愛夢ちゃんの山形土産
特定の選手名出てきます。ご注意を。
その日は、嘉くんは事務所だ。私は仕事はお休みで、主に家事をしている。珍しく主婦していますよ。洗濯は溜まる事はないけれど、やる事はそれなりにある。冷蔵庫の中は基本、嘉くんのテリトリーでもあるので、買い物は任せるか、一緒に行くかになる。食材は使っちゃダメって言われているわけではないし、私が部屋にいる時は、ご飯も作る。なので、今夜もご飯を作って待つ事になる。お米を研いで、セットしておく、その間に作り始める。今日は、何が良いかな。
冷蔵庫を覗くとマグロのお刺身が残っていた。消費期限は今日だけど、心配なので火を通す事にする。片栗粉を塗して、揚げ焼きにする。マグロ、昨日、食べきれなかったんだよね。それを、生姜と醤油、唐辛子を合わせたものに漬けて行く。ネギを乗せたら、マグロの南蛮漬けもどきの完成だ。ほうれん草ともやしのお浸しに豆腐の味噌汁、こんな、ものかな。一通り終わると、LINEの着信に気付いた。嘉くんは、少し前に帰るメッセージをくれたばかりだ。確認すると、遥くんからだった。
『愛夢ちゃん、相変わらず、嘉、好きだよな』
なんの事かと思ったら、また、愛夢ちゃんは嘉くんに構ってもらいたいらしい。昔から、ライバル意識持っている様で、今回も何かあったのだろう。その前に、嘉くんが帰って来た。遥くん、ごめん、後で確認する。
「お帰り」
「ただいま、これ愛夢から」
「実家行くって言ってたか」
「なんか、好きな選手の引退試合があったらしくて、土曜日なので、今回はみんなで行くって言ってたね」
「あ、そっか、愛夢ちゃん、寂しいだろうな」
大好きだった、梁勇基選手が引退して寂しいって言ってた。ユアテックスタジアムでその引退試合があった様だ。その時のお土産だろう、中身を確認して、思わず笑った。遥くんのメッセージの意味はこれか。遥くんのLINEの画像はワインでした。ワインとおつまみがセットになったもの。嘉くんが持って来たものと一緒だ。
「これ、中身見た?」
「いや、そのまま持ち帰って来たけど、何か問題あった?」
「いや、遥くんのメッセージ見て」
私が出したお土産と遥くんのメッセージを交互に見て、嘉くんは笑い出す。「やば、これ、俺じゃけん」って言ってる。そのワイン、山形の高畠ワイナリーのスパークリングワインで名前が『嘉』です。うん、愛夢ちゃんのチョイス面白い。そして、嘉くんと仲悪いけど、構って欲しくて懐くわんこの様で、それでも愛夢ちゃん、嘉くんの事が好きだよね。
「これ、二人で分けたら少ないね。美味しかったら、通販しようか? 嘉くんと同じ名前のワイン、嬉しいね」
「今回は愛夢にやられたね」
「今日はね、マグロ使い切っちゃったよ、ご飯にしようか。その後で、ワイン飲もうね」
うん、愛夢ちゃん、私たちが喜ぶと思ってこれを選んでくれた様だ。遥くんには、他のものでも良かったと思う。同じものにしたのは、嘉くんへのツッコミが遥くんから入ると予測してのものだろう。
夕ご飯も好評でした、嘉くんは料理を美味しく作ってくれる人だけど、作ってくれたものにも人にも感謝して美味しそうに食べてくれる人です。「美味しい」って言ってくれる事が、農家の娘としては最高の褒め言葉ですよね。
2024/12/16 活動報告掲載