バレンタインデーにチョコレートはあげた事はありません
中学生、高校生、バレンタインデーのチョコレートは貰う方だった。大したものではないが、ホワイトデーにきちんとお返しもした。芸能活動を始めてもあげたことは無い。嘉くんに、広大くんにも、あげた事ないって言ったら、ちょっと嬉しそうだった。
再デビュー後は、ファンレターと共にチョコレートを貰う機会が増えたが、最近はファンレターは受け取るがプレゼントの類は受け取っていない。なので、本当にチョコレートはあげた事がない。嘉くんたちと知り合って、付き合い始めて、結婚してもそれは変わらない。一番の理由は柄じゃない、って事だ。
「え? これって、チョコレート?」
「うん、麻衣にあげるよ」
「えっと、もしかして、これって、嘉くんが選んでくれたの?」
「麻衣は、貰う側でしょ」
まぁ、確かに貰う事はあっても、あげる事はない。まさか、嘉くんに貰えるとは思わすに驚いた。今では、バレンタインデーに、男女関係なく贈る事もあるので、おかしな事ではないのかな。実はこれには、理由があったらしい。私に申し訳ないと思った様だけど、莉子さんに頼まれて、『ショコラマルシェ』と言うチョコレートの祭典に行って来たらしい。もちろん、沖さんに渡すチョコレートを選ぶためだ。
私はきっと興味ないと思った様で、誘わなかったらしい。遥くんよりは、嘉くんだったのは、誘えば嘉くん、私のチョコレートを買うんじゃないかと思った様だ。案の定、買ってますね。
そして、莉子さんは、嘉くんと遥くんにも買ったらしい。面白い事に、その場で嘉くんに選ばせたらしい、流石は莉子さんだ。ちなみに遥くんには、ビートルを形どったチョコレートだったそうで、それ、遥くんそれ喜ぶな。嘉くんが選んだのは、これは、もう自分が食べたいんじゃなくて、私にですよね。チョコレートリキュールだった。アイスクリームに掛けて食べようね、と言われた。
「驚いた」
「俺も始めて買った」
人が多かったらしいので、いつもの変装でも十分、バレる心配はないでしょ、って言うのが莉子さん談だったらしい。莉子さん連れでバレたら私の立場がないよ。
そして、選んでくれたチョコレートは、私の趣味が反映された、日本酒の入ったチョコレートだった。数はそれほど、多くはない。そこも、私があまりお菓子を食べないからだろう。中に並んでいるのは、綺麗な色にコーティングされた、チョコレート、日本酒の味は全部違う様だ。七個のカラフルなチョコレート、それは、虹色だった。
「これって」
「うん、莉子さんが買っても良かったけど、出来れば自分で選んだ方が良いんじゃないかって。言ってくれてね。いっぱい入っていたのもあったけど、今回は麻衣にだけあげたいから、遥にはやらない」
「たまに、嘉くん、意地悪だよね」
「ほら、麻衣、あーん、して?」
「いや、自分で食べれるって」
嘉くんの指ごと青色のチョコレートが私の口に放り込まれた。いつもはチョコレート一つで酔う事なんて、無いはずなのに。私の口内の体温で溶けたチョコレートが付いた指は嘉くんが舐め取った。甘い声音で、甘い笑顔で、そんな、仕草されちゃ、どう反応したら良いのか困ってしまう。貴方に酔ってしまう、っていうやつなのかな。
2025/02/14 活動報告掲載