野菜炒めを作ってる間に何かがあったらしい
ちょっぴりグロいかもな描写があります(主人公が痛い目に遭うとかではない)
不安な方は退避するか我慢して下さい。
なんとなく赤パプリカを買ってみた。
一人暮らし故に自炊はそれなりにする方だけど、普段はモヤシとか特売の野菜ばかりなので本当に珍しい。
一個98円だったから後悔もない。
えぇと、ピーマンと同じ要領で使えば良いのだろうか?
普段使わない野菜は少しばかり緊張するな。
私はスマホで適当なレシピを検索しながら、結局無難に野菜炒めを作る事にした。
冷蔵庫にはカット済みのキャベツもあるし、冷凍庫にはシメジやモヤシもストックしてあるから材料に問題はない。
「よぉし」
ざっと洗ったパプリカをまな板に置く。
ピーマンより随分大きいけど、ピーマンとの違いって何だろう。
面倒だからわざわざ調べたりしないけど。
私はパプリカを縦向きに寝かせ、包丁で半分にカットした。
「?」
遠くの方で悲鳴が聞こえた気がした。
近所のどこかで誰かがふざけているのだろうか?
……まぁいいや。
私はパプリカのヘタや種部分を切り離し、一口サイズに切っていく。
ちょっと不揃いなのはご愛嬌だ。
どうせ食べるのは自分だし。
フライパンに油をひき、キャベツやらパプリカやらの野菜をぶちこんでいく。
普段の野菜炒めよりも彩りが鮮やかで良いなぁ。
そうだ!
今日は少し豪華にしてみよう。
そう思い付くやいなや急いで火を弱める。
確か魚肉ソーセージがシンク下の収納に……あ、あった。
早くしないと焦げてしまう。
私は魚肉ソーセージのフィルムを乱雑に剥がし、輪切りにするべく包丁を入れた。
──……! ……!
「ん?」
またどこかで叫び声のようなものが聞こえた気がした。
さっきとは方向が違うっぽいから別の人だろうか?
何にせよ、大声を上げるような人とは関わりたくないものである。
「よし」
どうにか野菜が焦げる前に魚ソーを投入できた。
弱火にしたせいか水っぽい野菜炒めになっちゃったけど、まぁいっか。
塩と粗挽き胡椒を適当に振りかけ、ザカザカと適当にかき混ぜる。
これにて「私特製、水分過多野菜炒め」が完成した。
うむ、八十点の出来ばえである。
私は冷凍してあったご飯をレンチンして野菜炒めと共にテーブルに置いた。
わぁい、飯だ飯だー。
「おっと」
ついでに飲み物を……と思って冷蔵庫を開けば、賞味期限が昨日までのカニカマが目についた。
これは流石に今日中に食べなければ。
そうだ!
このカニカマも野菜炒めに入れてしまおう。
パプリカの赤にカニカマの赤が加わってもっと豪華になるに違いない。
野菜炒めはすでに皿に盛られているけれど、箸で混ぜれば良いだけだし。
私はカニカマを袋から出すと、手で適当に縦に裂いていった。
──ぁあぁぁ……!
「!?」
ちょっとビビった。
どうやら何処かの部屋で誰かが大声を上げたらしい。
近所付き合いなんて皆無だからどの部屋に誰が住んでるかなんて殆んど知らないけど、近くだったら嫌だなぁ。
気を付けよう。
さて、お行儀の良し悪しはさておき、これで「水分過多野菜炒め・改」が完成した。
いただきまーす。
「うまぁ」
パプリカ、悪くないじゃん。
そんな事を思いながらモグモグと野菜炒めを頬張る。
食べきれない分は明日の朝に食べよう。
それにしても外が騒がしいな。
パトカーのサイレンも聞こえてきたし、事件でもあったのかな。
私には関係ないから良いけどね。
◇
──翌日。
野菜炒めは今日もうまい。
そんな私のほっこりモーニングは聴き込みだという警察官の来訪でぶち壊された。
何やら昨日、近所で大事件があったらしい。
話によると三人の人間がほぼ同時刻に惨殺されたとか。
とりあえず警察官には悲鳴のようなものが聞こえた事を伝えておいた。
それにしてもショッキングな朝である。
ドキドキしながらアパートの外に出ると、何人か見たことのある人達が立ち話をしていた。
この人達も警察に聴き込みをされたらしい。
曰く、被害者の一人は振り込め詐欺の受け子の若者で、首を切り落とされて内蔵をくり貫かれたあげく全身バラバラにされていたのだとか。
二人目の被害者は反社会的ナントカっていう怖い人で、頭から足先まで輪切りにされていたとか。
そして三人目の被害者はこの辺で有名な迷惑恫喝おじさん。
縦に引き裂かれるように千切れて亡くなっていたそうだ。
警察はトラブルや怨恨の線で捜査しているのだとか。
「怖ぁ」
あまりにも惨い話だが、どこまで本当かは分からない。
というか絶対盛られてる筈だ。
どう考えても人間に出来る仕業じゃないし。
まぁ近所で殺人事件ってだけでも怖すぎる話に変わりはない。
早く犯人が捕まるといいな。
私は適当に話を切り上げると、再びアパートに戻った。
さて、食べかけの野菜炒めでも食べよう。