和菓子の日
六月十六日は和菓子の日だそうだ。情報は、遥くんしかいない。
「西暦848年(承和15年・嘉祥元年)の夏、仁明天皇が御神託に基づいて、6月16日に16の数にちなんだ菓子、餅などを神前に供えて、疫病を除け健康招福を祈誓し、「嘉祥」と改元したという古例にちなむ」
「あ、嘉くんの漢字入ってるー」
「喜ぶところそこかよ」
「これもお菓子メーカーの策略と同じようなものだよね」
「まあな、和菓子の売り上げ伸ばしたいしな」
「流石、和菓子屋の息子、ブレない」
「文句言う奴には、お土産やらないよ」
「え、ごめんなさい、遥さまー」
そう言ったら、デコピンされた。隣りで笑いながら、嘉くんは「麻衣は遥の家の和菓子だけは好きだよね」と呟いた。そして、出てきた和菓子にまた笑う。
「遥の家、どんだけ麻衣が好きなの」
「また、オリジナルのお菓子?」
遥くんが持って来てくれたお菓子は、紫陽花を模したものだった。これだけならオリジナルの要素は分からない。普通に売っているのと変わらないだろう。しかし、違ったのは、三色あったのだ。
「うわ、赤と青と紫だ。これ、絶対に私たちを意識しているよね」
「だろうな」
錦玉紫陽花って言うらしい。すごく綺麗な食べるのが勿体ないお菓子だ。箱に綺麗に詰められている。それを、揺らさない様に丁寧に遥くんは持って来てくれたのだろう。
「これ、食べるの勿体無い」
「作った人に感謝するのは、麻衣ちゃんにとって大事な事なんじゃなかったか?」
「うん、そうだね。頂こうか。お茶淹れる」
お茶も新茶を持って来てくれた。私が淹れようと立ち上がるところを嘉くんに止められた。コーヒーだけじゃなくて、最近はお茶も美味しく淹れてくれる様になった。一緒に遥くんも立ち上がって、嘉くんにお茶の淹れ方を伝授している。嘉くんがお茶の淹れ方に興味を持ってくれたのが、嬉しいって言ってた。
甘いものも、それほど食べるわけじゃ無かったら、お茶もあまり飲まなかった様だ。昔はお店でも家でもコーヒーばかりだったって言ってた。きっかけはうちの実家から送られてくるお菓子だ。それを、遥くんに勧めるし、その時に一緒に食べる事も増えた。それで、コーヒーだけじゃ無くてお茶も淹れる様になった。
「お茶の温度とコーヒーの温度、同じ感覚じゃダメだよな」
「お茶は70度から80度ぐらい。コーヒーって90度だっけ」
「うん、そうだね。コーヒーは感覚で覚えちゃってるから、そっか、コーヒーより低いのか」
「高いと渋みが出て美味くない。甘味を引き出すのに最適な温度なんだよ。まずは、時間で覚えた方が良い。熱湯を使って、それを別の容器に移して、五分ほど待って、それでお茶を淹れると良い。まぁ、季節によってまた、冷ます時間変わってくるけどな」
「そっか、時間か。コーヒーも同じ様に熱湯をポットに移して淹れているね。お茶はコーヒーよりも長く時間を取ればいいんだね」
「うん、そう言う事。紅茶だと熱湯を使うから、楽なんだけどな」
「確かに」
うちの実家の電気ポットは、一度沸騰させて、その後、希望の温度をキープ出来るものを使っている。田舎だと基本、緑茶が多いし、近所の人がお茶飲みにくるので、母の側には、電気ポットが寄り添っている。コーヒー飲みたい時とか、姪っ子甥っ子のミルクを作る時にも役立ったらしい。
綺麗な季節のお菓子はとても美味しかったです。嘉くんの淹れてくれたお茶も美味しかった。遥くん、ありがとう。
2025/06/16 活動報告掲載




