あさおんだ!?
TSはロマン(挨拶)
てなわけで二話目
「ふぁ~~………うんぅ……んぉ? あ……さ…………?」
目が覚めた。
のっそりと体を起こすと同時に、後頭部に鈍痛が。いてて……。
頭を抑えながら、あたりを見渡す。あっ、もう外が明るい。時計を確認してみれば、時刻は朝八時。今日はバイト休みだったっけ……って、ん?
あれ、俺はなんで床で寝て……あっ、思い出した。
そう言えば、昨日、妙なアプリをインストールして、ガチャやった後、謎の閃光に目を焼かれてぶっ倒れたんだったか。だから頭痛いのね……たんこぶ出来てないかしら。
にしても、あの閃光は何だったんだ? 【STATUS】ってアプリも謎だし……気になることだらけだ。
ただ、寝起きの頭ではろくに思いつかないだろうから、まずは顔を洗ってこよう。
よっこいしょ、と立ち上が……おや?
髪の毛……長くない? 色も変だし……白い? あと、視界に違和感が……?
なんだこれ、成長期? 髪の毛だけ急激に成長して変色までしたの?
いやいや、ンなわけがない。背中どころか腰まで行きそうな長髪に一晩でなってしまうとかありえないから。呪いの人形か何かか。
それと、なんか、手がちっちゃくなってる? 肌も白くて柔らかそうな、無駄な毛なんて一本も生えてないものになっているし……視界の違和感は、これ低くなってるのか。
えっ、ど、どういうこと? 何が起きてるんだ?
近くに転がっていたスマホを急いで手に取り、電源のついていない画面を覗き込む。
黒い液晶に映り込む俺の……顔?
いや、俺の顔じゃないんだが? スマホに映り込んでるの、どう見ても女の子なんだが?
だ、誰だこの美少女!?
この画面を覗き込んでいるのは俺だ。つまり、ここに映し出されているのは、俺の顔でなければおかしい。
つまり……この美少女は俺ということになる。
唖然としつつ、顔をペタペタと触ってみると、画面の中の美少女も同じ仕草をした。
い、いやいや、まだそうと決まったわけでは……今度は、作り笑いをしてみる。……画面の美少女もスマイル浮かべてますね。わぁ、老若男女問わず恋に落ちそうな素敵な笑顔。ふざけんな。
…………あまり、直視したくない現実だが、そういうこと、なのだろうか?
この、俺の語彙じゃ形容不可能なほど可愛い美少女さんが、俺?
俺は、女の子になってしまった、と。
ほーほー、なるほどね? あーそういうこと。かんっぜんに理解したわ。
「――――って、分かるかぁアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!? なんっじゃ、こりゃぁああああああああああああああああああああ!!?」
どーなっていやがる!!? いやマジで、どーなっていやがる!!!?? 声も完全に女のモノになってんじゃねーか!! しかも声かっわよッ!! NOAちゃん並みとかコレマジで俺の声か!!?
うがぁああああああ!!? まーじーでーいーみーがーわーかーらーなーいー!?
誰でもいい……!! 俺に……俺に……この異常事態を説明してくれ……!!
わなわなと震えながら、そんなことを願ってみたが、効果はなく。
がっくしと、『orz』な体勢で崩れ落ちた。
これは……夢? 夢なら冷めて欲しい……さっきからずきずきと後頭部が痛いけど、きっと夢だよね……そうだよね……そうだと言ってよバーニィ……。
その体勢のまま凹み続けること数分。そろそろ現実逃避から帰ってくるべき……なのは分かるんだが、現実とか帰りたくない。
夢じゃないとか嘘……いや、まて。明晰夢という可能性も否定はできない!
男だった俺が美少女になるとか現実なワケないだろうJK(常識的に考えて)!
現実だと認めるには、まだ早い!
