演劇準備
「そうですわね……まずは王子の役から決めないといけませんわね……ヒロインは一人二役で、ヴィランも決めませんと……」
ロゼールがそう零すとウィーナは控えめに手を挙げた。
「あの、ぼ、私は裏方をやろうと思います」
「あら、そのわけは?」
「私は平民出身ですから、高貴な身の役柄は不相応です。それに、裏方が居ないとどんなに素晴らしいものになるはずの舞台もつまらないものになります。責任重大ではありますが皆さんがよろしいのであれば是非やらせてください」
ウィーナのその言葉にラスティークは少し考えてから頷いた。
「いいでしょう。けれど、1つ交換条件がありますわ」
そういうとラスティークは1つの紙を手渡した。受け取ったウィーナが紙を裏返すとメモがされている。
「そのお店で今回の演劇の衣装を購入なさい。そうね、動きやすそうな白のドレスを1着とローブを1着。サイズは私達3人の誰が着ても大丈夫なサイズで。とは言っても丈くらいならメイドに頼めば何とかなるから多少大きくても構わないわ」
「は、はいっ!」
ウィーナがラスティークの言葉にビシッと手を挙げて返事をするとクリュッセルとロゼールはくすくすと笑う。そんな2人にラスティークは声をかけた。
「ほら、私たちで残りの役を決めてしまいましょう」
「えぇ、そうですわね。……と言うか1つよろしいでしょうか?」
ロゼールがラスティークの言葉に賛同すると少しモジモジとしながら問うとラスティークは『えぇ、構わないわ。言いなさい』と返す。その言葉を聞くなりロゼールは大きな声で提案した。
「私、王子役はクリュッセル様に是非やっていただきたくて……!!!」
「えぇっ、私!?」
思わぬ提案に戸惑いの声がクリュッセルから上がる。その言葉にロゼールは何度も首を縦に振る。
「貴女は王子役をやらなくて良いのかしら?それともヒロイン役をするつもり?」
「い、いいえ、確かにヒロイン役をやりたい気持ちはあります。……けれど、きっと私はヒロイン役でも王子役でもクリュッセル様が美麗な役をする時点で直視出来なくなる可能性があるので……それに、ヒロインか王子をしていただくなら是非とも男装を見てみたく思ってしまった自分がいると言いますか……」
「……な、なるほど……?」
怒涛のオタクトークに脳の情報処理が追いつかないラスティークと思考を放棄したクリュッセルが机を挟んで固まった。半分ほど外野になった為に少し面白がっているウィーナがロゼールのマシンガントークを止めた少し後にラスティークが意識を取り戻し、クリュッセルに問いかけた。
「……なるほど……。ねぇ、クリュッセル。あなたに王子役の推薦らしいけれどいいかしら?」
「………………っは、へ?王子役……?という事はヒロイン役は……」
「まぁ、彼女は悪魔を演じるそうだから私になるでしょうね」
「……!!!是非!是非やらせていただきますわ!ラスティーク様の良き伴侶になるために頑張らせていただきますわ……!」
「話が飛躍しすぎですわ!どうしてあなたはそんなに阿呆なのかしら!?」
目を輝かせて今日の幸運にクリュッセルが感謝をし、これから見れるであろうクリュッセルの男装にロゼールは思いを馳せる。そんな2人を置いてウィーナとラスティークは小物の用意などの確認を進めた。
「そうね……今年は『灰被り』を演じましょう?」
西庭園の薔薇を眺めながらグレイスがそう言い微笑む。
「ドレスの用意と配役はどう致しましょうか?」
「勿論、華々しいものでしょう?配役に関しては明日にでも」
優雅に紅茶を啜りながらそう対話していると1人の令嬢が駆け足でサロンに入ってくる。
「騒がしいですわね。全く、少し落ち着きなさい」
「も、申し訳ございません。しかし、1つ情報を得まして……」
肩で息をしながら令嬢がそういうとグレイスはソーサーにカップを置いて彼女に歩み寄る。
「何かしら?手短にお願いするわね」
「ら、ラスティーク公爵令嬢があの者たちと演劇をするそうです。演目はラスティーク嬢の実母が栄冠を手にした『湖のほとり』だそうです……!」
その言葉にグレイスは少し動きを止めた後に笑った。
(まだ諦めていないのね……ふふふっ、どうせろくな物にはならないわ。たかが4人。そのうち1人は平民出身。どんな醜態を晒してくれるのかしら?)
そして振り返る。
「ねぇ、私達が目指すのは勿論最優秀賞。手を抜くことがないように素晴らしい演劇にしましょう」
※髪飾りとかはメイドたちに(作成を)頼みますのでご安心下さい。
気がつけば98話目。いつの間に!?という気持ちです、もう少しで100話。区切りの時が近いです。




