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ディアンテは晴れやかな気分で学園に通っていた。

あの一件以来、フィリップとは会っていない。


卒業パーティーまで、あと一か月と迫った時だった。

そこである噂を耳にする。


フィリップと伯爵令嬢のティファニー・ルルシュが最近、よく一緒にいるというものだった。


ティファニーといえば、とても美しく華やかな容姿を持っている事で有名だった。

同年代の令嬢達よりも頭ひとつ分、飛び抜けた色気と豊満な胸。


とはいってもメロディとマリアムに見慣れているディアンテからすれば、ティファニーの容姿など大した事ないように思ってしまう。


けれど令息達は単純なようで、ティファニーの容姿とテクニックに骨抜きにされていた。


(まさかあのティファニー様がフィリップに‥?)


その噂が気になったディアンテは、フィリップとティファニーがよく話をしているという薔薇園の噴水近くへと向かった。



「ティファニー嬢、君は何て美しいんだ」


「あら、フィリップ様‥もしかして私を口説いているの?」


「あぁ‥君は本当に俺の理想そのものだ」



ティファニーは嬉しそうに微笑むと、フィリップの胸元に寄りかかる。

ティファニーの胸が当たるのかニヤニヤと鼻の下を伸ばすフィリップ。


少し離れた大きな木に隠れるようにして、ディアンテはその様子を見ていた。



「けれど‥フィリップ様はあの‥なんて言ったかしら。アールトン家の令嬢と婚約しているでしょう?」


「あの女の話はしないでくれ‥思い出したくもない!!」


「まぁ‥!」


「ティファニー嬢‥君に比べたら、その辺の石ころと輝きを放つダイアモンドくらい差があるよ」


「うふふ、フィリップ様ったら‥」



デレデレとするフィリップに満更でもなさそうなティファニー。

別にフィリップとティファニーがイチャイチャしようと、何をしようとディアンテは構わない。


確かに地味であるディアンテが悪いというフィリップの言い分も一理あるだろう。

華やかさが重視される社交界では当然の話だ。

けれどディアンテは目立つ事は避けたかった。


しかし、この映像を残せないのは悔しい限りである。

もしフィリップの不貞行為の現場を押さえられたのなら、何のしがらみもなく婚約破棄が出来るのではないだろうか。


今度、ラシードにそんな魔導具を作ってもらおうと心に決めたディアンテであった。



「‥‥けれど公爵家を立て直すまでは、ディアンテの婚約者でいなければならないんだ」


「アールトン家は、本当に幸せをもたらしてくれるのですか?」


「さぁ‥?僕に、あの根暗女の価値なんて分かるわけないじゃないか」



フィリップとティファニーの楽しそうな笑い声が響き渡る。





ーーーカサッ





小さく葉っぱの擦れる音がしてディアンテは振り返った。


(どうしてサムドラ家の侍女が‥?)


よくディアンテを助けてくれる栗毛の侍女が2人の様子をじっ‥と見つめている。


(あの魔導具は‥もしかして!)


栗毛の侍女が持っている魔導具は見覚えのあるものだった。

以前ラシードが開発したものではないだろうか。

ディアンテはその事が気になり侍女に話しかけようと、そっと足を進めた時だった。




「ーーー婚約破棄‥!?」




ティファニーの驚いた声を聞いて、ディアンテは足を止めて2人の会話に耳を澄ませた。

どうやら肝心な部分を聞き逃してしまったようだ。



「そんなことしたら、妖精の怒りを買うわよ?」


「はっ‥大丈夫さ、何たって俺は"妖精のお気に入り"だからね」


「それは本当?フィリップ様、流石ですわね‥!」



(誰がそんな事を言ったのかしら‥)


フィルズ王国では妖精に愛されている人達の事を"妖精のお気に入り"と呼ぶが、フィリップはどう見たって違う。

ディアンテが違うと言うのだから絶対に違う。


妖精に愛されている人間しかアールトン家に迎え入れることは出来ない。

勿論、クレオとラシードはそれに当てはまる。

彼らに共通するのは誠実で優しく妖精が好む清浄な空気を纏った人間だと言う事だ。


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