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フラれた秀才は最高の器用貧乏にしかなれない  作者: 他津哉
第二章『過去-傷だらけの器用貧乏-』編
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第40話「強さの意味は?そして拒絶のはじまり」

評価とブックマークがまた増えました!!ありがとうございます。少しでも楽しんで頂ければ幸いです。

 取り合えず俺は目の前のニコニコしている幼馴染をどうするか、それと後ろでニヤニヤしているであろう三人と怨嗟の声をあげている二人への対応をどうするか割と本気で悩んでいた。


「あ~取り合えず、さぁーちゃん? 落ち着いて話せる場所行かないか? ここは商店街のど真ん中だから」


「あ、うん。そうだね。この間母さんにもその事で怒られたんだった……って、そうだった!! 信矢!! 早く逃げよう!!」


「え? だから……どうして?」


 相変わらず狭霧の行動は読める時とそうじゃない時の差が激しい。でも一つ分かるのは何かを絶対に勘違いしてると言う事だ。


「実はここ最近、私は信矢の行動を見守っていたのですっ!! そしてこの間、信矢が無理やり焼肉を奢らされたり、あとはハニートラップに引っ掛けられて、そこの女の……む、胸でニヤニヤしてたりっ!! 他にも余罪多数なんだからっ!!」


「む、胸って、な、何をっ!? さぁーちゃん!?」


「へ~? ほ~? シン坊お前そうだったん? ならまた触らせてやろうか? 

ほ~れほれ、お、ほんとに乳に目が行ってる~♪」


 ちょっと愛莉姉さん、この状況楽しんでますよね?あと揺らさないで……ほんとお願いします。ほら、狭霧これ絶対に泣きそうになってるから、泣く寸前だから煽りは本当にやめて!!


「くっ……やっぱりシンの巨乳好きを知っていて巧みにハニトラを……私の胸さえ成長していれば……ぐぬぅ……」


「ぶっほ……信矢氏!! これは古き伝統の萌え要素の『貧乳はステータス』的な

アレですぞ!!」


「取り合えずサブロー君は黙ろうか? 女の子にその手の話はデリケートな話題だからね? 彼女いない歴イコール年齢だから分からないだろうけど」


 レオさんがフォローに入ったけど、さり気無くサブローさんを一撃で魂ごと昇華させてしまった。エグい……完全に白目じゃんサブローさん、大丈夫です!! 画面の向こうでも平べったくてもサブローさんに嫁はいまぁす!!


「あ~、取り合えず俺らは戻るわ。これ以上注目されんのもな、シン!! 明日報告しろ!! 今日は出なくていい。その子を送ってやんな」


「アニキ……ありがとうございますっ!!」


 そう言うとアニキは颯爽と、なぜか愛莉姉さんは投げキスしてきて狭霧が暴れ出したので頭を撫でて落ち着かせる。竜さんは何も言わず、レオさんは「ごゆっくり」とニヤニヤして魂の抜けたサブローさんを引きずって行った。


 後に残ったのは俺と狭霧だけだった。それを俺は見送ると今度は茫然としていた狭霧に声をかける。


「えっと……さぁーちゃん? 取り合えずここ離れよっか?」


「え……うん……」





 最初は商店街の適当な店にでも入ろうかと考えたけど余りにも人目に付くから商店街を出て近くの公園に来た。そこは昔二人でバスケの練習をしていた場所で、公園の入り口の自販機で自分用に紅茶をそして狭霧にはホットココアを渡す。


「あ……シン。お金」


「いいよ。最近は俺、少し懐が暖かいから奢りだよ」


「でも……うん。分かった……じゃあ今度!! 今度会う時は私が出すから!!」


 ほんとに狭霧は義理堅いな……次回の奢りを予約するなんて……こう言う時は奢るもんだとも思うし何よりアニキならこう言う時は絶対に自分が出すって言うから俺も真似したくなったんだ。


