表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

5/105

精霊のお告げ

「「お帰りなさいませ!!殿下!!」」


王太子様に促されるまま、お城に足を踏み入れると30名ばかりの騎士様、執事様、メイド様方がずらっと勢揃いしている。


「ルーベン神官長はいらっしゃいますか?」


クロフォード様に問われて、騎士様の後ろからでてきたのは、流麗な銀髪に白い法衣を纏った細身で長身の男性だった。


「殿下、こちらにおります。そちらが、フェリスティア嬢ですね?グリンフィールド王国の神官長を務めております、ルーベン・アーリアと申します」


そう言って流れるようにお辞儀をする。

顔をあげると無表情の紫の瞳がアメジストのようで思わず、見とれてしまう。


「ルーベン神官長、早速ですが、フェリスティア嬢を“精霊の間”にお連れしてくれ」

「承知いたしました。早々で申し訳ございませんが、一緒にご移動をお願いします」


精霊の間、ということはもしや、早速お告げを聞いてこい、ということだろうか?


急な展開に着いていけず、おろおろしていると、クロフォード様が信じて疑わないという笑顔でこっちを見ている。


「フェリスティア嬢、大丈夫です。私が保障しますよ」


…みんな一体どこから、そんな自信がわいてくるのだろうか…。


~・~・~・~・~


「この扉の奥が、精霊の間となっています」


緊張と不安から足取り重く、ルーベン神官長に付いていくと、重厚な木の作りに金で装飾された、威厳…というか、今の私には威圧感溢れる扉にたどり着いた。


「精霊の間には、代々、神託の巫女しか入れない決まりとなっていますので、ここから先はお1人で入室いただきます」


「あの…ルーベン様…大変申し上げにくいのですが、私、お告げとやらを一度も聞いたことがない上に、その、記憶がなくて、精霊についてなんの知識もないのですが…」


「大丈夫です。この部屋に入るまで神託を賜ったことがない巫女も歴史上、幾人もいますので。それにこの精霊の間は、部屋の作り自体が、精霊が訪れやすい造りとなっています」


そう言うと、ギギっといかにも、重たそうな音をたてながら、ルーベン様が涼しい顔で扉を開いた。

ペンより重いものは持ったことないみたいな体格なのに、どこにそんな力があるのか。


「早速ですが、どうぞ部屋にお入りください。退出の際も扉をお開けしますので、終わったら中にありますベルを2回鳴らしてください。もしなにか緊急のことがありましたら3回ベルを鳴らしてください。私は扉の前で控えておりますので」


どうやら入らないという選択肢はないらしい。


震える足で部屋に入ると、背後で重い扉が閉まる音がした。

念のため扉を押してみるが、私の力ではびくともしない。

というかお告げが聞けるまで、私、ここに軟禁なのでは…。


思わず背中に冷たい汗が流れるが、しょうがない。

雨が降らなくて困っている人達もなんとかしたいし、ダメもとで頑張ってはみよう。


~・~・~・~・~


部屋を見回すと、10畳ほどのスペースは薄い青の光に充ち溢れていた。

どうやら天井に水色のステンドグラスが嵌め込まれているようで、なにか細工もしてあるのだろう。

ステンドグラス越しの割には眩しいくらいに明るかった。


部屋の中央まで歩みを進めると、床になにか模様のようなものが描かれていた。

太陽や月、星といった絵と、全く読めない文字のようなものが書かれていて、本で見たことのある魔方陣といった感じだ。


どうやったらお告げとやらが聞けるか全くわからなので、とりあえず魔方陣の、真ん中に正座をし、手を合わせて祈ってみる。


この世界で通じるかはわからないが、前世の祭事とほぼ同じスタイルだ。


この姿勢のまま、呪文―なんてものは知らないので、とにかく脳内で一生懸命話しかけてみる。


(精霊さん、私なんかのところにいらっしゃりたくはないかもしれませんが、1度だけでもいいのでお願いします。この国の人達が雨が降らなくて困っているんだそうです。どうか、雨を降らせてあげてください。あるいはいつ頃降るのかだけでも教えてください…!)


目をギュっと瞑り、合わせた手に力を込めて何度も同じことを、頭の中で語りかける。


すると、急に体の力が抜け、ふわりと浮き上がるような感覚に陥り、目の前が光に包まれた。頭の中でクスクスと子どものような笑い声が聞こえる。


(座り方、変なの~)

(あの、もしかして、貴方が精霊さん…?)

(そうだよ~なんでそんな変な座り方なの?足、痛くないの?)

(座り方は大丈夫なんですが…そんなことより、教えていただきたいことがあるんです!)

(雨のこと?)

(そうです!この国の方が雨が降らずに困っているそうなんです。なんとか雨を降らせることはできないでしょうか!?)

(うーん、雨を降らすのは出来ないけど~いつ降るかはわかるよ~)

(本当ですか!?いつ降るんですか!?)

(フェリスティア、おもしろそうだから、また僕とお話してくれる~?)

(もちろんです!私でよければいつでも!)

(じゃあ、特別!教えてあげる~!新月の夜が明けたら雨、降るよ~)

(新月の夜が明けたら…)

(また今度遊んでね~約束だよ~)


「あっ!ちょっと精霊さん!」


思わず声をあげ、目をパッと開いたときには、もうなにも聞こえず、先程と同じ部屋が広がっていた。

天井を見上げると、相変わらず明るいが、日が落ちてきているのだろうか、少し暗くなっている気がする。


「新月の夜が明けたら…ね」


私は一人で、呟くと心の中で精霊にお礼を言って、扉の前に置かれたベルを2回鳴らした。



ブックマーク&評価をいただきありがとうございます!励みになります!


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