そのために…………とりあえず、もう一回寝よう。
今度は、ふかふかのオフトンで、ぐっすりと眠ろう。
きっと疲れてるんだよ、俺。昨日もバイト大変だったし。きっとそうだ。
幸いにも今日は休日だし、一日中惰眠を貪ってもいいかもしれない。
というわけで、ベッドにごーとぅーだいぶ。おやすみなさーい。
…………………………すやぁ。
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
「夢じゃなかった……」
……目が覚めても、現実は残酷だったよ。
これはもう、目を逸らすことはできないなぁ。
結局、夢でもなんでもなく、身体は女の子のまま………。
さらりとした髪を手に取って、ため息を吐く。
それ以外にも……わぁ、胸が膨らんでるぅ……。てことは…………うん、マイサンがないないなっちゃった。まだ一度も使ってない新品だったのに……畜生。
がっくりと項垂れ、また『orz』のポーズに。ふっ、一日に二度もこのポーズをするとは思いたくなかったぜ……つらみ。
……取り合えず、俺の身体がどうなってしまったのか、確認しなくちゃ。
リビングから移動し、浴室へ。全身を映す鏡がそこにはある。
な、なんか緊張するな……。ごくり、固唾をのみつつ、鏡の前に立つ。
――――こ、これは……ッ!!?
驚愕。のちに、絶句。
俺は、あまりの衝撃に、言葉を失った。
それを、なんと言えばいいのだろう。
綺麗。可憐。愛らしい。可愛い。
麗しい。美々しい。清楚。艶美。
艶やかで、端麗で…………ダメだ、足りない。
そんな言葉で形容できるようなモノじゃ、ない。
鏡に映っていたのは、何処からどう見ても完璧な美少女。これが……俺、だと?
ほう、とため息が漏れ出る。驚きが去っていった後には、感嘆だけが残る。
どう言えばいいのだろうか?
小さく卵型の描く輪郭。そこに納まるパーツは造形の神が心血を注いで作り上げたといっても過言ではないほど整っている…………ダメだ、その程度ではない。
白銀に輝く髪の毛はくせ一つないストレート。指を通せば一切の抵抗なくするりと通ってしまう。触り心地も極上だ…………そんな、陳腐な言葉しか出せない自分が、恨めしい。
こちらを見つめる瞳は聖書に描かれる黄金の果実を思わせる。光を反射してキラキラと輝くさまは、夜天に煌めく星々の如く…………そんなものではないと、分かっているのに。
なんかもう、もろもろ投げ出して、『あまりにも!! 顔がいいッ!!』とか『気絶するほど美しいッ!!』とか言ってしまおうか?
自分のものだと分かっていても……胸を押さえて蹲りたくなるほど、見れば見るほど美少女だ。美少女がゲシュタルト崩壊してしまいそう。
でも…………これで、終わりじゃない。
顔は見た。なら、今度は?
ごくり、と。無意識で唾をのんでしまう。張り詰めるような緊張感の中。
身に着けていたモノを……はぎ取る。
鏡に、裸体が映り――――――うっ、わぁ…………。
露になったのは、天上の果実を思わせる極上の肢体。
一応、男性の平均身長あった背丈は、縮み。小柄になった。
しっかりと主張するおっぱい。つんと上を向いたその先端は淡い桜色。
その下は……折れそう。でも、貧相な感じは全然しない。腰から足にかけてのラインはもはや一種の芸術だろ。
しっかし、肌キレー。シミ? くすみ? なにそれ美味しいの? って感じ。ミルクみたいに白いし……なんかもう、ここまでくるとズルいなぁ。
全てが完璧かつ最適なバランスだし、女体の究極系が一つと言っても過言ではないのでは?
この身体を表現する言葉を、俺は『奇跡』以外に持ち合わせていない。
ぺたり、と肌に触れてみれば、非常に柔らかくずっと触りたくなるような感触が返ってくる。うわぁ……うわぁ……。
すっご……いやもう……すっご……これが、俺とか…………うわぁ……。
ぺた、ぺたぺた、ぺたぺたぺたぺた。
ふぅぉおおおおお! や、やわっ、やわっこい……。やべぇ……やべぇ……。
絵面ヤバない? 美少女が自分の身体を恍惚の表情でいじくりまわしているところとか。枯れ老人でもおっ勃ちそう。
てか、ちょっといじり過ぎて、変な気分になってきたというか、変な声がでそ――――。
「ひゃぁ……んぅ……」
…………おおう。
えっ、まって。今の本当に俺の喉から出た声なの? マジで俺の声帯からあんな声出たの? え?
……深く考えるのは、やめよう。あと、身体をいじるのも。
癖になったらヤバそうだし……ネ?
まだ続くぞい