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6Ⅰ9~3人の使者~  作者: 笹丸一騎
2章「現在と未来1」
11/37

11,三代目

話し方だけじゃない――。


顔や雰囲気までもが黒坂に、よく似ている。彼に強気と感性を増した感じだ。


「何?」


鋭い目つきも、加えよう――。


「そ、そう言えば、貴女の名前は?」


彼女は少し考えてから「レイ」と口にした。


「王様の王に、命令の令で“玲”よ」


わざわざ漢字を教えてくれたのはいいが「名字は?」と言いたくなる。しかしながら、さっきの話から察するに、自身が黒坂和樹を悪人として話している手前、名乗れないのかもしれない。


そもそも、黒坂と彼女はどのような関係なのか?一番可能性が高いのは、年齢的に父親と娘が一番妥当か。さすがに、祖父と孫とは――。


「あ、そう言えば――」


黒坂コーポレーションの他に、黒坂について1つ知っていることがあった。それは『黒坂夫人』という存在だ。メディアで何度か特集されていた為、何度もテレビで見た記憶がある。


確か、『黒坂 政子』という人で、何でも著名人に対し、占いを行っており、それがよくあたるとか、仮にそれが“予知夢”の能力であれば、彼女が祖母というのも合点がいく。


となると、何か彼女が思わず反応するワードを言えばいい。例えば――。


「――三代目」


脳内で言った筈が、口が滑ってしまった。


「っ!」


彼女の表情は、先程よりも険しくなり、彼女の右手拳に力が入る。


「ドスン!」


「えっ?」


その音は、彼女の足元で発生した音だった。足は地面に食い込み、その衝撃で震度1程度ながら地面が揺れた。


「成程、全員がグルだった訳?」


「何の話を――」


「惚けるな!」


彼女の怒りの声は、衝撃波のような力が発生し、こちらに襲いかかる。その力は凄まじく、俺は思わず尻もちをついてしまう程だった。


「アンタが過去に来たのはデタラメで、アイツと私を戦わせる為、あの男にここへ誘導するように言われたのでしょ!?」


「アイツ?あの男?」


「しらばっくれるつもり?」


彼女は俺の胸ぐらを掴み、そのまま片手で俺を持ち上げてしまった。先程の脚力や声といい、普通じゃない。とにかく、彼女を落ち着かせないと、こちらの命が危うい。


「た、確かに貴女が、黒坂和樹と関係があるか、試したのは謝る。だけど、貴女を騙すようなつもりはなかった」


「嘘をつけ!過去のアンタが、何故私の名前だけを聞いてあの男と同じ“三代目”という言葉が出てくる!」


「それは君の話し方と雰囲気が、黒坂和樹によく似ていたことと、貴女の祖母が、彼の母親と同じで――」


彼女は、こちらの言い分を言い切る前に手を放した。


「すまない、そうだよね。そもそも、祖母の言葉は私が直接聞いた訳だし、あの男と関係がある訳がない」


「あの男って?」


「今のキャンプ地で、リーダーみたいなことをしている男さ。元々は神の1人だったが、他の連中と折り合いが悪く、人間側についた男」


「そして気に食わない?」


俺の言葉で「クス」と笑った。


「アンタ、頭がいい――。いや、父親と同じ気質なのかも」


「気質?」


「自身を優先するよりも、他人を優先するヤツは、相手が何を求めるのかを常に考えている節がある。私の父は読心術を習得するより前から、相手の気持ちを察する能力に長けていた。


幼少期の頃から大人の言葉に、どのような意図があるのかを考え、それに応えた結果、どのような人物からも、高く評価されたという」


「それが俺にもあると?」


「違うか?」


「そこまで立派なことはしていない。強いて言えば、後悔しない為の努力はしているつもりだ」


「後悔――か」


彼女は何かを思い出したのか、自身の右手の甲をジッと見つめる。


「それにしても、凄い力だった」


「私自身も、異能者だからな」


やっぱり。


「怪力――とは、ちょっと違う感じがしたけど――」


単に力が強いだけなら、声にまでその力が伝達するとは考えにくいからな。


「ああ、私の異能は、所謂“化身”というタイプに分類される」


「つまり、何かしらの生き物に近い能力者ということ?」


「そう言うことだ。ただし、そこら辺の動物じゃない」


だろうな。あれが普通の動物な訳がない。


「とはいえ、会ったばかりのアンタに言う義理もない」


「確かに――じゃあ代わりに、さっき言っていた“アイツ”って?」


「そうだ、こうしてはいられない!」


彼女は慌てて歩き出したので、俺も後に続いた。


「貴女の行動から察するに、アイツと貴女は会いたくない――と?」


「アイツは父親を殺した人物なのさ」


「っ!」


「父親だけじゃない、多くの仲間や人がアイツに殺された」


「でも、貴女も強いのでは?」


「いや、アイツは誰にも敵わない。何せ、アイツの異名は――」


――不敗の騎士。――なのだから。


「不敗の騎士?」


中世ヨーロッパでもないのに、何故騎士?


