来る...「アイツ」が来る...!来るたびに人々を憂鬱にし、絶望に叩き落とす「アイツ」が....来てしまう!!!
「くる...あいつが来る!!」
その男は自分の家でテレビを見ながらそう言いながら頭を抱えて絶望したような顔をした。テレビを見るともうその番組は終わりのようで、最後のじゃんけんのコーナーが映っていた。画面の中のキャラクターは棒の先に丸いパーのイラストが描かれた札を出して手を振る。そしてCMへと移った。
男はとその番組を見ながら「ああ、またこの時が来てしまった...終わりだ!!!絶望だ!!」部屋で一人そう呟く。部屋に誰もいないので良いが誰かがいたら完全に変な奴だ。アイツがやってきて明日から始まってしまうと思うと男は憂鬱で仕方がなかった。
「ああ、憂鬱だ。こんな時は外に出よう...ん?」
男はスマホの振動を感じ取り出して見てみる。それはその男の友人からだった。「大丈夫そうか?」というメッセージが画面に表示されている。今日、男は友人と飲みに行く予定なのだ。「フウ...」と息を吐いて男はジャンバーを羽織った。そして靴を履きドアを開け外に出て閉める。鍵を閉めてポケットに入れて歩き始めた。
その友人と待ち合わせている場所は10分ほどで行ける位置だ。歩行者信号が赤なのを見て立ち止まる。目の前の横断歩道を車がどんどん通過いて行っている。見て青になるとまた歩き始めた。男が待ち合わせている場所に着くと友人はもうすでにいた。近くの居酒屋に入り椅子に座る。
「お前を呼び出したのは聞いてもらいたい話があってさー。俺の職場でなあー」
男の友人は席に着くと自分の職場の話を始めた。近くに女性店員が通りかかるとビールと枝豆を注文する。それが終わるとまた話を始めた。男はその話をつまらなさそうに聞いている。
それを見てその友人も「大丈夫か?」と心配そうに声をかけた。
「大丈夫なわけあるか!!明日はアイツがくるんだぞ!!」
「まーが言ってる」
「お前はいいよなあ...楽しそうで」
「そうか?」
「ああ。アイツがきてもヘラヘラしてられる。ほんと羨ましいよ」
「お前は考えすぎなんだよ」
男は「そうかなあ?」と言いながら肘をつく。先程の女性店員がビールと枝豆を持ってきてくれて、それを受け取ると一気に飲み干し、プハーという声と共に少し強めにグラスを置く。次に枝豆を手に取り中に入った豆を口に運んだ。
「アイツが来るとみんな絶望して憂鬱になるだろ!!」
「それは人によるんじゃないか!!」
「いやそんなことない!!ビールお願いします!」
そう言いながら店員にビールを飲み干したグラスを突き出す。店員はそれを受け取り、向こうのほうに行ってしまった。男はすこし酔いがき始めて口調も少し尖った感じになる。そんな男を見ながら友人はこう切り出す。
「まあ、気持ちはわかるけどな。少し前まではそうだったし」
「だろ??」
「だが今は違う」
「くそー!羨ましい!アイツが、アイツがいなければ良いのに!!!アイツが!!!!」
そう言いながら男は机を叩く。友人は男をだなめながら男との談話を楽しんだ。談話して結構立った頃、「そうだ!」と言いながら時計を見て立ち上がる。
「悪い!用があるんだった!」
「おい、そうか」
「強く気を持てよ」
「あ、ああ...」
友人と一緒に外に出る。そしてお金を払い居酒屋を出た。居酒屋の前で友人と別れ、帰路につく。カフェの前を通ると男が2人なにかを話し合っている。あれ?なんか見たことあるな。お笑い芸人の、名前はえっと...えっと...忘れた。歩いているとカップルと思わしき男女が歩いてくる。それを見ながらアイツの存在でこんなになっているさらに自分惨めさが浮き彫りのなってくるような気がした
歩いて数分、家に帰りテレビをつけチャンネルを変えていく。すると「世界の果てまでイッタリQ」とタイトルが画面に大きく出ている。
これは世界の色んなところに行ってロケをするという番組だ。
「ああ...アイツが来てしまうなんて...」
その番組を見ながらそう呟く。何度も何度も同じことを呟きながら男はテレビを消した。
そういえば明日は会議があったな。嫌だなあ...資料も作らないと行けないし...本当に鬱にでもなりそうだ。
「アイツの存在さえなければ...無ければ...!ああ憂鬱だ!」
いっそのことアイツを消したいとも思った。アイツが...アイツが居るからこういう事になる。アイツさえ居なければ...!とずっと頭の中で考ていた。
だがアイツをどうすることもできない。ただアイツの日を待つしかないのだ。ずっと、ずっと...
誰もが絶望する迫り来る「アイツ」!!果たして人類はどう立ち向かうのだろうか!!!
黒豆パンが送る戦いと葛藤の物語!
『月曜日-Getuyoubi』
2021年6月公開!!
月曜日って1週間の始まりなので