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私たちの年越しとお正月



 毎年の事だけれど、基本的には年末年始は実家には帰らない。まぁ、両実家からは、なして、帰ってこないの、っては言われる。今年も年末年始に仕事は入っていない。レーゲンボーゲンの方もデビュー直後から二回ほど、かの有名な大晦日の歌合戦には出た事あるらしいけれど、もう何年も見る専門だって言ってた。見てない事の方が多いかな、とも言ってた。まぁ、私は出た事はなく、毎回、見る専門です。ちなみに、他局でやっている音楽番組も今年は出ないみたいです。

 実家から送られて来た野菜が入った箱、年末年始分には多いくらいだ。今年は遥くんのお家からお餅を頂いたので、実家からのは遠慮した。年末に仙台であったクラシックコンサートが終わって、その後に一日だけど、遥くんのお家にお餅をつく手伝いに行った際に、お餅を貰った。流石に遥くん、私の食べる量を考慮して、今回は少なくしてくれた。毎日、お餅は流石に人としてダメだと思う。

 私が年中行事を大事にする事は分かってくれるので、(よし)くんはそれに付き合ってくれる。そして、重要な事があった。年越しのお蕎麦は東と西でつゆが違うんだけれど、関東の味に慣れたので、それは問題なかった。でも、お正月のお雑煮は二種類用意する事にした。



「麻衣のところのだけで良いのに」

「食べたいって言ったら作ってくれる?」

「うん、食べたいなら作るけど、レシピ、母さんに聞かないといけないな」

「我儘言ってごめんなさい。無理にとは言いません」

「何でそこで敬語なの。麻衣ってたまに敬語になるよね。気にしない、美味しいって思って食べてくれると嬉しいから」



 去年、初めて作った私のお雑煮は好評だった。かつおぶしと昆布の出汁に大根と人参のひきな、鶏肉と凍豆腐、干ししいたけ、しらたきが入る。焼いたお餅を少し煮て、最後に紅白のかまぼこ、そして、私の好きな伊達巻き、セリをのせて完成だ。仙台雑煮ではなく、宮城雑煮なので、焼きハゼとかイクラはのりません。



「遥にさ、麻衣が無理して手伝いに来た理由が分かったって言われたんだけど、このお餅のため?」

「はい、ちょっとお願いしちゃいました」



 基本的には、関東でも四角いお餅だ。東北もそうだ。でも、西の方は丸い餅だ。出来たら、遥くん家でついたお餅が良くて、お願いしてしまった。成形の段階での事なので、それほど手間ではないから、気にしないでって言ってもらった。すみません。四角いお餅の方が作るの楽じゃないかって思われるけれど、あれ、お餅が固くなった後に、四角に切る作業が地味に大変らしい。うちの実家でも、事前についたお餅を大晦日の日に切るんだけど、悠兄がいつも切ってくれる。私では無理なので、こっちには切ったお餅を送ってくれていた。



「麻衣さ、もしかして食べて見たい理由って、牡蠣のるから?」

「え、嘉くん家のはのらないの?」

「あ、やっぱり」



 嘉くん、それを聞いて笑う。ばればれでごめんなさい。家庭によっては、ぶりをのせるところもあるらしい。煮干し、昆布、かつおだしで出汁を取ったすまし汁にお餅、ぶりか牡蠣、野菜、かまぼこがのるシンプルなお雑煮らしい。うちの実家でも、出汁はかつおぶしと昆布で取るけれど、最近は面倒なので、市販の白出汁を使ってるってお母さんは言ってた。



「牡蠣はのるよ。あんまり、牡蠣食べない家だったけど、お正月のお雑煮だけにはのってたね。でも、随分、食べていないね」

「そんなに?」

「東京来てからは、遥の家でお正月過ごす事多くて、お雑煮も遥の家の味だね。結婚後は、まぁ、お正月どころじゃ無かったし、離婚してからは、遥の家でやっぱり、ご馳走になってた」

「じゃあ、本当に、二十年振りとかなのね」

「そうなるね、麻衣が遥に頼んで丸いお餅も用意してくれたんだから、美味しいお雑煮作るよ」



 そう言って、嘉くんは、実家のお義母さんにレシピを聞いていた。なんか、野菜は緑だったら、何でも良い、ほうれん草が一般的な様で、実家からちぢみほうれん草を送ってもらっていたので、それにしようかな。お義母さん、私と話したかった様で、嘉くんは渋々だが、代わってくれた。お義母さん、私にも詳しいお雑煮に作り方を教えてくれたんだけど、多分、嘉くんが作ってくれます。そして、名残り惜しそうなお義母さんとの通話を切った。最後に「良いお年を」のフレーズは忘れない。

