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気仙沼みなと祭り2026(八月二日)



 実は、合併前は、うちは本吉町なので、気仙沼(けせんぬま)市では無い。うちから気仙沼の市内まで三十分ぐらい掛かるんだよね。電車を使ったり、家族に送ってもらって、休みの日とかに気仙沼に遊びに行くことはあった。カラオケもそっちまで行かないと無かった。なので、好きだけど『よく』は行っていない。なので、みなと祭りも一緒だ。高いところに行けば、ちょっと遠いけど津谷からも花火を見ることが出来る。父に連れていってもらったのは数えるほどだ。高校のときに、絵美に誘われて行ったけど、あれ、男子避けだよね? 絵美や文香(ふみか)、他の女の子たちはみんな浴衣だった。私も持ってはいたけど、特に浴衣を着て来て、って言われなかったので、シャツにふくらはぎぐらいまでのジーンズだった。



「あれさ、絵美が後から、バラしてくれたんだけど、男避けに誘われたんだよね」

「ああ、だから、浴衣勧められなかったんだ」

「うん、絵美は私の持っている浴衣の柄知っていたからね」

「どんなの?」

「白地に桔梗柄だった」

「可愛い柄だね」



 だから、浴衣で来て、とは言わなかったんだろう。あの後、しばらく私は絵美と口を聞かなかった。初めから言ってくれれば良かったのに。



「仲良いと思ってた。絵美とも喧嘩するんだ」

「まぁ、あれだけ一緒にいればね。嘉(よし)くんだって、賢ちゃんと喧嘩することあるよね」

「どうだろ、俺の場合、いつも俺の方が怒っていた。賢人はにこにこしていて、怒ったとこ見たことないんだよね」

「じゃあ、喧嘩なし?」

「喧嘩らしい喧嘩は無かったかもしれないね」

「そっか」



 私とも喧嘩らしい喧嘩したこと、あったっけ? ああ、私、絵美のときもだけど、しゃべらなくなっちゃうんだった。あれが、喧嘩なのかな。



「麻衣は、しゃべらなくなる」

「そうなると、嘉くんが折れてくれる」

「うん、喧嘩よりも麻衣と話せなくなるのが寂しい。それに、喧嘩の要因の大半が俺だからね」



 自覚あったらしい。私が怒るのは滅多に無いので、喧嘩も滅多にない。あれ、花火大会の話から逸れた。気仙沼のお祭りに呼ばれたんだった。なので、泊まるところは実家があるし、お盆よりもかなり前なので新幹線の予約もまだ取れるだろう。私の分は事務所で取ってあるので、嘉くんに聞いてみようと思ったわけだ。



「ごめん、それでね。気仙沼のお祭りに行きませんか?」

「それ、早く言ってよ。一緒に行くに決まっているじゃないの」

「うん、わかってはいた。じゃあ、新幹線の予約する」

「一緒にすれば良かったのに」

「嘉くんだって、予定あったかもしれないじゃない」

「そっち優先する」

「だめ」



 やっぱ、だめかー、と言って誤魔化されたけれど、今回は特に仕事などは入っていないようだ。実家にも連絡は入れてある。ただし、バタバタしそうだ。土曜日に移動して一泊してお祭りに参加する。そう言えば、『はまらいんや踊り』も練習していたので、多分踊ることになると思う。

 言って良かったのかな、一緒に行ける嘉くんは嬉しそうだ。ずっと、仕事っていうわけじゃないので、お祭りも見ることが出来ると思う。浴衣、浴衣、そう言う嘉くんは当日私に浴衣を着て欲しいようだ。今回は、荷物になるので持っていきたく無いな。



「実家にないの?」

「ああ、そっちか」

「うん、ぜひ、そっち着て」



 そう言えば、私の部屋の押し入れに昔の浴衣が仕舞われたままだね。でも、今その浴衣着ても似合うのかな? 浴衣なので、年齢はあまり関係ないと思うんだけど。母に連絡を取ったらそっちも用意してくれることになった。和服って体型が少しくらい変わっても着れるのは分かっているけど、高校の時の浴衣着ても大丈夫か心配だ。まぁ、嘉くんが嬉しそうだから良いかな。



* * *



 地元に戻ったら、絵美も浴衣だった。高校の頃のとは違うもので、私が浴衣を着るからって新調したようだ。実家には、私の浴衣と悠兄が着ていた浴衣が用意されていた。これは、悠兄が着るためではないだろう。絵美が嘉くんに視線を向ける。多分、嘉くん用に母が用意してくれたのだろう。



「悠兄は行かないの?」

「行くけど浴衣はずっと着ていないよ」

「そっか、じゃあ、嘉くん着る?」



 そう言って、嘉くんに広げて見せた。渋い色合いで落ち着いた黒に縞模様の入った浴衣だ。悠兄のだからって、もっと、派手なのを想像していたようだが、普通だ。下駄は悠兄のサイズは大きすぎると思ったようでそっちは父のだった。



「いいの?」

「麻衣も着るなら、合わせると良いよ」

「じゃあ、着る」



 気に入ってくれたようだ。なんなら、やる、と言う悠兄の言葉には持っているしいい、と遠慮していた。着付けは、何故か私がしている。嘉くんがそれを望んだからだ。



「流石に、手際が良いね」

「何度か着る機会があったからね」

「そっか、ありがとう」

「どういたしまして。私の方も終わらせるから、みんなでお茶でもしていて」

「ん」



 まぁ、こんなものかな。東京に行っても着付けをする機会があったので、覚えているものだ。ただし、変わった帯の結び方、あまりやらないものをしようとして苦戦した。中々、戻ってこない私を心配して見に来た絵美に手伝ってもらってしまった。変わったことはやらない方がいいね。



 お祭り会場で二曲ほど歌わわせてもらった。浴衣を着て、こうして自分の歌を歌うのは実は初めてだ。飛び入りで参加してくれた嘉くんは本当に楽しそうだった。一緒に来てくれたのは莉子さんだけだったんだけど、美月さんはお休みだ。そのために自分で着付けをした。


 お祭りのイベントが盛況のうちに幕を閉じた。この後、お祭りをぶらついて、最後に花火を見る予定だ。莉子さんも珍しくうちの実家に泊まってくれる。沖さんも一緒にくれば良いのに、と言ったんだけど、離せない仕事があったようで断られた。沖さんと遥くんにお土産を買って帰ろうと思う。



 2026/08/02 活動報告掲載

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