夏季休暇 7
部屋にあった家具のうち、使えそうにないテーブル・椅子・本棚を運び出すと宙を舞うホコリが風によって舞い踊り、輝きながらどこかへと飛んで行く。日の当たらないようにカーテンが締め切られていた室内は壁の色があまり日焼けしていなかった。
真っ白な壁に少し薄汚れた部分があったり、木目の色が所々異なったりとはあったがそれも許容範囲だった。
「それじゃあ、この魔道具を早速使いましょう。どんな形になるかは使用者次第らしいけれど……」
『どうなるのかしら』と少しワクワクしたようにラスティークが床にその魔道具をおいて魔力を僅かに流し込める。するとネモフィラの様な色の儚い光を放つと上には今にも飛び立ちそうな鳥の彫刻が、下には優雅に泳ぐような魚の彫刻が彫られた水色を基調とした本棚が壁の半分を占拠した。
「これは……」
「随分と大きい本棚ね。こんなに大きくなる物だったのかしら?」
「多分……ラスティーク様の元々の魔力量と適性属性が素材と相性が良かった結果でしょうね……」
「適性があるだけでこのサイズって……魔道具って面白いわね……」
口々に大きすぎる本棚を眺めてそう感想を漏らす。
「大きいのも良いけれど、ここまでのだと狭すぎるわ。どうすれば調節ができるのかしら?」
「……うーんと……確かこのタイプの魔道具なら右側の1番下の棚の横の木の板にある感知版に触れるんですが、サイズをどれくらいにしたいか。って言うのにもよるんです」
ウィーナが思い出すようにそう説明するとラスティークは少し考えて2人に問いかけた。
「ねぇ、どうせ貴女たちが主に使うのだからどのくらいの大きさが良いのか教えなさい」
「そうですね……私はこれより一回り小さいものが丁度いいかと」
「そうですわね。これは辞書や参考資料なんかを入れ始めそうなサイズですわ。あぁ、その言葉を口にしただけでもう悪寒しか……」
「そう……なのね……」
ロゼールの言葉に苦笑いを零しながらクリュッセルからの要望の通りに一回り小さくなるように願いながら感知版に触れると今度はぽしゅんと音を立てて先程よりも一回り小さくなった本棚に姿を変えていた。
「あら、これは良いわね。部屋も狭過ぎないくらいだし貴女たちにも丁度良いくらいだし」
「そうですわね。……そうですわ、お昼にはリャイナたちも門前まで椅子とバスケットを持ってきてくれるようですからこちらでいただくのはどうかしら?」
「ここで……いいですわね!私の馬車にも一応ティータイム用のワンセットが付けてあるからそちらも持ってこさせましょう」
「それじゃあ早速換気を終わらせて箒で床もはいてしまって衛生環境も整えなくちゃ行けませんね。お昼までならあと30分近くあるので15分早めに動くとしても十分です。いざとなれば僕が進めておくので」
「僕……?貴女、一人称は私だったような……」
ラスティークが訝しげにそう尋ねるとウィーナは慌てふためきながら取り繕う為に思考を巡らせたが、諦めて全てを明かすことにした。
約5分後、話を終えたラスティークはウィーナの額にデコピンをするとこう告げた。
「全く……そんな事で私が貴女を見下したりバカにしたり仲間はずれにするとでも?そんなこと私の得になんてならないわ。だから気にせずに好きに自分のことを呼びなさい。どうせその程度の事で怒るのなんて貴族程度でしょう?例外として、ここの私たちは貴族であってもこの学園内での今の評価は落ちぶれ令嬢、変人令嬢、幽霊令嬢と言われているのだからこんなところで変に取り繕わないで」
「で、では、僕は僕で良いんですか……?」
「話を聞いていなかったの?良いと言っただから聞き返す必要なんて無いわ。とりあえずは掃除をするのでしょう。ほら、時間が無いわ。さっさっと終わらせてゆっくり過ごすのよ」
ラスティークがそうウィーナに手を差し伸べながら笑顔で話す。そして4人は箒を手に床に降り積もっていたホコリをはき、塵取りでとると紙に包んで焼却炉に捨てた。
あともう少しで馬車の時間になるまで作業をしていた4人は駆け足で門前まで向かい、書類整理の作業をしていたシャラナーダとガスティンから注意を受けたのだった。
こんばんは。花弁阿奈羽です。先週の答え合わせですが『熱は下がったが咳の度に頭痛がする中身体にムチ打ちながら頑張った』が正解でした。
ちなみに流行病に罹って今隔離中です。明日になれば最終日です。
来週はサロンでの昼食を書きたいです。なんなら生徒会も書きたいです。
↓↓↓作者より注意喚起……かな?
流行病は相当きついです。熱も9度6分まで上がったり下がったりを繰り返したし、身体も痛くてろくに眠れませんでした。体重も1日1キロペースで減るので健康には気を付けてください。家庭内感染とか職場内感染とかのどうしようもないのは諦めてください。諦めが肝心です。




