表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

6/8

JCと19歳……って書くと漂う犯罪臭

TSはロマン(挨拶)

ヒロイン候補の登場回!

 ペタペタと。


 スニーカーの靴底でアスファルトを叩きながら向かうコンビニへの道。俺の住んでるマンションから徒歩で十分くらいにあるのは七時に開いて十一時に閉まる全国チェーン店だ。


 今は普通に二十四時間元気にピカピカ光っている。夏になると虫が集って大変なことになるんだよなぁ……。


 あと、俺のバイト先だったりする。日々そこでひーこら言いながら労働に従事しているのだ。


 バイト休みの日にバイト先に行く気まずさなんぞ、最初の数か月でお亡くなりになった。うん、別のコンビニに行こうとするとチャリが必須なんだ。アクセスの良さを天秤に乗せれば、そちらに傾くのは当然と言えよう。


 運動不足のオタクはコンビニまで歩くのでさえ結構な試練なのである。それはもう辛くて辛くて「まぁいいか」で一食抜くこともざらだったり? うん、だから不健康なんだよ。


 今日は平日であり、時刻はお昼。都会とは言い難いが田舎というとガチ田舎の人に怒られそうな微妙極まりない街の住宅街は時間帯もあり人通りが少ない。まだ十人くらいとしかすれ違っていない。


 ……いない、のだが。その全員が、俺を見ると見事なまでの二度見を披露するのだ。それはもう、絵にかいて飾った挙句、百科事典の『二度見』の項目に挿絵として載せておきたくなるほど見事な二度見だった。


 こう、足を止めてくるっと振り返り、俺を見て驚愕とか恍惚とか、そういう表情をする。


 何なら三度見をする猛者もいたくらいだ。うん、十人中五人はしてた。二分の一とは恐れ入ったぜ。


 十人がすれ違えば十人が振り返るってのはよく聞く美人さんへの謳い文句だけど……うん、まさか自分の身に降りかかってくるなんて思わないじゃん? 


 びっくりやら恥ずかしいやら悍ましいやらでさっきから視線を上げられないんだけど? ずっとアスファルトの観察を続けることしか出来ない。アスファルトを見て精神安定を図る……ヤバいな?


 どうやら種族『美少女』の破壊力はだぼだぼのジャージと野球帽程度ではこれっぽっちも隠せていなかったらしい。


 くそっ、道行く人に注目される経験とかないから普通に困惑するし何より無遠慮な視線をじろじろ向けられるのってかなり大変だ。

 

 今、すれ違ったサラリーマンらしき男性も、俺の顔を見た後、帽子から零れる白銀の髪に視線を向けて、最後に身体中を嘗め回すように……ひゃぁあああ! キモイキモイキモイ!! 


 オッサンの情欲と獣欲と淫欲の混ざったでろでろドロドロな視線の不快指数が天元突破してるぅううう!!! 鳥肌の立った肌を冷や汗が流れていく。何ならぶるり、と身震いまでしてしまう始末。


 女性は男性の視線に敏感って聞くけど……うん、それをこの身で体感するとは思わなかったよ。向こうはチラ見のつもりなのかもしれないけど、俺にとってはガン見を超える何かだった。


 エロい目で見られるのってこんなに辛かったんだね……うん、これまでのことは猛省しよう。特に夏場とか。


 薄着で歩く女の人を「お?」とか思ってついつい目で追ってしまって本当に申し訳ございませんでした。薄着で居る方が悪いじゃん? とか調子乗ったこと考えてしまい真にマジにごめんなさいです。


 いやもう、本当に辛い。そもそもボッチで引き籠り気質のただのオタなんだよ? しかもつい昨日までは男だったんだよ? それが同性のそれもオッサンからAVコーナーで獲物を物色している時みたいな目を向けられる? 


 冗談はよしてほしいがこれが現実……! 圧倒的現実……! 泣いちゃだめですか?


 世間の評判は19歳フリーター男よりも絶対的にいいはずの究極的美少女になったのに、過ごしやすさは前の方が普遍的で良かった? 皮肉にエッジが利き過ぎじゃない?


 翠さんのおかげで復活したメンタルがまた大打撃を受けてへにゃへにゃし始めた。これ以上はくるりとターンののちにお家へダッシュしてしまいそうなので、さっさとコンビニに向かうとしよう。


 くぅ、こんなことなら筋力じゃなくて敏捷にBPを振るんだった! それか《気配遮断》とか《隠密》みたいなスキルが欲しい。人目を遮る能力に都合よく目覚めてはくれないだろうか……ないか。うん、アホ言ってないでさっさと買い物終わらせよーっと。



「スキルと言えば……何個か手に入れてたんだっけ?」



 『美少女』の衝撃で忘れかけていたけど、ガチャでスキルを幾つか手に入れていたんだっけか? 全然確認してなかったわ。 


 スマホを取り出し、【STATUS】を起動。えっと、スキルスキル……何があったっけ?


