インターミッション 3.5
宴のあと
帝国統一歴708年7月某日0900時発表(エレギオン戦役祝勝記念式典開催日の翌日)
出典:マリーエンブルク領星系間衛星放送"ニュースダイジェスト"から。
・・・臨時ニュースをお知らせします。
先ほどマリーエンブルク星系政府より、極めて重大な発表がなされました。
これまでご病気と伝えられて来た、辺境伯太子ハインリヒ殿下が、既に3日前ご逝去されていたとのことです。
そしてまた同じくご病気とされていた、辺境伯家の御次男グンター殿下が、兄のハインリヒ殿下の死に関わったとして拘束され、2日前の軍法会議にて有罪の宣告を受けた後、同日星系軍拘置所内でご自害されたとの事です。
これらの事実は、辺境伯ヘルマン殿下の強い御意向によりこれまで伏せられていましたが、昨日の記念式典が終了したことから公とされたものです。
この公表に伴い、故辺境伯太子ハインリヒ殿下のご逝去を受けて、本日より3日間の服喪期間が発表されています。
更には、これら辺境伯ザルツァ家に係る不祥事件の発生により、先ほど辺境伯ヘルマン殿下は服喪期間が開ける4日後に、自ら退位する旨を宣言されました。
・・・こちらが、その宣言をされた時の映像です。
どうぞご覧ください。
・・・ ・・・ ・・・
尚、後継のマリーエンブルク辺境伯爵位には、ヘルマン殿下はご従弟にあたるノルトライン子爵家のリンハルト様を指名されました。
リンハルト様は、マリーエンブルク星系議会貴族院での承認を受け次第、第56代マリーエンブルク辺境伯リンハルト・フォン・デア・ノルトライン=ザルツァとして即位される予定です。
臨時ニュースは以上となります。
"マリーエンブルク辺境伯ヘルマン殿下、万歳"
・・・中略・・・
マリーエンブルク領星系軍人事局によりますと、先日の"エレギオン戦役"での功労者ノエル・フォン・ローリエ中佐が、星系軍軍令本部参謀部付准将として昇進したとの発表がありました。
佐官から直ぐの将官への昇進は極めて異例であり、過去のマリーエンブルク星系軍の歴史の中でも数例しかないとの事です。
"この人事は、ローリエ准将の極めて多大なる星系軍への貢献と、類い稀なる才能を正当に評価した結果である"との、軍令本部人事局のコメントがありました。
またローリエ中佐付副官であったヴァネッサ・フォン・デア・ノルトライン大尉も、同じく軍令本部参謀部付少佐に昇任し、引き続きローリエ准将の副官を務めるとの事です。
・・・中略・・・
ロタリンギア星系領首都フロランスからの報道によりますと・・・先月主要各都市で発生した反政府民衆デモは、一向に収まる気配を見せず既に2週間になろうとしています。一部の都市では暴徒化した民衆と治安部隊との衝突が伝えられ、ロタリンギア星系政府は極めて難しい対応を迫られているとの情報が・・・
・・・中略・・・
プトレマイス星系領では、以前よりプトレマイス王ジェラール様の重病説が流れており、事実この3か月余りその動向が全く伝えられておりません。
主要なプトレマイス領星系軍艦船は首都星系近くにあり、一部で星系軍艦船同士が対立するような状況が見られるとの情報が・・・
・・・・・・・・・・
そして某所
ある人物は独り言ちる。
「やれやれ・・・。どこもかしこも騒がしいことよ・・・。さて、では我々もその騒ぎに一枚加わるとするか・・・」
それからその人物は、おもむろに衛星放送受信機器のスイッチを切り、ゆっくりと部屋を後にした。