いい夫婦の日
その日、嘉くんは綺麗な花束を持って帰って来た。「誕生日は過ぎたよね、何かあった?」と聞いたら、どうやら、事務所から貰って来たらしい。イベントで使ったものを少しお裾分けしてもらった様だ。今までならそう言う事があっても貰って来る事はない。
「何故、突然?」
「うん、貰い物で悪いんだけど、今日はいい夫婦の日みたいでしょ?」
「ああ、すっかり蚊帳の外だとばかり思ってた。そっか、最近、TVとかでも話題になっているね」
「それにね、麻衣なら少しは長く綺麗に咲かせる方法知っているんじゃないかって思ってね」
「どうだろう、学校で習ったって言うよりもおばあちゃんに教えてもらったのでいいなら教えられるかな。どちらかと言うと華道とかしている遥くんの方が詳しいんじゃないかな。切り花を買って来たら水切りをする、余分なつぼみや、枝葉は剪定する、きちんと洗って乾燥させてあった花器、花瓶に生ける、水の量に注意する、風通しの良い直射日光の当たらない場所に飾る、毎日水替えをする、とか?」
「あ、普通だ」
「洗剤入れるとか、砂糖入れるか、あるけどあれは特に効果ないとか、聞くね」
「そうなんだ」
「でも、ありがとう。私、生けるね」
嘉くんから花束を受け取る。綺麗なバラとダリアをメインに纏められていた花束、どちらも秋に咲く花だ。バラは初夏に咲くのも有名だけど。最近では、ビニールハウスで温度管理されているのも多いので、通年手に入るものも多い。バラとダリア以外はそう言った花も混じっていた。
「お、コットンフラワーだ。これ可愛くて好きなんだよね」
「花?」
「うん、花には見えないよね。綿花って言った方が分かりやすい? これから、コットンが取れるね」
「まぁ、それは見れば分かるかな」
白いふわふわした花は後でドライフラワーにしようっと。さて、花瓶はどれにしようかな。滅多に使われる事が無くて、これも押入れに入りっぱなしだ。流石に壊れると困るので段ボールからは出した。ちなみに剪定用の鋏もある。
「花瓶なんて、持ってたんだ」
「事務所からお花いただく事あるからね。どうやら、嘉くんと同じ考えでみんな、私には、植物任せておけば良いって思われているのよね」
「まぁ、農業高校出身だと、出来ると思われるよね」
「でも、実際はおばあちゃんから教えてもらった生活の知恵が多いかな。お米とか野菜は育てられるけれど、花はやって来てない。それも、切花になっちゃったら、どうしようもないよ」
「言われて見れば、確かに」
「ああ、嬉しいんだよ? ごめんね、話が逸れちゃって。だって、私のためにお花を貰って来てくれたんでしょう」
「それを言うなら、俺だって、貰い物でごめんかな、それ、手伝うよ」
「ありがとう、まずは、花瓶洗っちゃうね、それを乾燥させているうちに剪定しちゃおう」
手際に関しては、私も嘉くんも良い方だ。嘉くん、私の説明通りに花を生けてくれた。これを、朝の日課にして、毎日お水を取り替えてあげれば良い。これで、少しでも長く花を楽しめるはずだ。途中で、コットンフラワーだけは、ドライフラワーにしたいので、避けておこうと思う。
2024/11/22 活動報告掲載