「あ、ココア。やっぱり冬はココアだよね……ってシンは紅茶なんだ」


「ああ。最近は少し飲む機会が増えてね」


 と、言うのもレオさんの彼女さん、もうとっくに復縁して関係も改善したらしい、あの彼女さんは例の事件の後に高校を辞めて今は紅茶の専門店でアルバイトをしているらしく事ある毎に、レオさんはそこで茶葉を買って地下室に持ってくるんで俺や竜さんは紅茶党になってしまったんだ。ちなみに残りのメンバーはコーヒー派だ。


「そっか……ふぅ、少し落ち着いたかも、それで話してくれるんだよね?」


「ああ。まずあの人たちは悪い人じゃねえよ。俺を鍛えてくれてんだよ」


「じゃあ道場の人なの?」


「アニキ……あの大柄の人と、女の人は道場の先輩なんだ。兄弟子、姉弟子って奴だよ。そうは見えないかも知れないだろうけどね?」


 愛莉姉さんの話題になった瞬間に狭霧が明らかにムッとした顔になったけど今は放置して話を続ける。


「ふ~ん……ああ言う年上の女の人とかに教えてもらえるんだったら、そりゃあ毎日一生懸命行くんだろうね……ふ~ん、そうだよねぇ……」


「違うから!! 愛莉姉さんはアニキの恋人だから!! それに愛莉姉さんは道場の師範のお孫さんなんだ!!」


「え……あの人が? 道場にいる女の人ってもっと黒髪でポニテでキリッとした人なんじゃないの?」


「そんな人ばっかじゃないから……でも凄い強いんだぜ? あの人も、だけどアニキが一番強いけどな。この前なんて稽古つけてもらって一発で倒されてボコボコにされたんだ、やっぱあれくらい強くなれないとなぁ……」


 そう言ってアニキや愛莉姉さんがいかに強くて俺を鍛えてくれたのかを話した。

さらに他の竜さんやレオさん後は、ついでにサブローさんについても話していくと徐々に狭霧の顔が曇って行く。


「うん。あの人たちが強いのは分かったよ……じゃあ噂について聞きたいんだけど。シンは、その……ケンカとかしてない……よね?」


「したぜ……何度も。いつも絡んで来るからな……あいつら、だから皆で戦ってるんだ? 俺も負けたり勝ったりして強くなってんだ……」


「っ!? じゃ、じゃあ、学校の不良もシンが?」


 それに無言で頷くと信じられないと言う顔をする狭霧。だから俺はニヤリと口を歪めて一言呟いた。


「だって、先に手を出して来たからさ……なら殴っても問題はねえだろ?」


「なっ……シン!! それは……で、でも……やっぱりダメだよ!!」


「じゃあ俺が殴られても良いのか? そんなんじゃ何も守れないだろ?」


 自分でもゾクッとするくらい低い声が出ていた。俺は小学校の頃のイジメられていた頃を思い出す。耐えて自分にイジメが集中するように、狭霧に害意が向かわないようにそれだけを考えて、ひたすら恐怖と惨めさと辛さに耐えた日々を、でもそんな思いは一週間もしたら吹き飛んで実際はビクビク恐怖に顔を歪ませていただけだった。


「でも……それで信矢が不良になったら……意味無いよ……」


「だけど何も出来なかった時よりは遥かにマシだ。少なくとも俺はそう思う」


 色々やったのに実際は全然ダメで、むしろそんな俺の滑稽な姿を色んなとこで笑われていたのかも知れない。中途半端に出来る器用貧乏、父さんだって俺をそう見ていた。そんな答えの無い問答をイジメの後から考えるようになっていた。


「そんな時だったんだ……アニキと会ったのは……強くなれば勝ち取って守れるって言ってくれてさ、俺を漢にしてくれるって言ってくれたんだ……嬉しかった。初めてなんだ色眼鏡で俺を……中途半端な奴って見ないで、鍛えてくれるって……強くしてくれるって言ってくれたのは……アニキだけだったんだ!!」


