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ディアンテが立ち上がり、背を向けた途端にコソコソと始まる悪口と不満。



「何て図々しいのかしら‥!あんな土臭いところから格式高いサムドラ公爵家の婚約者にしてやったのに」


「本当、お兄様が可哀想すぎて見てられないわ」


「もっと可愛く愛想のある婚約者だったらフィリップもこんな風にならなかったかもしれないのに‥」


「そうよ‥!やっぱり別の人と婚約した方が良かったのよ」


「役に立つのは妖精の力だけね‥!本当にあるのか分からないけど」


「それすらも怪しいわよ‥偶然良くなっただけじゃない??」



公爵家が立て直したのは"ディアンテ"がいるからだ。

メロディが婚約者になっても、この現象は起こらないだろう‥。

ディアンテが居なくなれば、その効果も薄れてしまう。


アールトン家が表舞台から姿を消したのは、この力が悪用されないように家族を守る為だ。

とは言っても、もうアールトン家にはそんな力は殆ど残っていない。


その力が使えたのは昔の話だ。

今はディアンテだけが、その力を持っている。



「お兄様にはもっと美しい人と婚約してもらいたかったわ‥!」


「お、おい‥‥まだ」


「どうせ聞こえはしないわよ‥!それにこんなに地味だったら社交界でも使えないわ!本当に先が思いやられるわ」



(‥全部聞こえているわ)


せめてディアンテの姿が完全に見えなくなってから言えばいいのに。


それとも敢えて聞こえるように言っているのだろうか。

ディアンテの前では辛うじて良い顔をしている公爵夫人も、ディアンテが居ないところでは暴言三昧だ。


ディアンテがこれだけ嫌がらせを受けても黙っているのは、アールトン一家が幸せに暮らす為だ。


ディアンテは御礼を言って栗毛の侍女にタオルを返す。

いつもディアンテに親切な栗毛の侍女のお陰で、ディアンテはとても助かっていた。


何故ディアンテに優しいのかが気になるところだが、今はそれどころではない。

子爵家に帰り、どうバレないように動くかを考えなければならないからだ。


ディアンテは馬車に乗り込み、眼鏡を投げ捨てると重たい溜息を吐いた。





最近、あの時の懐かしい夢を見る。



『1つだけ、お願いがあるんだ‥』



頭の中に響くのは、ある男の言葉‥。

ディアンテは静かに瞼を伏せた。













ディアンテが馬車から降りると侍女のリサがすぐにディアンテの側で声を上げる。



「お嬢様‥!これは一体」


「しっ‥リサお願い。急いでドレスを変えて頂戴」



ディアンテは指を立てて口元へ。



「ですが‥」


「お願いリサ‥!お母様やお姉様にバレる前に早く」


「‥‥はい」



リサは納得いかない様子でディアンテを見つめた後に、静かに頷いた。

ディアンテは誰にも見つからないようにと、部屋へと走った。


(こんな姿を見られたら大変だわ‥!)


急いでドレスを脱ぎ捨てて、眼鏡を綺麗に拭き取る。

そして新しいドレスに着替えて、髪をいつも通りに整えていた時だった。




ーーーコンコンッ




夕食の時間を知らせるノックの音。

ディアンテは安心して息を吐き出した。


(夕食の時間までに、なんとか間に合った‥!)



「ありがとう、リサ」


「お嬢様‥私は納得してませんから」


「分かってるわ」



ディアンテは公爵家に侍女を1人も連れて行かない。

それには勿論、理由がある。


大切なリサや、子爵家の為に働いてくれている侍女を連れて行けば、必ず何か言われて嫌がらせを受けるに決まっている。


それにディアンテがこんな扱いを受けていると知られたら、間違いなくメロディやマリアムはショックを受けるだろう。


ディアンテが侍女を連れて来ない様子を見たサムドラ公爵達は、ディアンテが貧乏すぎて侍女を雇えないと勘違いしているようだった。


実際、素朴な暮らしではあるが不自由はしていない。

だから、ディアンテが受けている扱いは家族にバレてはいけない。

心配を掛けたくないからだ。





ディアンテは家族が待っているダイニングへと急いだ。

マリアムとメロディの希望で家族揃っての夕食が基本になっている。



「遅れて申し訳ございません‥!」


「‥大丈夫?ディアンテ」


「ラシード兄様、ありがとうございます」


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