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ライブハウスとその夢の欠片(sideレーゲンボーゲン)

特定のアーティスト名が出て来ます。




 少しづつライブハウスで歌う歌が、カバーから、自分たちの歌に変わって来ていた。嘉隆(よしたか)が入る前は、ビートルズなどの洋楽のカバーが多かった。嘉隆が入り、洋楽のカバーだけではなく、嘉隆の好きな久保田利伸などの邦楽のカバーも取り入れ始めた。

 初めて歌った『空に還る』は好評だった。曲を作るのが楽しくて、嘉隆はどちらかと言うと苦手な作曲を遥が付けてくれる事が、作詞よりも作曲が好きな遥には、嘉隆が作詞をしてくれるのが、楽だった。(あきら)が面白おかしく、作詞に茶々を入れるが、それさえ、嘉隆には新鮮で、それさえ、歌詞に落とし込んでくれる。



「故郷を思って作った、新曲『borderless』聞いて下さい」



 晃のキーボードが優しい音色を響かせて、それに、今回、ギターを弾いている荘太郎(そうたろう)の音が重なる。この曲は、嘉隆がメインボーカルを、遥がサブボーカルをしていて、ドラムは入らない。珍しい構成だった。

 しかし、その新しい試みが成功していた。元々、嘉隆が入る前は、奏子(かなこ)がメインで歌い、サブボーカルを遥がしていた。ストリートライブでは、二人で歌うのだが、ライブハウスでは珍しい。嘉隆がメンバーに入ると遥は基本、ギターを弾く事が増えた。


 好評な様で、歌い終わって、嘉隆はほっと胸を撫で下ろした。最初に五人で作った『空に還る』とは違った、しっとりとしたバラードだ。五人からアドバイスを受けながら、作詞を完成させた。ライブハウスでは、元々、バラードがメインで、入ってくれるお客さんもそれを聞きたくて来てくれる人がほとんどだったので、杞憂だった様だ。



「何で、歌うのバラードが多いんだ?」

「路上だと一人だし、弾き語りするから」

「ああ、まぁ、そうか」



 単純な理由に周りから笑いが起こる。遥だって、そうだ。路上でギター片手に弾き語りしながらの歌はどうしても、片方が疎かになってしまう。ギターが無いと寂しいし、どうしてもギターは必須だろう。そして、ストリートでもライブを二人でやっているので、聴きに来てね、と言うのも忘れない。



「でも、最近は歌メインで歌わせてもらってるから、何にかリクエストあったら歌うよ」

「じゃあ、あれやろう。嘉の地元のバンドのポルノさんやろう」

「じゃあ、それやります。僕の好きな曲で申し訳ないんだけど、『ミュージック・アワー』歌います。みんなもそれで良いかな?」



 声援をもらって、サポートメンバーの了承をもらって、遥の希望の歌をカバーする事にした。まぁ、その辺は打ち合わせ通りだったりする。『ミュージック・アワー』を選んだ。その他に、嘉隆がストリートで良く歌うと言う久保田利伸さんの『流星のサドル』をやって、最後に『空に還る』で終わった。



* * *



 事務所に届けられた、贈り物の数に、レーゲンボーゲンの二人は苦笑した。基本、イベント会場以外での贈り物は受け取っていないのだが、今回はデビュー二十周年なので、色々なところからお祝いが届いた。今日は事務所の下の階に入っているスタジオで、二十周年記念の動画のライブ配信が行われる。



「やば、これ歌うの久々じゃけぇ、緊張して来た」

「ああ、練習はしたけど、大丈夫だ、いける」

「どこから来る根拠じゃけぇ」

「嘉、どんだけ、緊張してるんだ。広島弁になってる」



 周りのスタッフも二人の掛け合いに笑っている。流石に記念日なので、緊張感も高まる様だ。今日は、デビュー前にライブハウスで歌った、四曲を歌う予定でいる。デビュー曲の『空に還る』とカップリング曲の『borderless』、そして、カバー曲になる『ミュージック・アワー』と『流星のサドル』だ。

 ライブハウスで歌った曲がそのまま、デビュー曲になった経緯がある。


 もちろん、サポートメンバーの三人と(たすく)の妻の奏子もいる。今回、奏子はコーラスに入る事になっている。ライブハウス時代は、嘉隆が入る前はメインボーカルをしていた。


 麻衣はその配信の観客として、お呼ばれした。花もプレゼントも大量なので、今回は麻衣の事務所から預かって来たホールのケーキを持参した。ケーキには、麻衣のイラストを元にした、二人のイラストが描かれている。


 カバー曲は、麻衣は実は始めて聴く。今日のために練習期間は設けたらしいが、本当に歌うのは、二十年振りな様だ。『アポロ』や『missing』はたまに聴く。だが、『ミュージック・アワー』と『流星のサドル』は初めてだ。配信でも歌ってくれないし、これは本当に特別な歌なんだろう。この歌は悠一も好きで、悠一が歌うのを麻衣は聞いた事ある。ちなみに、麻衣の好きな曲は『雨音』と『夜に抱かれて』だ。

 この『流星のサドル』は意味は違うが嘉隆の曲にも『サドル』って言う曲があるので、星も好きだし嘉隆にとって、かなり、思い入れがある曲なのだろう。



「デビューから、休止もあったけど、なんとか、ここまでこれたな。あれから、二十年、当時生まれた子が、成人だよ、早くね?」

「早いね、うちの甥っ子も大きくなるわけだ。これからも続けられる様に頑張りますので、応援宜しくお願いします」

「ああ、じゃあ、曲説明だ。デビュー曲とカップリング曲は説明不要だな。みんなにアドバイスもらいながら完成させた思い出の曲だ。アキが『蛙』って言ったせいで、歌詞に蛙が登場した」

「登場したね、あれは、面白かった。それに、落とし込むのも楽しかったよ。そして、ポルノさんの『ミュージック・アワー』と久保田さんの『流星のサドル』は、僕がすごく好きな曲だし、久保田さんのデビュー曲繋がりでもあるので選びました。今回久し振りに、それも二十年振りに歌います。失敗したらごめんね」

「あの時、何度も歌ったんだろ、失敗すんなよ」



 今回、遥が歌うのは、『borderless』のみだ。後はすべて、ギターを弾いているので、本当に原点に返っているのだろう。笑いを取るためなのか、嘉隆の台詞に遥が突っ込んだ。四曲と少し少ないが、二人の原点の曲は、優しく響き渡った。



これ、屋外の広い青空の下で聴きたい、そんな素敵な歌だった。レーゲンボーゲン二十周年、改めておめでとう。



2025/03/10 活動報告掲載

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