 私も頑張ります、と言ってもそんなに手間じゃないんだけどね。ちなみに、おせち料理は初めて、注文してみた。実家では、ちょっとだけ作る。全部は食べないし、残して困るなら、作らないが母の言い分だ、まぁ、確かに理屈としては合っている。



 大晦日には、広島の日本酒を頂く事にした。通販でもしようかって言ってたんだけど、嘉くんの実家から送られて来た。『亀齢』というお酒でした。私のためにお義父さんが選んでくれた様です。お義母さんは愛媛のみかんを入れてくれました。

 大晦日らしい夕飯にしたんだけど、私としては、年越し蕎麦が夕飯でも良かったのに。大晦日の料理は特にその地方のものを作る事は無かったんだけど、宮城と広島では、食べるものが違っていて楽しかった。宮城だと、ナメタガレイの煮付けとか、鮑とか、食べるって言ったら、鮑で驚かれた。高級食材のイメージがあるらしい。お寿司も当たり前に出ていたな。小さい頃は、一応、本家なので、親戚が集まる、集まる。お陰で、お正月のお年玉はいっぱいで嬉しかったんだけどね。嘉くんのところはお義父さんの実家が本家なので、お義父さんのお兄さんが家を継いでいるので、お正月には、挨拶に行く方だったらしい。


 年末の歌合戦、見るんだ、と嘉くんに言われた。去年も一緒にいて何気なく見ていたんだけど、今年は流石に突っ込まれた。うん、ケセラセラ出てるからね、でもね、出るのは、ケセラセラだけじゃないし、そこだけ我慢すれば良いかなと思う。



「悔しいのは、メンバーの中で一番歌が上手いよね」

「そうだね、そうじゃなかったら一緒に居なかったかな」



 歌が上手く無かったら、一緒に、大好きなビートルズを歌う事は無かっただろう。初めて、聞いた広大(こうだい)くんへの反応に、驚いた。うん、嫌いでも、ちゃんと歌手としては評価してくれている様だ。悔しいとはっきり言ってるけれど。広大くん、イケメンだし、歌も演技も上手い、身長も高いし、残念なのはあの俺様な性格だけだ。



「嘉くん?」

「ね、ケセラセラの間だけ、俺の方見て?」



 嘉くんの手が私の手を掴んで、続けて、私の頬に触れた。TV画面を見ていた私はそちらから、嘉くんの方に顔を向けさせられた。嘉くんの顔が近付いて私にキスを繰り返す。ケセラセラの歌が終わっても解放してくれなかった。お酒が入っているのか、目元がちょっと赤い、それもあって、溢れるその色気に私まで酔ってしまいそうだ。これは、やばそうなので、私は、嘉くんの胸元を押すと、キッチンに逃げ込んだ。



「年越し蕎麦、作って来ます!」

「あ、残念、ん、俺も作るよ」



 お雑煮用の鶏肉を少し出汁用に使う、後は、遥くんの実家から、お餅と一緒にお裾分けしてもらった、海老の天ぷらを乗せてネギを散らして終わりだ。蕎麦は嘉くんが隣りで茹でてくれている。去年に続いて、二人での年越しだ。去年は、まだ、部屋は別々で、私の部屋で過ごしたんだけどね。新しい部屋で過ごすのは初めてだ。あまり、行儀が良いとは言えないけれど、TVはリビングしかないので、お蕎麦はリビングのテーブルに持って来る。やっぱり、こたつ欲しいな。きっと、こたつで寝ちゃいそうだから諦めるけれど。



 年越しの歌合戦を見ながら、年越し蕎麦を食べる。明日は、ゆっくりする予定だ。初詣は行く予定はない。混むのが目に見えているのに、行きたいとまでは、思わない。そう言えば、遥くんは実家でお正月を過ごすって言ってた。それも、三が日は外に出ないらしい。浅草寺混むだろうな。初売りも二日ではなく三日だって言ってた。お手伝いする事になるって言うのも言ってた。自分の仕事あるのに、実家の手伝いもするなんて、すごいね。遥くん曰く、近いから使われるらしい。その点、私と嘉くんは実家が遠くて良かったかもしれない。初詣は行かないけれど、元旦も欠かさずに散歩するつもりなので、初日の出は見れるかもしれない。天候によるけれど。



「麻衣、明けましておめでとう、今年も宜しくね」

「明けましておめでとうございます。こちらこそ、宜しくお願いしますね」



 丁寧に正座して、真っ直ぐ嘉くんを見つめて、頭を深く下げて、お正月の挨拶したら、これでこそ、麻衣だね、って言われた。挨拶とお礼だけは、昔からきちんとする様におばあちゃん、お父さんお母さんに厳しく言われて来たからね。



「そんな、麻衣がぶち好きじゃけん」



 そう言って、引き寄せられる、今年最初のキスはとても、とても甘かった。



2025/01/01 活動報告掲載

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