梅雨明けと土用の丑の日(sideレーゲンボーゲン)
今日の帰り際、社長に引き止められた。明日、急な打ち合わせが入って、事務所に来る事になった。今回は、嘉隆と遥だけだ。そして、麻衣も連れて来てと言われてしまった。
「今日、梅雨が明けたでしょう。これから、どんどん暑くなるから、少しでも英気を養いましょう。明日のお昼ご馳走するから、お弁当も無くて良いわよ。沖くんも莉子ちゃんを連れて来て」
嘉隆と沖は顔を見合わせた。そして、沖には分かった様で、嘉隆に教える様に、カレンダーを指差した。ああ、と言って嘉隆も納得する、でも、自分たちだけご馳走になって良いのか、と思う。今日、梅雨明けが発表されて、本格的な夏がやってくる。広島では随分前に明けていた。
「まぁ、打ち合わせは君たちだけなので、みんなには後で何かの形でご馳走するわ。明日、無理言って打ち合わせにしてしまってごめんね」
「いえ、楽しみにしています」
「大したものじゃないけどね、今日もお疲れ様」
「お疲れ様です」
多分、明日は土用の丑の日なので、社長がご馳走してくれるのは、うなぎだろうと遥が言った。カレンダーを見て、沖さんも気付いたようだしね、そう言って嘉隆はうなぎを食べるのは、久々だなと思う。
今年の土用の丑の日は、十九日と三十一日の二回なようだ。土用の時期中で、十二支が丑に当たる日。毎年夏の土用となるのは、七月十九日 から八月七日まで、基本、みんな最初の一の丑に食べる事が多いかもな、といつもの様に遥が説明してくれた。
* * *
麻衣は、気が引けると言って実家から送られて来たお菓子を持参している。流石に休みとは言え、昼間なのでお酒は自重したらしい。でも、この暑さなら、冷たいものの差し入れでも良かったかなと言っている。
予定の打ち合わせは社長の都合もあって、午後からなので、お昼を食べて打ち合わせに入る。麻衣と莉子には、お昼だけ食べて帰すのは忍びないと言ったが、どこかで買い物して帰るよと言っていた。夏物のセールが始まっているので、麻衣に付き合ってもらうと莉子は言っていたがその台詞を聞いた麻衣は難しい顔をしている。
海産物全般が好きな麻衣にとって、うなぎも嫌いでは無い様だ。うなぎは食卓に上るのにちょっと高価で、実家にいた頃は、鱧とか穴子を代わりに食べていたらしい。
「麻衣、ちょっ! かけすぎじゃないの」
「え、だっていっぱいかけた方が美味しい」
「限度って言うものがあるでしょ? と言うか、麻衣、山椒好きだったかしら?」
「んんー、好きですよー。普段は山椒がかかるもの食べませんよね。なんでもかけていたら、喉に負担かかるし、前は、Mother portで食べた牡蠣のドリアの時だったかな」
莉子に山椒をかけすぎて怒られている。広島で汁なし担々麺を食べていた時も、山椒をかなりかけていたな。その様子を初めて見た遥は笑っている。そして、面白いのは、半分だけ、大量に山椒をかけていた事だ。これは、残す前提だろう。流石に麻衣には、うなぎ全部は多かった様だ。
「ごめんなさい、これ以上食べたら、胸焼けします。良かったら、食べてもらえると嬉しいです」
「ん、いいよ。くいくさしだけど、遥もいる?」
あ、思わず呟いた方言は遥には理解出来なかったようだ。なんだ? ともう一度聞かれた。くいくさしは広島弁で食べかけを意味する方言だ。
「食べかけだけど、って事。流石に俺でもちょっと多いかなと思ったから」
「ああ、そういう意味か。うん、ならいる」
麻衣のうな重の麻衣が食べていた方とは反対側から半分だけ分ける。麻衣はすっかり、お茶に移行して、嘉隆と遥が分けているのを眺めている。
今日は、うなぎをご馳走してくれた、社長に感謝だ。
2025/07/19 活動報告掲載