「それはやっぱり神様なのか?」


「いや、アイツは神じゃない。神じゃないから恐ろしいのさ」


「神じゃないから恐ろしいって――」


どういうこと?



トオルと玲。早歩きで移動する2人を、遥か遠い場所から、2つの影が見ている。


「ようやく、あのゴリラ女が外に出てきた。これはまたとないチャ~~ンス」


妖艶な女性の声と共に、露出度の高い女が双眼鏡片手に呟いた。


「いい加減、オマエも終わりにしたいわよね?」


「――」


「チッ!相変わらず、言葉を発さない木偶の坊だこと」


もう1つの影は、彼女の蔑む言葉でも、動く気配はない。


「あの裏切りモノが残した産物の割には、よく働いてくれたけど、結局コレが何なのか――。“あの方”が調べても分からないモノ。さぞ大層な事実が、アンタの中に眠っているのでしょうね?」


「――」


「はいはい、応答しないのは結構。それよりも、ゴリラ女はともかく、あの隣の男は一体何者かしら?」


再び双眼鏡で覗き込む女。


「どこかで見た気も――いいえ気のせいね」


「ミ――」


「え?」


女は自分の耳を疑いつつも、声のする方向に視線を移す。


「ミ、カ、サ、ト、オ、ル」


「噓でしょ?」


今の今まで一言たりとも、言葉を発しなかったそれが、言葉を発する。それに酷く驚いた女だったが、それ以上に――。


「三笠 トオルですって?」


その人物の名に、手に持っていた双眼鏡を落としてしまった。


「何故このタイミングで?いや、それよりも一刻も早く“あの方”に報告を――」


女は慌てて携帯電話を取り出し、電話をかける。何度かのコール音の後、誰かが電話に出た。


「わたくしです。今――」


女が現状を説明しようとするが――。


「ケラケラケラケラ」


「え?何故それを?」


電話先の人物は、異様な言語で、女の言いたいことを話してしまう。


「どう対処致しますか?」


「ケラケラケラケラ」


「で、ですが!」


「ケラ?」


「い、いえ。そのようなつもりは――」


「ケラケラケラ」


「はい、畏まりました」


女の言葉を最後に、携帯電話が切れる。


「何を考えているのかしら、他の神々が恐れていた男を“静観しろ”ですって!」


女は左手の人差し指を噛み、もどかしい表情で2人を睨みつけた。


「――」


「ああ、そうか」


女は何か閃いたのか、自身の手を噛むのを辞め、ほくそ笑みながら、もう1つの影を眺めた。


「わたくしでなければ、お咎めなし。この正体不明な怪物を、処理する口実にもなる。まさに、一石二鳥」


「ククク」と笑う女は、2人の方角へ指を差し、自ら怪物と罵った影に――こう言った。


「殺れ」



「神たちでさえ、その正体を知らない存在?」


玲の説明によれば、とある神が、どこかから発掘した産物で、人の形をしているものの、言葉を発せず、ただ主となった者からの破壊命令を、忠実に遂行する戦闘マシーン。なのだとか――。


また、それを持ち出した神は、現在消息不明の為、それが一体何のか、操っている神側も分かっていない。


「とても恐ろしい存在だということは、よく分かった。それでも貴女が避ける理由が分からない」


彼女は無言で足を止めた。


「貴女は紛れもなく強い。その上相手は、親や仲間の仇でもある。何故、戦わない?」


「アンタに何が分かる!」


彼女はこちらを振り返る。その瞳には、微かに涙が流れていた。


「アイツは!アイツには!力だけでは勝てない。お母さんが――まったく――」


涙を流していた表情が一変。彼女の視線が、俺の背後を見てから、絶句する表情を浮かべていた。


「一体、何が――」


ゆっくりと彼女の視線を追い、背後を振り返る。そこには――


――“黒い騎士”が立っていた。

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