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華々しくパーティーは始まった。



ティファニーは手当たり次第に招待状を送ったのだろう。

溢れんばかりの人々が会場に現れていた。


(なんて女だ‥自分が目立てばそれでいいのか?)


ティファニーはフィリップの結婚相手として相応しくないと思っていた。

見た目以外、良いところなど1つもない。

教養もなければ、品もない。


フィリップという素晴らしい婚約者がいながら、ティファニーは他の令息に腕を絡めて胸を擦り寄せる。


そんな時、遅れてドアから入ってきた人物にフィリップは安心したように息を吐き出した。


(婚約パーティーに王太子を呼べる俺は、やはり素晴らしい男なのだ)



「やぁ、フィリップ」


「アルフレッド、来てくれてありがとう」


「あぁ」


「‥‥ッ!!?」



フィリップは息を止めた。

アルフレッドの隣に居る御令嬢に一瞬で目を奪われたからだ。



「‥どうしたんだい?フィリップ」


「と、隣の御令嬢は‥‥?」



アルフレッドにエスコートされている令嬢は、それはもう可愛らしくフィリップは言葉を失ってしまう程だった。


ミルクティー色の髪は緩く巻かれてハーフアップに纏められている。

クリッとした大きな目は控えめに伏せられている。

長い睫毛が瞬くたびに、そのライラックの瞳に映りたいと願ってしまう。


桜色の唇、白い肌、人形のように整った顔立ち‥‥まるで咲き誇る華のように儚くも可憐な少女だった。

パールブルーのドレスは彼女の肌によく馴染んでいた。


(なんて美しい人なんだ‥!)



「フィリップ‥そんなに見つめられると彼女も困ってしまうよ」


「あ‥‥すまない。あまりにも、その‥‥美しすぎて」


「ありがとう‥‥嬉しいよ」



アルフレッドは本当に愛おしそうに隣にいる令嬢を見つめていた。

初めて見るアルフレッドの表情に、周囲は騒めいていた。



「ずっと、ずっと‥僕は彼女を想い続けていたんだ」


「‥‥そう、なのか」


「あぁ‥やっと幸せにする事が出来る」



アルフレッドの一言には重たい愛情が込められていた。

どれだけ隣の御令嬢を心の底から愛しているのか‥それが伝わるような一言だった。

髪に唇を寄せたアルフレッドに恥ずかしそうに頬を赤らめる令嬢。


その姿にフィリップの頬まで熱くなるのを感じていた。

こんな可愛らしい御令嬢がいたのなら周囲は放っていかなかったろうに。


フィリップからの熱の籠った視線に気付いた令嬢は、不機嫌そうにフィリップから視線を逸らす。

フィリップはすっかり、その令嬢の虜だった。



「‥‥可憐だ」


「彼女は少し前まで他の奴の婚約者だったんだ」


「そうなのか‥」


「酷い扱いを受けていた‥いつも暴言を浴びせられて、有りもしない噂を流されて‥‥仕舞いには頭から紅茶を掛けられたこともあったらしい。それに婚約破棄の際も有り得ない辱めを受けたんだ」


「誰がそんな酷い事を‥!っ、可哀想に‥」



アルフレッドの言葉に周囲はざわざわと騒ぎ出す。

いつの間にかアルフレッドの話に皆、耳を傾けていた。

突然現れた謎の御令嬢に会場の視線は釘付けだった。



「彼女は、その婚約者の家族にも蔑ろにされていたようなんだ‥」


「こんな美しい御令嬢を虐げていたなんて信じられない‥!なんて愚かな奴等なんだッ!」


「本当にね‥この国から消してやりたいくらいだ」



アルフレッドの怒りが滲む言葉に、フィリップは生唾を飲み込んだ。



「彼女を助け出せて本当に良かったな‥!」


「あぁ‥」


「そんな下劣な奴等の顔を是非拝みたいものだな」


「すぐに会えるさ‥」


「え‥?」



フィリップがアルフレッドに言葉の意味を尋ねようとした時だった。



「それより以前の婚約者には謝罪をしたのかい‥?」


「それは‥」


「随分と酷い事をしたみたいだけど」


「別にあの女に謝る事などないさ。今も何も言ってこないし大丈夫だろう!それに妖精の呪いなど下らない噂話さ」


「ふーん、そう‥」


「それよりも‥正式な発表はいつするんだ?」


「準備が整い次第、すぐにでも‥」


「お名前を伺っても宜しいでしょうか‥御令嬢」



フィリップが声を掛けると、ビクリと肩を震わせた謎の令嬢。

そんな姿も庇護欲を誘う。

誰もがその令嬢の名前を知りたがった。


アルフレッドが腰を抱き妖しく微笑んだ。



「自己紹介してくれ‥」


「‥‥」



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