一年の終わりに、労うその宴
いつもの個室のある居酒屋を予約してくれたのは、遥くんだ。十一月には、予約していてくれたらしい。私が行かない事、考えなかったのって聞いたら背負ってでも連れて行くと言われてしまった。そこまでして、私を連れて行きたいか。うちでも良いじゃん、って言ったんだけど、幹事やらせて、って言われた。いつもうちでお世話になっているので、考えてくれたらしい。気にしなくて良いのに。
週末ではないので、それほど混んではいないと言う事だったが、それでも、他の部屋からは笑い声がここまで聞こえる。今週末は、私は仙台で、仕事があるので、遥くんの取ってくれた予約が今日で良かった。週末は忙しいのではないかと思って平日にしてくれた様だ。
今回は、金額に応じたお店のおまかせのコースで、それに飲み放題が付くらしい。日本酒の種類も結構あって選ぶ楽しみもある。先々週のうちの事務所とレーゲンボーゲンの事務所であった忘年会でも日本酒を色々と楽しんで来た。今回は違うものが飲みたいな。でも、まずはビールで乾杯でしょ、一年の終わりをお互い労って乾杯する。料理が次々と運ばれて来るけれど、これ、全部食べ切れるのか?
「悪い、ちょっと実家から電話、少し席外す」
「年末忙しそうだよね、いってらー」
そう言って、遥くんは外に出て行った。今月は年始用のお餅作りが忙しいそうで手伝いに行く日が多い。うちの実家でもお餅をつくから手伝えるよ? って言ったら、場合によっては頼むかもしれないと言われた。でも、年末に仙台で仕事があるから、無理しないでと言われた。お店の外だと寒いよね、大丈夫かな。料理もちゃんと食べているんだけど、やっぱり、お酒の量が多くなる、私のペースに合わせているつもりはないと言ってるけれど、今日の嘉くんのペースちょっと早いかな。
案の定、今日は仕事が事務所であったので、その疲れもあってか私の肩に頭を乗せるとうとうと始めちゃった。最近、そうやって落ちてしまう。遥くんが戻る頃は完全に寝てしまった。
「落ちたか、今日は早いな」
「嘉くんって、前に綾香さんから聞いたんだけど、元々はそんなにお酒強くないのね。直ぐに寝ちゃうって言ってた」
「俺らと酒飲み始めた頃は、直ぐに落ちてた。少しづつ飲み慣れて来たとは思うんだけど、やっぱり、そこまで強くないな。あの離婚後の時は無理に飲んで、直ぐに落ちてたけど。それからは、自分で飲む量を調整していたから、麻衣ちゃんと会った辺りには、そんな寝るまで飲む事は無くなったな。最近は、麻衣ちゃんがいて、安心出来るからなんじゃないのか?」
眠る嘉くんは、少し幼く見える、可愛いと思うのは、好きになった欲目かな。しかし、このままだと、お酒の追加注文出来ない、もしかして、それを見越してこんな態勢で寝ちゃった? だったら、確信犯だ。
「遥くんのそのお酒ちょうだい?」
「何でだよ」
「いや、これじゃあ店員さん呼びづらいなぁって」
「呼んで見せつけてやれ」
「えー」
仕方がないので店員さんを呼んで、お酒と後は水を持って来てもらう事にした。嘉くん、起きた時に必要だろう。店員さんが持って来た、タイミングで、遥くんがお手洗いと言って、席を立った。店員さんの良いものみた、っていう顔、やっぱり、そうなるよね。早く起きて欲しいけれど、眠っているの、気持ちよさそうだな。それを眺めながら、まぁ、ちびちびやるか。
私は店員さんが置いてくれた、お酒に手を伸ばした。少し離れているので、手を伸ばす形だ。態勢が崩れて嘉くんの身体が肩から落ちると慌てて、膝枕する形になった。そのタイミングで、遥くんが戻って来た。
「あ、お帰り、ごめん、そのお酒取ってもらえる? 取ろうとしたら、こうなっちゃった」
流石に遥くん、大きなため息を吐くと、嘉くんの足を蹴った。遥くん、私たちとは反対の席に付いていて、ここは、座敷席だ、遥くんの足が届く。あ、痛くないのかな、でも、目を覚ますほどの衝撃ではあったらしい。焦点の合わない目で私を見上げる。まだ、眠そうだ。
「嘉くん、水飲む?」
「ん、ちょうだい」
まだ、寝ぼけてるか、前から遥くんの声が飛ぶ。頭から水を掛けそうな勢いだ。私の差し出す水を飲み干すとようやく目が覚めた様だ。「大丈夫?」と聞くと「大丈夫」って言う返事が返って来た。お酒はここでやめた方がいいね。だって、その蕩ける様な甘い顔はやめた方が良いと思います。店員さんがいなくて本当に良かった。
私たちの忘年会はこうして、終わる。まぁ、家で飲むのと変わらない、感じではあるんだけどね。遥くんに感謝です。あと、割り勘のつもりでいたのに、遥くんさっさと支払い済ませてきた。あの時、お手洗いに行った時だ、きっと。嘉くんと顔を見合わせて、今度うちに来る時はたくさんおもてなしをしようと思う。
2024/12/31 活動報告掲載




