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15.フィリップside①




フィリップは卒業パーティーの後に、父であるサムドラ公爵からキツく叱られた。

サムドラ公爵家には数多くの苦情が寄せられた。


周囲からの冷たい視線‥無表情で無愛想なディアンテを笑い者にしようとしていただけなのに、何故フィリップが恥をかかなければならないのだ。


(‥何もかも、あの女のせいだッ!アルフレッドの奴も一体何だったんだ?)


完璧すぎる王子としてアルフレッドは令嬢達から大人気だった。

フィリップは同じクラスになってから、アルフレッドの存在が邪魔で仕方なかった。

頭も良く成績は常にトップ。

運動もできて、周囲に気も配れるアルフレッドを見ているとフィリップは苛々するのだ。


そんなアルフレッドが同じクラスにいるとフィリップは目立たないし、むしろ冷めた目で見られる事も多くなった。



その癖、何を選り好みしているのか美しい令嬢との縁談を全て断っているようだった。


幼い頃から頑なに婚約者を作らないアルフレッド。

噂ではずっと一途に想い続けている御令嬢がいると聞いた事があった。


(‥そんなの御令嬢達の気を引きたいがための嘘だろう?)


それはフィリップと婚約を結ぶはずだったティファニーも同じようで、卒業パーティーでアルフレッドに媚びる様子を見てフィリップは愕然としていた。


そのあと何とか縁談は纏まったものの、ティファニーの会話の中心は常にアルフレッドだった。





ーー今日は2人の婚約お披露目パーティーだった。





兎に角、ティファニーには金がかかる。

美容代にドレス代、それにパーティーを開きたいと煩くて、最近ではフィリップとティファニーの間には喧嘩が増えるばかりだった。

気も強いしフィリップを立てることもせず、意見ばかりだ。


ディアンテはフィリップに何一つ願ったことは無かった。

それにいつもフィリップの話を最後まで聞いてくれていたのに‥。



そして家族との顔合わせの際、ティファニーはフィリップの妹であるレミレに対して思いきり顔を歪めて「うわ‥まるで豚じゃない」と吐き捨てたのだ。


フィリップは何とか誤魔化そうとしたが、ティファニーは嘲笑うようにしてレミレに暴言を吐き続けた。


レミレは今、ショックで部屋に引きこもっていた。

それでもティファニーは悪びれもなくフィリップに物を強請る。


ティファニーの暴言はフィリップの父親であるサムドラ公爵にも牙を剥く。

「胸ばっかり見ないでよ、変態」

礼儀も立場も弁えないティファニーにサムドラ公爵は怒っていた。

フィリップもティファニーを庇うのは限界だった。


きっとフィリップと結婚できたら贅沢出来るとでも言われたのだろう。

日に日に酷くなるティファニーの我儘。


そんなティファニーにウンザリするのと同時に、物静かで何も文句を言わないディアンテの事を思い出す。

勝手にフィリップが嫌がっていただけで、ディアンテは地味ではあれど悪意ある言葉を吐き出す事も、フィリップの文句も、家族の文句も言ったことはない。


(ディアンテの方がよっぽど‥)


そう思って自分で驚いてしまった。

あんなに邪険にしていたディアンテは、よくよく考えてみれば見た目以外は問題なかったのだ。


ティファニーは確かに美しかった。

それに反してティファニーは見た目以外は最悪だ。


後悔を噛み締めた所で、時は戻らない。

それにフィリップは、あの時大勢の前でティファニーと婚約したと大々的に宣言してしまったのだ。


フィリップは胸騒ぎを感じていた。


それにディアンテと婚約破棄してからというもの、公爵家の事業は再び傾き始めた。

2年前のギスギスとした雰囲気に戻りつつある。

それなのにティファニーは、金を使い続ける。



「あ、そうだわ‥!あの女にも招待状を送っておいたわよ?」


「あの女‥?」


「貴方の元婚約者の地味な令嬢の事よ」


「!!!」


「ほらフィリップ様も見たいでしょう?あの女が私達を見て悲しむところ」


「勝手な事を‥!万が一、妖精の怒りを買ったらどうするんだ!!」


「‥‥え?だってフィリップ様は"妖精のお気に入り"なんでしょう?」


「そ、れは‥」


「もしかして私に嘘をついたの‥?」


「いや、違う‥」



嘘である事がバレたら、口煩いティファニーはフィリップを責めるかもしれない。

もしかしたら卒業パーティーの時のように、フィリップに冷めた視線を送り、馬鹿にするかもしれない。



(前の方が、良かった‥)



気付くのは全て何もかも変わった後だ。



パーティーのためにオーダーしたドレスを着て御機嫌に鏡の前に立つティファニー。

自分の選択が間違っていると認めたくはなかった。


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