王妃様とのお茶会2
「お義母様も、もう少し頻繁に王都にいらしてくださればいいのに!お話ししてくださる方が減ってしまいますわ!」
「シェリルはそれでもいいかもしれないけど、年寄りがお勤め出来ることもないのに、王宮に留まっては、皆の邪魔になるだけですよ。先日、最近、侯爵家や伯爵家のご婦人からもお茶会のお願いが来るようになった、と手紙に書いてあったじゃない。それはどうなったの?」
このソフィア様とシェリル様、会うまでは「義理の母娘ってどういう関係なの?」とドキドキしていたが、想像以上に砕けた関係のようだ。
というか、実の母娘…というより女学生の友人同士といっても過言ではない雰囲気だ。
初めてお会いした私には大変ありがたい。
「よくよくお手紙読んでみたら、みんなクロードの婚約相手を探るためのお誘いみたいなんですもの!それくらいならいいですけど、あわよくば自分の娘、妹、姪をお相手に~っていう感じなんですよ。そんなことジルやクロード自身に言ってくれればいいのに」
「それこそ国王や当の王太子に直接言えるわけないというものです。人当たりのいい貴女から色々聞きたいのでしょう」
“ジル”は国王陛下、ジェラルド様の、“クロード”はクロフォード王太子殿下の愛称だ。
前世の自身の家族関係(家族というより、厳しい教師と教え子のような感じだった)を思いだし、本当に仲の良さそうな一家なんだなと少しうらやましいような、ほっこりしたような気持ちになる。
「そうだ!フェリスティアちゃん!結婚相手にクロードはどう?」
「ふぇっ!!私でございますか!?」
思わず紅茶のカップを落としかけた。
「フェリスティアちゃんだってお年頃だし、アーリア家でもどなたかお相手探してるんじゃない?」
「いっいえ、私なんかが王太子様のお相手になど、おこがましい限りでございます。それにまだ、巫女としてのお仕事や学業も修行中の身でございますし…クロフォード王太子様は、すでに王家の方として立派にご公務をお勤めでらっしゃいます。私のような未熟者ではなく、もっと相応しい方がいらっしゃると思います」
私は先日の議会での、王太子様の堂々たる仕事ぶりを思い出していた。
「けっして未熟などではありませんよ。フェリスティア」
「ソフィア様…?」
「短期間に貴族としての知識やふるまいをしっかりと勉強して物にしていることや、精霊ともしっかりと交流をもち、巫女としても立派に活躍していることは、私も聞いています。記憶がないという、ハンデの中でこれらを成し遂げているのは貴女の努力の賜物です。
決して卑下するものではありませんよ」
「ソフィア様…ありがとうございます」
私はきゅっ目をつぶって深くお辞儀をした。
こうしないと涙がこぼれてしまいそうだった。
「貴女が臥せっている時にクロードが贈り物をしたみたいだ、って侍女たちの噂話で聞いたから、脈ありかと思ったのに~」
シェリル様はつまんない、とでも言いたげに唇を尖らせている。
思わず苦笑してしまったが、そんな姿も似合っているお可愛らしい方なのだ。
「シェリル、それこそ若者たちの恋路に首をつっこむものではありませんよ」
「はーい、お義母様。でもね、フェリスティアちゃん!もしもクロードに恋しちゃったら教えてね!私、応援しちゃうから!」
「はっはい、ありがとう?ございます」
相手の母親に応援される恋路とは一体なんなんだろう。
そう思うと素直にお礼は言えないが、シェリル様の話題はすでに他へと移っている。
美味しい紅茶にお菓子、少女のように天真爛漫なシェリル様と包み込むような温かさをもったソフィア様。
お茶会は終始、和やかな雰囲気のまま夕方近くまで続いた。
~・~・~・~・~
お茶会の終わり、私の馬車が迎えに来ると畏れ多いことにシェリル様、ソフィア様が揃って見送りにでてくださった。
ソフィア様はシェリル様たってのご希望により、今日はお城にお泊まりになるらしい。
「フェリスティアちゃん、また招待状出すからぜひぜひお茶しましょうね!今日は楽しかったわ!」
「私こそ、本日は本当に楽しい時間をいただきました。お招きいただきありがとうございました」
「もし巫女としてのお勤めの中でなにかあれば、言ってちょうだい。少しはお役にたてることがあるかもしれないわ」
「心強い限りでございます。ありがとうございます」
名残惜しいが、いつまでもお二人を立たせておくわけにはいかないので、御者が馬車を走らせ始めた。
馬車の窓から振り返ると、シェリル様が大きく手を降っているのが見える。
本当にまたお誘いいただいたらうれしいな、そう思わずにはいられなかった。
~・~・~・~・~
「シェリル、どうして急にフェリスティアにクロードを勧めたのですか?」
ソフィアは少しだけ咎めるような、それでいて面白がっているような口調で問うた。
「私、二人は恋に落ちると思うです」
シェリルはにんまりと楽しげに笑っている。
その瞳は初めてフェリスティアが謁見に訪れた時と同じようにキラキラと光っていた。
「お義母様、私、こういう勘、当たるんですよ」
ソフィアを振り返ったシェリルの顔はまさに、コイバナにのめり込む女学生そのものだった。
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