半夏生と蛸(七月一日)
これも、昇魂逞しいな、と思う。スーパーに掲げられた半夏生に蛸を食べる習慣は、うちの地元では聞かない。スーパーで初めて知った。調べると関西地方の習慣な様だね。どちらかと言うとこの日までに農作業を終わらせると言う、農家の教えの方が身についているかもしれない。
「戦略に乗って蛸食べませんか」
「こんにちは、ごめんなさい。実家から送ってもらったのがあるんですよ」
「川村さんのご実家は、農家では?」
「あは、うん、農家だね。友人の実家がある地域が蛸で有名なんで、それで送ってもらったんだよ。なので、今夜はきゅうりもわかめもあるから、酢の物かな。蛸って料理のレパートリーが少なくて困りませんか?」
「そうですね、最近、好きな配信者の人がいて、その方が、蛸を使ったメニューを出していましたよ」
聞いたら、内田くんの配信チャンネルだった。主婦層に人気があるからなのかな。多分、偶然かも知れない。流石にレーゲンボーゲンの事は知っていると思うけど、サポートメンバーの事まではファンでなければ意識しないだろう。メガネ姿がかわいいの、って言っている。そっか、オフ時なので、眼鏡姿なのもあって、内田くんだと分かりづらいのかもしれない。内田くんにかわいい、は初めて聞いたかもしれない。かっこいいけど、かわいいとは認識の違いかな。嘉くんは、誰が見てもかわいいって言うけどね。
「蛸とカマンベールチーズのアヒージョ、熱いけどすごく美味しかったのよ。夏は辛いものを食べて発汗を促すためにも良いって晃くんが言ってたから、やってみたの。涼しいエアコンの効いた部屋でやるからなのか最高よね」
「うわ、それ聞くと美味しそうですね。ビールでぐっと流し込みたいやつです」
「ビール良いですね! 新商品出ていますよ」
「あは、お姉さん、商売上手!」
嘉くんは、新商品に弱いところがあるから、きっと買って行ったら喜んでくれるだろう。今夜は、アヒージョにしようかな。詳しいレシピを嘉くん経由で内田くんにお願いすると直ぐに返事が返って来た。そして、楽しみにしているって、メッセージも届いた。ちょうど仕事が終わった様だ。
「あ」
「どうかしましたか」
「うん、内田くんがうちに来て作ってくれるって」
「え、川村さん、晃くんと知り合い?」
「内田くん、レーゲンボーゲンのサポートメンバーなので、良かったら曲も聞いてね」
そう言って、私は営業スマイルを浮かべたのだった。お姉さんだけじゃ無くて、周りから黄色い声が飛び交った。
2025/07/01 活動報告掲載




