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閑話 失いし過去1

すみません。遅くなってしまいました。

これは、物語の主人公。『シエル・オールス』という人物を創り出すのに決して欠かすことの出来ない礎となった『過去』の物語である。






周囲に血で出来た湖が溢れ返る。

積み重なる首なしの死体の山と、地面にゴロゴロ転がる数え切れないほどの生首の群れたち。


死体の種類は様々・・・。

人も亜人もエルフも、魔物も魔族も天使も関係なく地面に物言わぬ骸として転がっている。


そんな地獄と称するのすら生温い状況を作り出したのは一人の男。

それもまだ四、五歳ほどの幼い少年だ。


無造作に伸びた腰下までの黒髪に、長く伸びた前髪が風に靡いた際に見える紅の瞳から物凄い威圧を放っている。


その顔に貼り付けられた歳に似合わない程の鉄仮面。

ピクリとも動くことの無い無表情。


「・・・つまらない」


殺したのは、ただ命令されたから。

別に殺したくて殺したわけじゃない。それでも殺しに対して躊躇いなどこれっぽっちもない。


命令されれば誰だって殺すし、命令に対して不満を持っているわけじゃない。

ただただつまらないのだ。この憂鬱な、理不尽と不条理で溢れ返るクソッタレな世界が。


生まれは平々凡々な何の変哲もない田舎の村。

特別な力などこれっぽっちも持たず、前世の記憶や異なる世界での記憶なんてある訳もない。


それでも、その頃は幸せに過ごしていた。

力も何も持たず、ただあるのは人間離れした容姿のみ。

幼いながらも飛び抜けた容姿のせいで、かなり目立つ事は多々あるが、それでも今では出来なくなってしまった笑顔だって作れた。


平和な田舎の村に生まれ、可愛らしい幼馴染と遊び、ただ毎日平穏な日々を送る。

そんなありもしない事を、いつもいつも気楽に考えていた。


『ソレ』が始まったのは、ある晴れの日の朝のことだった。

いつものように朝早く起き、隣にある幼馴染の家へ遊びに行く。

昼前に家に帰って、家族でご飯を食べるんだ。

今日のご飯は何かなぁ。そんなことを、お気楽に考えながら過ごしていた。


そんな時だった。

日常という名の幸せが、唐突に崩壊したのは。


原因は単純。

人外じみた美貌を持つ彼のその容姿を利用しようと、噂を聞いた貴族の集団が起こした事件である。


幼馴染の女の子、一歳年下のレイシアと遊んでいた時だった。

家の外から、つんざくような悲鳴と怒号が鳴り響く。


慌てて二階の窓から外の状況を見てみると、村人達が兵士達に囲まれ、槍を向けられていた。

すぐ隣の家からは、業火が立ち並んでいた。


「っ!父さん!母さん!」


少年は焦り、後先考えず窓から飛び出した。

──その瞬間、今まで居座っていた家が、爆発した。


見覚えのある人影が三つ、とてつもない爆風に飲まれ吹き飛んでいく。

レイシアの両親と、レイシア本人だ。


「・・・レイ・・・シア・・・?」


飛び降りた際に打ってしまった、傷んだ足を引き摺るようにして歩く。

ただ呆然と、先ほど目にした光景を信じたくないと、そのような気持ちを表すかのようにズルズルと。


やがて吹き飛ばされた人影が見えるところまで歩いた・・・・・・そこで目にしたのは、見るも無残に焼き爛れた三人の姿だった。


「レイシア・・・レイシア・・・あ、ああああああああああ゛!」


壊れたように、叫ぶ。叫び続ける。


「見つけたぞ!」


泣き叫ぶ少年に、兵士達がゾロゾロと集まってくる。


クソッタレな地獄の始まりだった。

次話も閑話になると思います。

こちらの方は書き溜めていないので少し遅めになるかも知れませんが・・・ご容赦ください。

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