第1話 Fランク冒険者、転生する。
「出たぜあいつ」「よっ! 晩年Fランク」「昨日はアルテマドラゴンを逃したらしいぜ」「アルテマドラゴンを!? ドラゴン最上位種とはいえトカゲ一匹逃すとわねぇ・・・・・・」
僕の名前はギル。僕は「晩年Fランク冒険者」と呼ばれている。10歳の時に冒険者になってから既に7年が経っているけどいまだにFランクのままだ。今まで倒し魔物の中で一番強いのはレッドドラゴンだし昨日だってアルテマドラゴンを逃がしてしまった。いくらドラゴン最上位だとは言っても所詮はトカゲに羽が生えたようなものである。そんなのを倒せないというのはFランクでもなかなかないことだ。
基本的には8年も経てばCランクにはなれるし魔族くらいなら倒せるようになる。
だけど僕はいつまで経ってもランクを上げることが出来なかった。
その理由は家庭環境、というか生活環境にあった。
小さい頃に僕は育児放棄されてしまった。幸い僕の住む国は孤児を保護する法があったから命は救われたけど普通の家庭に比べればやっぱり扱いは雑で魔法も余り教えてもらえなかった。ふつうの子は1歳から毎日12時間は魔法の練習をするけど僕たち孤児は一日6時間しか魔法を教えてもらえなかった。
元々才能が無かったし魔眼も持ってないし職業は農民だからどう考えても冒険者向きではなかった。
それでも幼かった僕は英雄や勇者と呼ばれる人たちに憧れを抱いて冒険者を目指した。でも結局はFランクからなかなか抜け出せないしステータスレベルも239レベル止まりだった。ふつうの冒険者は500を超えてるのが普通だから僕は底辺中の底辺。ダンジョンも120層までしか行けない。
だから馬鹿にされるのも当然だった。パーティーに入れてもらっても結局荷物持ちにされた。農民という職業は収納魔法に適性があるからだ。
今日も依頼を受けにギルドにきたけど受ける依頼はライトウルフの群れ討伐だ。この程度の魔物を倒すのに普通の冒険者なら一瞬しかかからないが僕は10秒も掛かってしまう。それでも今日出てる依頼の中で僕が倒せるのはこれだけだからこれを受けることに。場所はこの街の西にある森だ。
受動探知を起動するとさっそくライトウルフを見つける。
僕の場合受動探知の精度が低いから半径10キロ圏内の魔物しか発見することしかできない。
早速その場所に向かうとライトウルフ10匹を発見することが出来た。
ライトウルフは火魔法に弱いからフレアサークルを放つ。フレアサークルは敵とその周りを火で覆い尽くす魔法だ。しかしライトウルフはまだ死なないので弱ったライトウルフから順に剣でとどめを刺す。
結局倒すのに25秒もかかってしまった。
「はぁ、どうしてこんなに弱いんだろ・・・・・・」
思わずそう呟いてしまう。
その後落ち込みながら帰路についていると突如受動探知に魔物のようなものが引っかかる。
だけど、ちょっと雰囲気が違う。
しかもどんどんこっちに迫ってくる。
思わず走るがすぐに追いつかれる。
「よぉ小僧。よくも俺の領域に入ってくれたな。今すぐ始末する」
状況が飲み込めず某立ちしていると突如目の前にいる人間が氷魔法を発動してくる。
あれは・・・・・・ブリザードストーム!?
急いで防御魔法を発動するが、
「うあっ!」
「運が悪かったな。じゃあな。」
「や、やめてくれ!」
「残念ながらそれは無理って話だ」
その言葉と同時一気にこちらまで飛んできて目の前で魔法を発動する。それと共に徐々に意識が遠のくのを感じる。
もう少し強くなりたかったな・・・・・・
そんなことを心の中でつぶやく。しかし、残念ながらその夢をかなえることは出来ないまま意識が無くなった。
――しばらく経っただろうか。意識が戻ってきた。確か突然襲われて意識を失ったんだ。記憶を辿ろうとしていると突如大量の情報が流れ込んできた。
「うっ」
大量に情報が脳に流されたことによって痛みを感じる。その後痛みが治まると新たな常識が僕の脳に刻まれる
「僕の名前はカイル?」
今度は新たな記憶を辿っていると部屋のドアがノックされる。
ていうか部屋?
「カイル、もう飯が出来てるぞ。」
「え? あ、うん」
そう返事すると「父さん」は扉を閉める。
今のは紛れもなく父さんだ。ただし僕のよく知る父さんではない。
ただ直感的に父さんだと分かった。これがどういうことか、それは一つしかない。
「僕、転生した?」