イースターとかもめの玉子(遥先生のイースター講座)
実家の荷物に岩手県の名物が入っていた。それを入れてくれたのはきっと、咲子さんだろう。今回入っていたのは、かもめの玉子だった。大船渡市の名物だ。大船渡市は陸前高田市のお隣りで、気仙沼市からも近い。さんまラーメンとか有名だね。
そして、いつもの様に遥くんを呼んだ。かもめの玉子って言うけれど、三陸地方で良く見かけるのは、ウミネコだよね。まぁ、カモメとウミネコがいたら、鳴かないと区別付かない様な気もする。
嘉くん、遥くんが来るのが前よりも増えたので、お茶を淹れる事を覚えた。きちんと時間を計って淹れてくれる。今日は、セイロンティーだった。そして、コーヒーでは無くて私たちも紅茶にする事になった。
「イースターだから?」
「どうなんだろう。特に気にしていないと思うよ。うちの実家って、外国のイベントする事ないから、イースターもしないと思う」
「イースターは知ってるか?」
「キリストの復活を祝う日だっけ?」
「イエス・キリストの復活を祝う「復活祭」のこと。十字架にかけられ処刑されたキリストが、死から復活したことを記念する祝日で、キリストの奇跡を象徴するイースターは、キリスト教においてはもっとも重要な年中行事。 キリスト教圏では、春の訪れとともにキリストの復活を盛大に祝う。イースターは、毎年日付が変わるのが特徴で、イエス・キリストの復活が日曜日だったことから、「春分の後の満月から数えて、最初の日曜日」がイースターらしい」
「私も遥くんも仏教圏だよね」
「まぁな、俺らには関係ないっちゃ無い」
うちの実家も遥くんの実家も仏教徒だ、詳しい宗派までは分からないけれどね。視線を送ると嘉くんも「俺も」と言った。あの、広島のお盆の風物詩も宗派関係無いらしいよね。
「で、なんでタマゴなの?」
「イースターエッグは、復活祭に出される、彩色や装飾を施されたゆで卵で、卵は大斎に節制される食品で、卵が使われるのは、見た目には動かない卵から新しい生命が生まれ出ることから、死と復活を象徴しているとされる。赤く染められる事が多いのは、赤い色は十字架上で流されたキリストの血の色と、血は生命を表すことから復活の喜びを表すとされる」
「あれって、ゆで卵なんだ」
「最近じゃ、チョコとかになってなっているみたいだけどな」
「ああ、売ってるのってそうだよね」
「どうでも良い情報なんだけど、ドイツでは、オスターフラーデンという円形のパンを食べる。パン生地をウサギの形に成形するとオスターハーゼ(Osterhase)となる」
「やっぱり、レーゲンボーゲンなんで、ドイツは外せないね!」
遥先生の講座がひと段落したタイミングで、嘉くんはお茶を持って来てくれた。「さんきゅ」そう言って、遥くんが受け取る。私も「いつも、ありがとう」と言うと、「どういたしまして」と言う言葉と共に甘い笑みが返ってきた。
「イースターって、ウサギもいるよね、あれは何で?」
「ああ、イースターバニーは、うさぎが多産であることから、豊穣や繁栄のシンボルとされていることがもとになっているんじゃ無いか」
ウサギが卵を持っているの可愛いよね。『豊穣』でこっち見るのやめて、私みたいだと言いたいんだと思う。農家としては豊穣祈願は大事だからね。繁栄は無理だけど。
かもめの玉子は、定番の白いのは、かなり大きい、ミニなんていうのも出ている。味も色々で、今回は定番のと、チョコ味と、季節限定なのかな、いちご味もあった。遥くんの好みはどちらかと言うと定番の方だった様だ。
「カモメって、どの辺にいるのかな」
「ニャーニャー鳴いているのは聞いた事ある」
「それ、カモメじゃないだろ」
「うん、私も流石にウミネコだって知ってる」
「カモメは渡り鳥、日本には冬鳥として越冬のため飛来し、春夏は繁殖のため日本を離れる。ほぼ日本の夏には存在しない鳥だから、三陸地方に渡るのかまでは知らん、冬にはいるかもな」
「ああ、渡り鳥なんだ、カモメって。知らなかった。そっか、カモメいるかもしれないんだ」
嘉くんは、いちご味を食べている。前から思っていたんだけど、嘉くんはいちご味好きよね。ケーキのいちごも真っ先に食べていたし。私はチョコ味に手を伸ばした。これ、定番のもホワイトチョコでコーティングしてあるので、紅茶とも良く合って美味しい。と言うかたまに食べると美味しいな。
「そういえば、こないだの山火事どうだったの」
「ああ、咲子さんの話だと工場の近くまで、火が迫ってたようです。でも、大丈夫だったみたい」
「それは、一安心だな」
「うん、でも、色々と大変だよね。私たちは募金ぐらいしか出来る事ないから」
「それでも、やらないよりはいい」
「そうだね」
岡山と愛媛の山火事の方も募金はした。広島から見るとどちらもお隣りだからね。愛媛に関しては、嘉くんお隣りだと言ってる。ちなみに岡山もお隣りだよ? 何で、愛媛はお隣り発言するのに、岡山は違うんだろう。
その土地の食べ物を食べて応援も良いかもしれないね。
* * *
「何?」
「何でも無い」
じっと、私が書いたイラストを見ていた嘉くんが目を逸らした。タブレットに描かれているのは、イースターを意識したウサギが卵を持っているイラストだ。イースターのお祝いにSNSにあげようと思っている。でも、何か問題があっただろうか。
遥くんにもそれ、あげるのかって言われた、あげるとまずい? 一瞬、考えて次の瞬間、私は思わず顔を覆った。あ、これダメなやつ。さっき、遥くんに、ウサギは多産で豊穣や繁栄のシンボルって言っていたではないか。
「あ、気付いた」
「それ、あげちゃまずいやつだろ」
「本当にしちゃえば良いじゃん」
「困るの麻衣ちゃんじゃねぇか」
やばい、これ、SNSにあげたら大変な事になっていたかもしれない。嘉くんは、教えてくれなかったけれど、ここに遥くんがいてくれて本当に良かった。
2025/04/20 活動報告掲載