 画面を弄っていると、『取得可能スキル一覧』というページにたどり着く。どうやらBPを消費することで新たなスキルを入手することが可能らしい。《剣術》とか《身体能力強化》とかそれっぽいのがずらーッと並んでいる。


 現在のBPはゼロなので、ほぼすべてのスキルが取得不可を表すように灰色に染まっている。その中に、数個白い文字で書かれたスキルが。


 《召喚術》《絶巧棄利》《状態異常耐性(微)》《集中》《鞭術》《視力向上》


 この六種類が、現在習得可能な、ガチャで手に入れたスキルたちだ。SSRが一つ、SRが一つ、Rが二つにNも二つ。


 なお、最初のR以上確定十連ガチャを除く九十連の結果はRが十二のNが七十八という惨憺たる有様。十連ガチャだと最低保証でRが必ず一つは出るので、自力で出したRはたったの三つ……あまりの運の無さに泣けてくるぜ。


 しかもRででたスキルが《鞭術》と《視力向上》……うん、微妙! 鞭の扱いに長けてどうすんの? SMに目覚めるの? 勘弁願いたい。俺はノーマルなんだ。


 視力向上は結構ありがたいけど……地味だな、うん。派手さの欠片もないわ。


 《召喚術》は正しくファンタジーなスキルって感じだ。何を召喚するかまでは分からないけど……まぁ、ラノベ知識を鵜呑みにするなら魔物だろう。武装召喚系ならもっと違うスキル名だろうし。


 《絶巧棄利》……まず、なんて読むかすら分からんのだが。ぜつこうきり? ぜっこうきり? 


 スマホで調べてみた。『ぜっこうきり』だそうだ。意味は人の手で作られた便利な道具を捨て、自然な生活に戻ること……うん、意味を調べてもどんなスキルか分からない!? 


 えっと、意味をそのまま当てはめるなら、このスキルを持っていると文明の利器が使えなくなる……とか? いや、唯のデメリットスキルなんだが? 今のところ最高レアなスキルがまさかのゴミスキル!? そんなのってないよぉ……。


 何処かでスキルの効果を確認できないだろうか? とスマホをいじいじ。うん、タップするだけでよかったみたい。各自説明画面に移ることが出来ました。どれどれ?



《召喚術》/SR/特殊魔法/AS・PS

 異界より魔物を召喚し召喚獣として使役するスキル。

 召喚にはMPと魔石を使用する。

 魔石の品質で召喚できる魔物の階位が変化する。

 召喚獣を魔石で強化することが出来る

Lv1 AS:『召喚(1)』『魔石合成』 

   PS:『召喚獣強化(微)』


《絶巧棄利》/SSR/能力強化/PS

 利器などいらない。すでにその手に勝てぬのだから。

 器用の数値に+。器用さを必要とするスキルの効果に補正。

Lv1 器用+100


《状態異常耐性(微)》/N/耐性/PS

 状態異常に対する耐性を会得する。

 レベルが上がると効果上昇


《集中》/N/特殊/PS

 任意の行動を集中して行うことが出来る。

 集中して行動している時はその行動の結果に補正。

 レベルが上がると補正倍率が上昇。


《鞭術》/R/武器習熟/AS・PS

 鞭の扱いに習熟する。

 鞭を装備時、筋力と器用に補正。

 鞭の武技を使用可能。

Lv1 AS:『武技:拘束』

   PS:『鞭装備時筋力向上(微)』『鞭装備時器用向上(微)』


《視力向上》/R/能力強化/PS

 視力が向上する。

 レベルが上がると効果上昇。



 ふむふむ? まぁ、なんとなくは分かったかも。ぜっこうきりさんはまさかの能力強化系だった。しかも器用なのかー。まぁ、鞭術との相性はばっちりみたいだからオッケーだ。


 詳しい効果はまた習得したときに確認しよう。でも、《状態異常耐性(微)』とかどうやって試せと? 毒でも煽る? 死ぬわ!


 え? すぐに取得しないか、だって? いやぁ、流石に歩きながらスキル取得なんてやってられんわ。ステータスを2上げただけで身体能力が分かりやすいくらいに変化したのに、100も上がったらどうなるかわからんだろう? 落ち着いてるときにやりまーす。


 そうこうしているうちにコンビニに到着。さっと店員を確認……うん、顔見知りでも何でもない奴だな。この曜日はバイト入ったことないから、俺のことを知っている奴はいない。


 ……あの人がいなくてよかった。一人いるんだよ、この状態を見られたくない人が。物凄く厄介で、物凄く面倒くさくて、物凄く性格が悪くて、物凄く天才な天災が。


 この状態でも『桐生総司』だと認識されていると分かっていても、あの人ならば見破ってくるかもしれない。そしてニヤニヤニタニタといじられ、弱みを握られ散々玩具にされる。……おっと、考えただけで寒気が……さっさと入ろっと。



「しゃーせー」



 見知らぬ女性店員のいい加減な挨拶を聞きながら、慣れた店内を練り歩く。えっと、のり弁とーお茶と―甘い物でも買おうかな? 甘いは美味い。うん、コンビニスイーツには無限の可能性が込められているんだよ。俺のおすすめはシュークリームです。


 全部手に持ったらそのままレジへ。あっ、袋お願いしまーす。


 

「温めますかー?」


 

 温めもお願いしまーす。

 


「879円です。……1000円からお預かりしますー。御釣りとレシートですー。温め終わるまで少々お待ちをー」



 はーい。


 ちなみに――死ぬほどどうでもいいが――『~円からお預かりします』ってのは日本語として間違っているらしい。『から』って言っちゃうとその直前に言ったものから預かってることになるとか? 1000円札から何を預かってるんだろうね? 