「えっ……シン? ちょっと……何を言ってるの? シンパパだって昔から柔道教えてくれてたし、勉強だってクラスで一番出来てたし、それに他にも色んな人がシンを見ててくれてたの私、ちゃんと知ってるよっ!?」


「それで? それで強くなれた? さぁーちゃんも良く知ってるだろ? だから俺は強くなる。強くなって全てを守れるようになれば……あんな惨めな思いも……誰も悲しませる事もさせないで済むから!!」


「それが、シンが変わっちゃった理由なの? そんな……そんな事でシンは変わっちゃったの!?」


 そんな事……狭霧は、君はそんな事なんて言うんだ。誰よりもさぁーちゃんには理解してもらって、俺に共感して欲しいと思っていたのに……。


「ああ、なら理解してくれなくても良いよ。だけど俺は強くなるためにアニキや竜さんと毎日実戦形式の訓練をしてる。だから体中に生傷が絶えないんだ」


「それってケンカの練習をしてるって事!? やっぱりダメだよ!! そんなの強さを理由にして暴力で解決しようとしてるだけ……それじゃ誰かを傷つけるだけだし何よりシンが一番傷つくんだよっ!!」


「ふっ……さぁーちゃんには分からないだろうね……バスケの才能もあって、みんなに囲まれて誕生会? 最近は仲間も増えたみたいじゃないか。良かったね」


 痛い所を突かれた俺は思わず狭霧が嫌がる事を言って無意識に言葉で傷つけていた。見ると明らかに顔色が悪くなってる。俺からこんな事を言われると思って無かったって顔だ。


「なっ、なによ!! その言い方!! 私だって一生懸命やってここまで来たんだよ!! だからシンだって違う方法で一緒に頑張ろうよっ!!」


「さぁーちゃん……いや、狭霧。俺はもう戻らないし戻れない。強さを手に入れて今度こそ……今度こそ、お前を守りたいからっ!!」


「そんなので私は守られたくないっ!! 前みたいに優しいシンじゃなきゃ私は嫌だよ!! だって、そんなの信矢らしくないっ!!」


 あぁ……フラれた。またフラれたんだ。しかも今回は昔の、あの情けない、弱い、見苦しい自分に負けた。もしかしたら俺が昔のように戻ったら狭霧とまた一緒に居られるのかも知れない。だけど……俺はそれでも強くなりたい。だって過去の俺は間違ってるんだから。


「そっか……じゃあこれまでだな。全部話したし、俺が話せるのはこれくらいだ」


「ねぇ!! シン待って!! シンママ……翡翠さんも心配してるんだよ!! きっとシンパパだって、だからもう危ない事はやめよう。私も一緒に行って事情を話すから、そうすれば昔みたいに!!」


 あぁ……イライラするな……頭も痛い。なんで頭痛が急に? そうか今、目の前で狭霧が泣いてるからか……泣かせたのは?そう俺だ。これも俺が弱いから……弱いからこうなる。だから早く強くならなきゃ……俺はそのまま泣き出した狭霧に背を向けて地下室に向かって歩き出した。


「強くなりたいんだ……だから俺は行く……じゃあね。さーちゃん」 


「シン!! 待って……待ってよぉ……」


 今日は戦いたい気分なんだ、アニキ達は驚くだろうけど上手く言えば戦わせてくれるはず……。もう振り返らない、次に会う時は俺が強くなって君を守れるようになった時だから……だから待ってて……。これが俺が拒絶を始めて、そして後戻りが出来なくなった日だ。そして決定的に俺達がすれ違った日の出来事だ。

お読みいただきありがとうございました。まだまだ拙い習作でお目汚しだったかもしれませんが楽しんで頂ければ幸いです。読者の皆様にお願いがございます。


こちらの作品は習作なので誤字脱字のご指摘などして頂けると作者は大変喜びます。どうしても誤字脱字を見逃してしまうので皆様のご協力をお待ちしています。また些細なアドバイスなども感想で頂けると助かります。

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