桃の節句とそれぞれ
浅生家のお雛様はお代理様とお雛様と三人官女までの二段の雛飾りだった。嘉隆にとってはそれほど、思い入れはない。姉たちと近所の姉の友達と一緒に雛祭りをやっていたのを遠くで見ていた記憶しかない。嘉隆はあの輪の中には入りたいとは思わなかった。
川村家のお雛様はお代理様とお雛様だけだ。麻衣のために祖母が買ってくれた。初めての女の子の孫で嬉しくて、大きいのを買おうとした祖母を父が止めていた。飾るのも片付けるのも面倒だと言っていたらしい。それに、幼稚園くらいになると外で兄や男の子と遊ぶ事が好きだったので、それほど、人形に興味があったわけではない。でも、祖母が麻衣のために買ってくれたので、嬉しかった。
古川家のお雛様はすべて揃っていた。遥の姉の京のために祖父が買ってくれたものだ。三月の桃の節句には、祖父が嬉しそうに作ってくれた和菓子を家族みんなで食べるのが毎年の行事だった。
* * *
別段、この年齢になって雛祭りをするわけではなかったし、実家の姪っ子のために私のお雛様が活躍しているらしい。小学生ならまだ飾るかな。浅生家にあったお雛様は真理義姉さんがお嫁に行く際に持って行ったそうなので、賢ちゃん家で飾られているらしい。古川家は、遥くんの姪っ子の六花ちゃんのために飾ってるらしい。流石にお姉さん、嫁入り道具としては持って行かなかった様だ。いや、フルであるんじゃ流石に持って行かないよね。
そう言うわけで、今日は遥くんは実家の手伝いを午前中で終わらせて、うちに来ている。桜餅と鶯餅を持って来てくれた。嘉くんには桜餅に違和感がある様だ。うん、私も違和感ある。これ、桜餅じゃない。そう言うと、不思議がられた。
「これ、桜餅じゃない」
「嘉は分かるとして、麻衣ちゃんに言われるとは思わなかった。宮城も違うのか」
関西風って言われる道明寺の桜餅は宮城でも食べる。遥くんの家の桜餅は関東風って言われる桜餅だ。私にとって馴染みがない。なんで、宮城が関西風なのかは私も分からない。嘉くんは、古川家の桜餅、食べた事あるらしい。私は初めてだ。この時期にしか食べられないので、食べる機会を逃していた。
「俺の地域もこれじゃないな」
「それは、前にも言われた。じゃあ、食うな」
「いや、食う」
嘉くんの地方の桜餅、うちと一緒だった。遥くんのお家の桜餅も美味しかったです。市販のを買う時は、道明寺を買うので、遥くんの家のは、この形なのは知らなかった。それと、鶯餅って、緑色だけど、実際の鶯は緑じゃないんだよね、確か。どっちも美味しかったです。今回は、和菓子なので、緑茶を淹れました。
「桜餅も何だけど、ひなあられも地方によって違うよね。私のところ、甘かった」
「ああ、関西のはしょっぱい系の餅菓子なんだっけ。食べた事あったかな、記憶にない」
うん、嘉くんお姉さんの事があるから、覚えていないのかもしれない。関東のひなあられが甘い味付けであるのに対し、関西のひなあられは塩やしょうゆで味付けをしているのためしょっぱい味付けだ。そして、東北のも甘い。
なんか、ほんと、不思議だね、関東と関西で違うものを同じ名前で呼ぶなんて。桜餅と鶯餅、もう、ひな祭り関係ない年齢なんだけど美味しく頂きました。
2025/03/03 活動報告掲載