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ギラリとフィリップを睨みつけるライラックの瞳。

小さな口元が開かれて、音を紡ぐ。







「ーーーーディアンテ・アールトン、と申します」







フィリップの喉が小さく鳴った。


あまりの驚きに、声が出なかったフィリップは目を見開いたまま動けない。

周囲も言葉を発する事すら出来ずにディアンテを見つめていた。



「‥‥は」


「‥‥」


「ディ、アンテ‥?」


「そうだよ。アールトン子爵の次女‥‥君も良く知っているだろう?」



クスリと笑ったアルフレッド‥‥辺りは静寂に包まれていた。

いつも地味なドレスを着て、眼鏡と髪で顔を隠していたディアンテの素顔は‥。



「ディアは僕の恩人なんだ‥‥とても昔の話なんだけどね」


「‥っ、‥ぁ」


「どうしたんだい?フィリップ‥顔色が悪いね?」



先程のアルフレッドの言葉をフィリップは思い出していた。



『彼女は少し前まで他の奴の婚約者だったんだ』


ディアンテの少し前の婚約者‥それはフィリップだからだ。


『酷い扱いを受けていた‥いつも暴言を浴びせられて、有りもしない噂を流されて‥‥仕舞いには頭から紅茶を掛けられたこともあったらしい。それに婚約破棄の際も有り得ない辱めを受けたんだ』


何故、そんな事をアルフレッドが知っているのか‥‥その理由は今はどうでも良かった。

アルフレッドの言葉に対してフィリップは「誰がそんな酷い事を‥!っ、可哀想に‥」と言ったのだ。


『その婚約者の家族にも蔑ろにされていたんだ‥』


つまりディアンテに酷い扱いをしていたのは、フィリップとフィリップの家族‥‥サムドラ公爵家を指す。


そしてフィリップは「こんな美しい御令嬢を虐げていたなんて信じられない‥!なんて愚かな奴等なんだ」と。


何も知らないフィリップはペラペラと自分の愚かさを自分で責め立てていたのだ。



「ーーーッ!!」



フィリップは呆然と立ち尽くす。



「‥‥そ、んな‥嘘だ」



目の前の現実を受け止め切れないのだろう。

ガクガクと震えるフィリップの足は今にも倒れてしまいそうだ。


そんなフィリップを見て、アルフレッドは続けた。



「ありがとう、フィリップ」


「‥‥ぇ?」


「君が婚約破棄してくれたお陰で、僕はディアンテと婚約する事が出来た」


「なっ‥‥何故、そんな‥」


「あぁ‥僕の愛が重たすぎたみたいで、ディアンテは僕から隠れていたんだ」


「‥ッ」


「もっと早く気付けていたら、救い出して守ってあげられたのに‥」


「‥‥‥っ、」


「その婚約者の男は最悪な奴でね?こんなに素晴らしいディアンテに暴言を吐き、罵って‥‥なんと卒業パーティーで手を上げたんだ」


「や、やめてくれ‥ッ」


「やめるわけ、ないだろう‥?」


「ヒッ‥!!」



ガタン‥という大きな音とともにフィリップは尻餅をついた。



「あっ、謝るから‥ッ!!」


「謝罪なんて必要ないよ?だって君たちは‥」



フィリップは先程のアルフレッドの言葉を思い出す。





『本当にね‥この国から消してやりたいくらいだ』






(け、消される‥?)


フィリップは何度も口をパクパクと動かした。




「ちなみに君達の愚行はメロディ・アールトンの婚約者であるラシード・ルードルフ‥‥ルードルフ侯爵家の優秀なスパイが記録していたんだ‥今日みたいな祝いの日に流すにはピッタリだろう?」


「あ‥っぁ‥‥!」


「‥‥その後、サムドラ公爵家はどうなると思う?」


「ーーッ」


「それはもう‥‥ねぇ?」


「そ、んな‥!だっ、だって、ディアンテは」


「軽々しくディアの名を呼ばないでくれる?」


「ヒッ‥、っ!?」


「フィリップ‥‥明日から君たちは、こんな生活出来ているのかな?」


「ーーッ」


「最後の晩餐を、どうぞ楽しんでくれ」



アルフレッドはにっこりと微笑んだ。



「父上の手紙を待つのもいいけれど、僕は自分達からこの国を出ていく事をお勧めするよ」


「ーっ、ぁ‥!」







「‥‥でなければ僕に、呪われちゃうかもしれないね?」








一瞬にして様変わりするアルフレッドに周囲は唖然としていた。

アルフレッドは後ろに控えていた侍従に声を掛ける。



「‥‥‥皆の前で、例のものを見せてくれ」



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