ライブを一緒に
「絵美、いまどこ?」
「なんか、仕事午後から休みとって、仙台来てるって」
「うわー、仙台まで二時間かかるって言ってなかったけ?」
「そうだねー。ちょっとだけ、会おうかってなってるんだけど、あのタオル、知らない人が見たらベガルタの応援? って思うよね」
「あはは、確かに。というか、やっぱり、すごいな」
ライブ会場前のショッピング施設には、涼を求めつつ待機してる人が大勢いる。みんな、同じタオルなのでよくわかる。私と嘉くんは、明日、仙台で仕事があるので、前日の今日、仙台入りした。正確には、仕事があるのは、私で嘉くんではない。明日、ホームでベガルタの試合があるのだ。
「麻衣ー、おばんですー」
「こんばんは、絵美。今日は一人なんだ」
「平日だからね、麻衣は見るの?」
「いや、チケットない」
「当日券あるみたいだよ」
当日券あるのか、どうしようかなぁ。私は、嘉くんの上から下を眺めて悩む。今日の、服装は、白のTシャツに涼しげな紺のシャツ、麻素材の黒のスラックスに帽子とサングラス。暗いしいけるか?
「嘉くん、行ったらバレそう?」
「どっちかって言うと、バレるの麻衣だよ。知名度考えなさい」
「私に行くって聞いておいてそれ?!」
私の格好は、紺の短めなTシャツにジーンズをふくらはぎの辺りまでまくっている。それに、涼しげな白のワンピースを羽織っている。
「でも、麻衣と一緒に見たい」
「僕、どこかで待ってようか?」
「え、よっちゃんは行かないの?」
「絵美、麻衣と行きたいんじゃないの」
「麻衣とよっちゃんはセットだよー」
「セットなのか、それなら、しょうがないね」
え、なんでその絵美の意味不明な理論に納得しているの? 結局、当日券を買った。絵美は私たちのために順番を後ろにしてくれた。オールスタンディングだから出来る事だよね。
「僕、スタンディングで見るの久々」
「どれくらい?」
「ん、デビュー前に、自分たちの出番の合間に他のグループのライブ見たりするんだよね。参考にもなるから。その時のライブハウスの空気間を思い出すかも」
「よっちゃんたち、ライブハウス出身だよね。ライブハウスでは、いっぱいやってきたよね」
「僕、ライブハウスの空気感好き。なので、楽しみだよ」
「でも、ライブハウスでライブするよね」
「やっぱり、舞台に立つのと下で見るのはまた違うからね」
「なるほど」
人目があるのを分かっているのか、絵美と合流しても嘉くんは一人称が『僕』を徹底している。レーゲンボーゲンの浅生嘉隆だって気付かれてはいない様だ。音楽の方向性が違うからなのか、ファン層が違うからなのか、その辺は分からないけれどね。
「麻衣と参戦出来る日が来ると思わなかったよぉ」
「そう言えば、初めてだよね」
「レーゲンボーゲンのライブも一緒に行った事ないからね」
今度、麻衣と絵美の分、用意するって嘉くん笑っている。そっちだと、私を知っている人も多いから大丈夫なのかな、ちょっと心配だ。
ライブは最高でした。ライブハウスの雰囲気も楽しいね。カバー曲もあったりして、更に、普段踊らない人が踊ったりと、面白いものが見れた。
帰り際に、私に「マリ姐さーん」って声をかけてくれたお姉さんがいた。口に人差し指を当てて、「内緒」のポーズをとって、私はその場を後にしたのだった。きゃーって言う黄色い悲鳴があがった、やば。やっぱり、地元はばれちゃうね。嘉くんはバレてはいなかったようです。
2025/07/05 活動報告掲載




