証拠に、移動先にいた人間が、黒坂の関係者。そして、白仮面と玲という女性は、ともに異能者だ」


「だけど、黒坂さんって、確か異能者じゃないッスよね?」


「彼は、な」


「彼は?」


「彼の父が経営する、黒坂コーポレーション。その前身である“黒坂重工”も含め、異能者に関係することの大半を、あの会社が担っている」


社長である黒坂 董吉氏の妻が、異能者であるから、予測の範疇だと思う。


「それにだ――」


何故彼女は、そこまで――。


「あまりこれは、世間で知られていないことだが、あの飛行機事故に搭乗していた人間は、当時黒坂重工が企画した計画の為、集められた人物だとか」


「「っ!」」


世間にあそこまで、知られている事故にも関わらず、何故その事実が公になっていない?それに、何故それを、彼女は知っている?


「どこが少しかじった程度ッスか。というか、その企画した計画って?」


「さすがにそこまでは、ただ異能者の立場を向上する為だったと聞いた」


「誰に?」


「大学生時代、異能者の研究に、熱心だった知人がいてな。彼女は、異能者に強い憧れをもっていた。確か、黒坂コーポレーションに就職した筈だ」



暗い部屋の中、いくつものモニターの前で、自分は、今か今かとハンカチの調査結果を待っていた。


最初にアレを見た時「まさか」と思った。母方の家は旧家で、誰もが知る戦国大名の子孫だったとか、その名残からか。その家の者が、14歳になった時、赤備えの物が贈られる。


『解析完了』


残念なことに、母には兄弟がいない。その為この風習は、自分が引き継がない限り、続くことがない。なのに、なのにだ。


『データを表示します』


今目の前には、見知らぬ赤いハンカチがある。更に言えば、その所有者と思われるイニシャルは「R.K」。因みに、母方の性は「K」ではない。つまりこれは――。


――未来の自分が、子に送ったモノ。


何故そう断言できるのか?もしかしたら、模造品。若しくは、全く関係ない何かではないか。本来なら、そう思うだろう。


何故ならこれは、謎の仮面を被った者が、落とした代物で、更にその人物は、過去に移動したという。


だが自分は、そう思わなかった。理由は2つ。1つはイニシャル。恥ずかしい話だが、自分の子どもに、どのような名前にするか、相手もまだいないのに、既に決めていた


いや、アレは決められてしまった。という表現が正しいか――。とにかく、その名前は『R』で始まり、『K』は必然的に『黒坂』となる。


2つ目は、自分の母にある。これを見た日の朝、珍しく母から自分に、話しかけてきた。


『今日、何か特別な用事はある?』


「いや、ないけど」と自分が応えると――。


『なら今日彼方は、自分の醜態を晒すことでしょう』


母の能力は、一番近くで見ていた。あの人の予測が、外れることはない。そして、『子の恥は、親の恥』と口癖だったあの人だ。それを全て考慮すると――。


「――“あの子”から、ハンカチを盗んだ訳か」


ようやく結論に辿りつき、既に表示されていた結果を確認する。


終戦後、日本政府は全国民に対し、異能者であるかどうかの調査を行った。その委託先が父の経営していた黒坂重工。それ以降も、日本で出産された人物は、全てこのデータベースに蓄積される。


正直、ただの違法行為だが、今それを考えられる程、自分は冷静ではなかった。


「検出された人物は――11人!?」


そのメンバー内、2名が該当者なし。1人は“あの子”として、残りの10名が候補者となるが、それにしても多い。それに――。


「何故、皆が?」


そこに表示されている大半が、オカルト研究第七支部のメンバーなのである。現在の3年生から1年生の計7名。残り2名は――。


「久遠 希と、鹿島 薫?」


久遠という子は、今年の文化祭で知り合った女の子だが、もう一人は誰だ?


この人物を更に検索した結果、うちの大学の1年生だと判明した。出身は島根で、浪人を1年経験した後、うちの大学へ進学。つまり、自分と同い年。


「そう言えば、母さんが珍しく褒めていた人物も、鹿島 薫だったような――」


――いや、だから何だ?


100歩譲って、このメンバーが白仮面と関係する人物だとしよう。だとしたら、このメンバーの共通点は何だ?同じ大学?いや、希ちゃんは確か高校3年生。いや、将来的にうちの大学に入る可能性もある。


そうなるとサークルメンバー?いや、鹿島 薫は、サークルを認知していない可能性が高い。だとすれば――。


いやいや、もっとシンプルに考えよう。あの子を含めた10名はフェイクで、残り1名の該当者がいない人物が、白仮面だと――。


『該当者なしのDNA調査完了。これより該当者をAとBに分けて呼称』


予め、該当者がいない2名について更なる調査をすすめていた。


『該当者Aは、黒坂 和樹氏との肉親率94.6%、女性の確率高』


「やはり1人は、あの子で間違いないみたいだ」


『該当者Bは――』 


「え?」


『該当者Aとの肉親率100%、女性の確率高』


「待て待て待て待て」


つまり何だ?該当者不明の2人は、親子。もしかして、あの子の――。


『また、黒坂 和樹氏と該当者Bの肉親率5.1%』


――その可能性はないか。


「和樹様、お時間です


タイミングを謀ったかのように、女性の声が室内に響く。自分は通話用のボタンを押して「分かりました」と返答する。


結局分かったことは、このハンカチは、自分の娘のモノ“だった”。というところまでか――。


借りたハンカチと、今回のデータ全てを回収し、暗い部屋から退出する。すると、先程声をかけてくれた女性が、部屋の外で待っていた。


「ありがとうございました――“犬伏”さん」


「いいえ、和樹様のご要望なら、いつでも」

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