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「君が俺の婚約者ならば、きっと公爵家は幸せになれるのに‥!」


「まぁ、嬉しいわ」



ティファニーの笑顔に感極まったのか、フィリップは跪いてティファニーの手の甲に口付ける。



「ティファニー嬢‥その美貌は社交界に輝く華になれることだろう」


「素晴らしいわ‥!」


「父上の許可が出たら、ディアンテと婚約破棄をして是非とも君に婚約を申し込みたい!」


「‥フィリップ様」


「もし君と婚約出来るなら、俺は世界一幸せ者だろうね」



ディアンテはスキップしたい気分だった。


フィリップが『父上の許可が出たら、ディアンテと婚約破棄をして是非とも君と婚約したい』と言ったからだ。

公爵家は以前の生活水準に戻りつつある。

上手くいけば、あと数ヶ月でサムドラ公爵家ともおさらば出来るかもしれない。



「それなのに父上はあの地味女の心を惹きつけて、側に置いておけと言うんだ!!本当にどうかしている‥!」


「そうなのね。でも私は私だけを愛してくれる人と結婚したいわ‥」


「勿論だ!俺には君しか居ないッ」


「まぁ‥!」


「それにこの間なんて、婚約破棄をしていいなんて強がってはいたが、結局最後は必死に頼み込んで来たんだ!どうしても俺が婚約者でなければ駄目らしい」


「でも心配だわ‥もし呪われでもしたら。仮にもアールトン家よ?」


「‥あれは御伽噺さ。こんな扱いをしていたって何も起こらないしね。それに彼女は俺の言いなりさ」



それはフィリップが家族の話を出してディアンテを脅すからだ。

ポジティブすぎる解釈に、怒りを通り越して呆れてしまったディアンテは溜息を吐いた。


ディアンテはメロディを守りたかっただけなのだが、何故そんな風に考える事が出来るのだろうか‥。

理解不能な思考回路に、さすがにディアンテは頭を抱えた。




ふと、周囲を見渡してサムドラ家の侍女の姿を探した。

もう侍女の姿は見当たらなかった。


(何だったのかしら‥)



「君は俺の前に舞い降りた幸運の妖精だ‥!ティファニーと呼んでもいいかい?」


「勿論ですわ!嬉しい‥」


「ティファニー、君ともっと早く出会えていたら‥!」


「あぁ、フィリップ様ぁ‥」



ペラペラと薄っぺらい言葉を並べるフィリップに嬉しそうに頬を染めるティファニー。

どうやら輝く未来に向けて楽しそうである。



「ねぇ‥フィリップ様」


「なんだい?ティファニー」


「フィリップ様って‥アルフレッド殿下とは親しいのかしら」


「え‥あぁ、アルフレッドとなら何度か‥‥同じクラスだしな」


「まぁ‥!それは素晴らしいわ」


「え‥?」


「フィリップ様はアルフレッド殿下とお知り合いなんて、将来有望なのですね!」


「そ、そうかい‥?」


「えぇ‥間違いなく!今度、紹介してくださらない‥?」


「ああ‥機会があればな」



伯爵家であるティファニーにとっては公爵家であるフィリップは結婚相手として申し分ないだろうが、そこでアルフレッドの名前が出てくるとなると‥。


(随分と野心家なのね‥)


仮にティファニーの目指している場所がもっと上だとするのなら、恐らくフィリップを踏み台にするつもりなのだろう。



「‥そ、そんな事よりも今度買い物に行かないか?君に似合いそうなドレスがあるんだ」


「本当‥!?さすがフィリップ様、他の方とは格が違いますわ!」


「ははっ、そうだろう?美しい君のためならいくらでも」



話が逸れてしまった為、もうこれ以上は聞かなくてもいいだろう。


フィリップが幸せを掴んでくれそうで何よりだ。

つまり公爵家の事業を安定させたら、サムドラ公爵はディアンテを手放してもいいと思っているという事だ。

それに"婚約破棄"という明るい言葉をフィリップから聞けたのでディアンテの未来も明るい事だろう。


(さて、あと少し頑張りましょう)


ディアンテは音を立てないように、こっそりとその場を抜け出してから軽くスキップしながら歩いて行った。


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