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レモン彗星とスワン彗星の話(十月二十一日)



『20日に最接近するとみられるスワン彗星(C/2025 R2)は日没後の南西の低空に、翌21日に最接近するレモン彗星(C/2025 A6)は日没後の西北西の低空に、それぞれ姿を現す。肉眼でも見えるようになる可能性があるが、双眼鏡を使った方が確実だろう。



 このニュースを知った(よし)くんは、本当に嬉しそうだ。でも、天体望遠鏡が無いのが悔しいって言っている。次に見る事は叶わない彗星なので、見たい様だ。



「これ、話題にのぼっている新しく発見された彗星だね」

「うん、ぶち見たい」

「こんな機会無いものね」

「でも、こっちじゃ難しいんだよね。望遠鏡も実家だし」

「賢ちゃんがきっと送ってくれるよ」

「それはそれで、ちょっと、悔しいんだよね」



 あはは、小さい頃から、一緒に星を眺めいたのに、今では賢ちゃんの方がよく星空観測するのが悔しい様だ。まぁ、仕方がないよね。だって、東京じゃ街の明かりが眩しくて見えないからね。広島なら、ちょっと離れるだけで星空は広がる。



「スワン彗星と命名された彗星は2025年9月時点で16個存在している。太陽観測衛星SOHOの太陽風異方性検出装置SWANによる画像からウクライナのBezuglyさんが発見した非周期彗星だそうで、SWAN彗星またはスワン彗星は、太陽観測衛星の SOHO によって発見された彗星のうち、SOHO に搭載されている太陽風観測機器である SWAN (Solar Wind ANisotropies) の観測データから発見された彗星なので、複数ある様だね」

「ああ、だから同じ名前なんだね」

「そして、レモン彗星は、2025年1月3日にアメリカ・アリゾナ州のレモン山天文台で撮影された画像から発見された」

「新しい星を探すなんて、ほんと、根気のいる作業だよね」

「でも、見つける事が出来たら、って思うとロマンだよね」



 私と嘉くんの考え方が正反対で笑った。嘉くんは夢見がちで、私はそれよりも少しだけ現実的だ。空想的なものも嫌いでは無いけれどね。もっと、現実的だったら、きっと、嘉くんとは合わないかもしれない。



「レモン彗星が放つ独特のライムグリーンの輝きは、二原子炭素という分子によるもので、これは太陽光によって励起されると緑色の光を放つ物質で、いくつかの彗星で見られる現象」

「化学要素だー」

「あはは、麻衣、ほんと化学苦手だよね」

「天文学の方が好き」

「それは、嬉しいね。遥よりも俺が好きって言ってくれているようで」

「いや、それとこれは明らかに違うでしょ」

「でも、天文学も科学の一つだよ」

「それはそうなんだけどさ。楽しい事だけ覚えちゃダメ?」

「あはは、まぁ、別に良いんじゃない? と言うか、麻衣って、俺たちが何を話してもちゃんと聞いてくれるじゃん。覚えていなくても頭の片隅に残っている事あるよね」

「まぁ、確かに。ほんとは、聞いた事ちゃんと覚えていたいんだけど、意味が分からない事までは難しい」

「分からない事あったら、聞いて。遥だって、荘太郎(そうたろう)だって、(たすく)だって教えてくれるでしょ。実は麻衣の『なんで』って言う言葉が好きみたいだよ」

「内田くんには、色々と聞いてるよ」

「え、(あきら)に聞く事何かあったっけ?」



 いやいや、なんでも知りたがる子供見たいじゃないか。でも、その質問をする自覚はある。サポートメンバーにも周知されていたのか。で、内田くんには、聞いてるじゃん。レシピについて。



「自分でも調べるけど、それでも分からない事は教えて下さい」

「あはは、また、敬語になってる」

「癖なんで諦めて」



 嘉くんは、それから、色々と教えてくれた。その数字がどれほどのものなのか分からないけれど、時間にすると途方もない数字だった。



「NASAジェット推進研究所の計算によると、レモン彗星の公転周期はおよそ1,350年。今回の太陽最接近は2025年11月8日で、太陽から約7,900万kmにまで近づく。この通過により軌道がわずかに変化し、周期は約1,150年に短縮される見込みで、つまり、この彗星が再び太陽近くを訪れるのは、およそ西暦3175年だって、スワン彗星(C/2025 R2)の公転周期はもっと長く、太陽の周りを1周するのに約2万2554年かかる。次回の太陽系訪問は西暦2万4579年になるとみられている」

「うは、それ、もう一度はみれないやつなんだ」

「そうだね、だからすごく気になるんだよ」



 週明けは、事務所で打ち合わせが続くので、広島に行く事は無理な様だ。再接近が二十日と二十一日じゃ無くても見れるんだよね。



「土日に行って来たら? だって、今回を逃すと絶対に見えないんでしょ」

「それはそうなんだけど」

「私の事は気にしないで。だって、しょうが無いもの。土曜日の仕事はずっと前に決まっていた事だしね」



 嘉くんが行かない一番の理由は私が土曜日に仕事が入っているからだ。なので、何も言わないけれど、本当は見に行きたいのだろう。こうして、彗星の説明をしているので、尚更、行きたい欲は高まるはずだ。



「賢ちゃんと楽しんで来て。写真送ってくれるの待ってる」

「うん、じゃあ、行く事にするよ」



 決心が固まったみたいだ。十八日に実家に一泊の予定で、帰る事にした様だ。星見たさに帰るってきっと嘉くんぐらいだろうな。あ、星じゃ無いけど、愛夢(あいむ)ちゃんも似た様な事やっているか。仕事が次の日に控えているのに、ベガルタの応援に行ってるから、そんな感じなのかな。まぁ、今回は突然の事なんだけど。



「あのさ、根本的な事なんだけどさ、C/2025 R2 SWANの名前の意味って?」

「ああ、彗星の名称には、タイプ、発見日時、発見者に関する情報が含まれている。『C』は非周期彗星を示す。このタイプの彗星は太陽系を一度しか通過しないか、公転周期が200年以上のもので、『2025 R2』は、2025年9月前半に発見された2番目の彗星であることを示すから。『SWAN』は最初に説明した様に、Solar Wind Anisotropies (SWAN)装置による発見であることを意味するからだね」



 ほうほう、なるほど。彗星の名前の付け方にはそんな法則があったんだね。面白いな。ん? スワンの頭文字の最後の『N』はどこから来たんだ?



 2025/10/21 活動報告掲載

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