恋するおっさん
まさかこの歳になって、こんなにも気持ちが不安定になるなんて思いもしなかった
毎日同じ繰り返しの中
あなたを見つけると目を離す事が出来ない
いったい何時からそうなったのか
部署が違うし、休日もバラバラだから会社に来れば会えるってわけじゃない
でも、憂鬱だった仕事が今は楽しみで仕方ない
なんて単純なんだろう
今までも沢山の恋愛をして来た
傷付けたり傷付いたりしながら生きて来た
夜中にどうしようもなく逢いたくなって、
気持ち落ち着かせるために意味もなく車を走らせたりしたことも何度もある
でもそんなものは、もう何十年も前の話
最近は落ち着いたもので、子供の成長や自分の趣味の為に時間を使い
人を好きになるなんて感情はどこかに置いて来てしまっていた
もちろん子供や嫁さんは好きだ
でも、今俺が持っている このなんとも言えない気持ち
家族に向けた ただ一方的に好きであり 安定と安心を持った感情では無く
はるか前に、まだ大人になりかけだった頃感じた
切なさと嬉しさ 憧れと少しばかり嫉妬を混ぜ合わせた様な気持ち
恋なのか
恋なんだと気づく
人を好きになると、嬉しいだけじゃなくて苦しかった
ただ一方的に好きでいるのでは無く、相手にも好きになって欲しいと願う
この苦しくて切ない
懐かしいけど、今の俺が持ってはいけない感情
今更 感じることなんて無いと思っていた
いや もう芽生える事は無いと思っていた感情
恋 口に出して呟いてみる
あまりの恥ずかしさに体が震える
でも、そうだ
きっと人生最後の恋
通勤で電車を待っている時
あなた会えると嬉しい
挨拶する
目が合うと嬉しい
気持ちが上がり 思わず笑みが溢れてくる。
でも、周りにバレない様に気持ちを隠す
誰も俺の事なんて見ていないのはわかっている
でもいいおっさんがニヤけているのは、
気持ちの良いものじゃない
もうあなたは気付いているのだろうか
気付いて欲しいけど、それはちょっと怖い様な
俺の気持ちにあなたは応えてくれるのだろうか
それは無理な話だ
あなたには幸せそうな家庭がある
俺にだって、幸せだと思える家庭がある
俺はこの気持ちを悟られてはいけない。