夏季休暇 5
「マスター、邪魔するよ」
ウィーナがそう慣れたようにナイスミドルに声をかけると、顔を上げた彼が少しだけ記憶を辿る素振りを見せた
「……あぁ、ウィーナか。久しいね。後ろの方々は学園の友人かい?」
「うん、そうだよ。ここにいるメンバーでサロンを設立する事にしたんだ。それで魔道具をミオさんの所で買ってきたことだし、休憩の意味も込めてここでゆっくりしようかなって」
窓際の通りに面さない方の机に別れて座りながらウィーナが微笑む。マスターはカップをいくつか準備し、7人はそれぞれコーヒーや紅茶を頼む。
“みゃおん。”
それぞれが魔道具で適温になっているカフェで寛いでいると少し高い声が聞こえた。
足元から聞こえたその声の方に視線を移すと愛らしいサバトラの猫が金色の双眸でこちらをじっと見上げていた。
「あら?可愛らしい猫ね。ここで飼われているの?」
「本当ですわ。水色のリボンが付いてますわね」
ラスティークの言葉にロゼールが頷きながらサバトラをそっと抱き上げる。ふわふわで柔らかな毛並みと可愛い肉球は見ていると癒され、全員の疲れが僅かばかりだが取れるような気がする。
「あ、シルヴィかな?」
「シルヴィ……とはこの子の名前ですの?」
ウィーナがハッとしたように名前を呼ぶとサバトラは答えるように『みゃあっ!』と鳴いた。
「そうなんです。実は私、シルヴィの名付け親なんですよ。名付けた時は手乗りサイズだったのに、たった1年でこんなに大っきくなるんだなぁ……」
「へぇ、そうだったのね」
ロゼールがシルヴィをそっと床に降ろすとシルヴィはウィーナの足元で身体を擦り寄せる。そのあまりの破壊力に思わず悶えているとラスティークが問いかけた。
「……ねぇ、シルヴィの名前の由来って隣国の神話かしら?確か銀翼の女神の名前がシルヴィアだったはずだけれど……」
「えぇ、そうです。物語や神話を読んだり聴いたりするのが好きで、よく自分で空想したり、教会に通い詰めて聞かせてもらったりしてました。シルヴィアの話も隣国から駆け落ちしたと話した人が教えてくれたんです」
ウィーナが懐かしむようにそう話すとラスティークはそっと微笑んだ。その慈愛に満ちた微笑みに思わずクリュッセルは心臓を抑えかけたがギリギリのところで耐える。シルヴィは移り気な気質もあってウィーナたちのところから離れ、リャイナたちの座るテーブルへと近付くと思いっきり可愛がられていた。
「そうなのね。駆け落ちと言うと身分差かしら?貴族と庶民みたいな?それとも種族差かしら?」
「分かりませんよ、もしかしたら同性かもしれません」
「あら?同性での駆け落ち何てものがあるのね」
「えぇ、世の中には色々な恋模様がありますから!一つ一つが尊いものですわ」
「そう……なのね」
「そうですわ!」
シルヴィがメイドたちに可愛がられている間に3人はウィーナの話にでてきた駆け落ちしたと言う人について予想し合うと声を揃えて答え合わせを願った。
「えぇっと、その人なんだけれど……大変言い難い事だけれど……」
「大丈夫よ、どんな内容でも受け止めるわ!」
言い淀むウィーナに3人が興味の眼差しを向ける。その圧に折れたウィーナは小声で続けた。
「娼館の夜鷹だった人らしくて……愛した人と一緒になりたくて遣手の手の届かないように国を出る事にしたらしいんです……」
視線を逸らしながらそう話すウィーナと思わず聞きすぎてしまった事から恥じらう3人になんとも言えない空気が流れる。
そして、そんな空気を察してかタイミングよくマスターが紅茶を運んでくるとロゼールとラスティークに手拭きを渡した。
「シルヴィを撫でたので、飲み物に毛が入ってしまっては勿体無いですから」
困惑した2人におちゃめにウインクをするとマスターは隣の机でシルヴィと戯れるメイドたちにもコーヒーと手拭きを渡した。シルヴィはコーヒーの匂いを嗅ぐと興味無さげに床に降り、“くあっ”と欠伸を一つするとしっぽをゆらりと揺らして昼寝を始めた。
ゆっくりと出来たかは分からないカフェでの時間を過ごした後、明日には学園に向かってサロンの準備をする事を約束してそれぞれの馬車で帰る。
まだ日は高いけれど、身体はクタクタなそれぞれは家に戻った時、バッテリーが切れたかのように眠りに就いた。
サロン設立まで行けませんでした(分かりきったこと)
とりあえず出来れば今年最後になるから明日も投稿出来たらなって思います。キリいいところで終わらせたい:( '-' ):
↓↓↓作者の近況
今まであったけどほとんど稼働してなかったアカウントでようやく1作品目を連載で出し始めました。婚約破棄された元悪役令嬢は太ることにします。は明日投稿出来ればしたいですが、弟くんのセリフが思い浮かばなすぎて止まってます。