 ……的なことをバイト始めたことに散々言われたなぁ。細かいことまでねちねちねちねち……あのクソ店長め。


 俺のちょっとしたミスをさもとんでもないかのように論って小馬鹿にする癖に、女性店員には媚び売りまくるの本当に勘弁してほしい。俺はお前のストレス発散用の道具じゃねーんだよ。壁でも殴って拳潰れちまえ。


 女性店員を見る目もなーんか怪しいし……って、今の俺って女性じゃん!? え、あのキショいオッサンのエロい視線にさらされる可能性が!? 


 ……ここのバイト、やめようかなぁ。なんか別の仕事を探そうか? ステータスを上げれば土木系もいけるかもしれない。……まぁ、男所帯であろう土木バイトに今の俺が行くことに一抹どころか終末的不安を感じるが。


 若干憂鬱な気分になりつつ、温め終わった弁当と商品を受け取って……あっ、箸もつけてくださーい。……今後のことを考えながらコンビニを出る。


 

「はぁ……アクセスは最高なんだけど、人がなぁ……店長ウザいし天災は天災だし同僚とはほぼ他人だし……って、イイこと全くないな? ちょっとくらい遠くても、ストレスたまらないところに変えるべきか? いやでも、人がいるってことはストレスが溜まるってことだから……はぁ、働きたくないでござるよぉ……」


 

 考えれば考えるほど鬱になっていく。やっぱり社会ってクソだな。人間は繋がることで生きてきた生き物? つまり人と接することが苦手な俺は現代人に向いていないということか? 泣けてくる。


 はー、やめやめ。変にネガティブになっても悪い考えがぐるぐると坩堝に落ちて注がれて争って蠱毒的に勢力を増して最終的に最強最悪の負感情の王(ネガティブシンキング)になってしまう。


 こういう時は楽しいことを考えよう。うん、今夜のご飯についてとか、久しぶりに茜ちゃんに会えることとか。


 ……JCに会えることを喜びとする19歳男性(元)って表現すると犯罪臭がすごいな? いや、俺はただ茜ちゃんとオタトークがしたいだけだよ? 茜ちゃんはVチューバ―も推してるからNOAちゃんについても語れるし……うん、他意は全くこれぽっちも全然ない!! 無いったらない!!


 と、誰に向けているのか分からない言い訳をつらつらと並べつつ、行とは違うルートで帰る。出来る限り人通りの少ないルートを選び、不快な視線の集中砲火を浴びることがないように、人の気配を探りながら、こそこそと進んでいく。


 帽子を目深にかぶって顔を隠し、物音を立てないようにそろそろと。曲がり角では人がいないか道路脇に立っているミラーで人いないよね?(クリアリング) ってしながらコソコソ進む。なんだか無償に段ボールが欲しくなってくるなー。


 けど……うーん、なんだかこのなんちゃって隠密行動、妙に様になってるな? 自分で言うのもアレだけど、気配の消し方というか、足運びというか、体移動というか……身体の使い方が上手くなってる?


 これもステータスが上がったことによる変化なんだろうか? うーん……分からん! 分からんものは考えない! これ、人生を楽しく生きるコツな?


 また今度ゆっくりと確かめよう。今は弁当が冷めるまでの時間と戦いながら人と会わないように帰宅するスニーキングミッションに集中する方が大事。気分は某蛇さんだ。大佐ァ!


 そうやって、路地裏のような細い道をコソコソと進んでいると。



「――――――やめてぇ!!」



 耳朶を打つ、切羽詰まったような声。


 ――茜ちゃん? 


 その声に、聞き覚えがあった。あの子がこんな風に叫ぶなんて……うん、急ごう!


 隠密なんて気にせずに、思いっきり駆け出す。声が聞こえた方向へ。


 そして、より一層細い道の隅。建物と建物の間に出来た薄暗い路地で、それは繰り広げられていた。



「いいじゃんいいじゃん。ほら、お兄さんとイイことしようぜ? ぜってぇ楽しいって、な?」


「ひっでー、そんな嫌がんないでよ。傷ついちゃうじゃん?」


「おら、良いからさっさと来いって言ってんだよ」


「きゃっ」



 うわっ、あんなシーラカンス見たいなナンパする奴まだいたんだ……じゃなくてっ!!


 大学生くらいの男三人と、彼らが取り囲む黒髪の女の子。


 白のセーラーに身を包んだ、見覚えのある顔立ちは――――紛れもなく、寸分の疑いもなく、茜ちゃんだった。

読んでくれてありがとう!! 感想とか評価とかブックマとか、凄く励みになってます!!

ここまで読んでくれた人、良かったらブックマークとか評価とかしていってください。下の☆を青く染めるだけだよ?

それでは、また見て次回!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 生きた化石www例えが良いwww
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