立秋(八月七日)
事務所に届けられた葉書を見て、莉子さんは呟いた。『残暑お見舞い申し上げます』と書かれていた、文章にカレンダーと見比べて小さくため息を吐いた。
「もう、立秋なのね」
「葉書の一文って、立秋を挟んで、『暑中』か『残暑』に分かれるんだっけ」
「そうね」
「でも、こう暑くちゃ、残暑と言われても信じられないわよね」
涼しい部屋にいては、暑さは分からないが、外はまだまだ暑い。葉書だけ見れば、綺麗なひまわりが夏っぽいイラストの葉書で暑さは感じられない。青空と相まって爽やかだ。
「美月、それより何をしているの」
「うん、麻衣ちゃんの衣装、もっと涼しげな感じに出来ないかと思ってね」
「黒い事もあるけど、基本は白なんで、十分涼しげなんじゃないの。これ以上、どこを変えるのよ」
「素材とかかかな。でも、薄い生地だと透けるから、それはしたくないのよね。麻衣ちゃん、露出のある服はすごく嫌がるからね」
「最近は浅生くんのお陰でちゃんと食べているじゃないの。たまには、足ぐらい出しちゃえば?」
「嫌がらない?」
「決定事項にしちゃえば良いのよ」
「うわー、莉子、暴君」
それ、全部聞こえています。本人前にして言っているじゃないの。一緒に、打ち合わせの資料を見ていた、プロデューサーの大崎さんは笑っている。そして、自ら妥協案を出していた。
「じゃあ、妥協案で、膝のちょっと上までにしましょうか。こんな感じで、どうですか?」
「お、可愛いとカッコいい。左右のベルトが良いですね。これ、サロペットにして、ベルトと一緒で、片側だけ肩紐を垂らすの可愛いんじゃ無いですか?」
ちょっと待って。それ年齢的にどうなの。引かれないか。しかし、色合いが落ち着いた感じなのもあって、莉子さんからもOKが出た。だから、私には?
「いつも、似たような感じになるから、たまには、冒険しても良いと思うわ。きっと、着れるの今だけよ」
「試作の段階だから、これ、浅生くんに送っちゃお」
ちょっと、美月さん、やーめーてー。と言うか、残暑見舞い、どうなった。なんか、みんなで楽しそうだ。その後、出来上がったその服は、まだまだ暑い九月の屋外フェスで着る事になった。可愛いんだけど、足がスースーするよ。
2025/08/07 活動報告掲載




