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第四話 父娘 街へ行く

お待たせしました。


娘の名が決まった。

『ブラン・オールス』

ブラン。白という意味の古代神葬言語だ。

神を葬った際、俺が使った魔法でもある。

その時の強い気持ちを込めて、白く・・・純粋で美しく、そしてあの時の魔法のように強くなって欲しいという意味が込められている。

なお、古代言語など俺以外には使えない。まず読めはしない。

なぜ俺だけ読めるのかと言うと、文字・・・いや、歪な絵や記号を書いた石碑の記憶を喰ったからである。


さて、何のために名前を付けたのか。その理由は忘れていない。忘れては・・・いない。少なくとも今は。

ブランが何の血を飲むのか、街の女将さんに聞くためである。


「さあて、ブランはなんの血を飲むのかな〜っと」


ジト目で睨まれた。


シエル・オールスは重度の血液マニアである。

と言っても別に吸血鬼などという訳では無い。ただの人間だ。

その理由は、血を吸うことによって血の持ち主のスペック・力を喰らうためである。

大罪の一つ『暴食』。その呪いを身に宿した俺の運命・・・って言うよりはぶっちゃけ趣味みたいなもんだな。

倒した敵の血を飲んで、強くなる。

それはもうかなりの快感だ、などと訳の分からないことをほざいている。

ブランは無言でペチペチとビンタをする。

と、そこでふざけていたシエルの顔が真剣味を帯びる。


「よしブラン。王国まで飛ばして五分で行くか、小走りで三十分間ほどか、ゆっくり歩いて三時間くらいか、好きなのを選べ。」


左手でブランを抱き抱え、右手の人差し指、中指、薬指を立てる。

先から順に、五分、三十分間、三時間だ。

この家から『死者の森』の出口まで約十三ms(約20km)、そこから王国まで一ms(1500m)と少し。

どれだけ飛ばしても五分やそこらで着く距離ではない。普通の人間ならば。

そして、その速度を知らないブランは迷わず人差し指を握った。


「良いぜ。ビビって漏らすんじゃねえぞ?」


その判断をすぐさま後悔する事になるは知らずに。




オリガス王国内、ナンテの街の門。

その門を背後に背負い、これから起こりうるかもしれない恐怖に怯える男が一人。

オリガス王国騎士団副団長。シュバイン・ローツである。

金色の髪にハンサムな顔立ち。

だが、その顔は今や恐怖に彩られ、青を通り越して真っ白な顔色だった。

だが、それも仕方の無いことであろう。

何せなんぴとたりとも近寄らぬ『死者の森』。そこからこの街の方面に向けて、凄まじい砂嵐を作りながら近づいてくるナニかがいるのである。

その遠くからでも分かるほど溢れる強大な魔力は、自分には・・・いや、この国においてたった一人を除けば太刀打ち出来るものでは無いほどに強大なのだ。


「副団長、俺達ここで終わりなんすかね」


部下の一人が諦めたように呟く。


「ははは、私達にはどうしようもない魔力だよね。こんなの・・・あの人しか倒せるはず無いじゃないか」


シュバインはしみじみそう思う。

王国騎士の副団長なだけあって、実力はかなりあるのだ。ただこの王国には神をも殺した化け物がいるのである。

ただ依頼を受ける以外は何処にいるのかさえまるで分からない、あの無表情を貼り付けた鉄仮面。女神のように顔立ちの整った少年が。


「そう・・・ですね。『月光の死神』・・・何人たりともその男を怒らせるな。全ての首が飛ぶ・・・ですか。」


「ああ、彼がいない今、生まれ育ったこの街を守るのは・・・私の仕事だ。」


土煙は今も尚近づいてきている。

だが、『死者の森』の入口付近で、そっとその現象はとまった。

どういうことかと訝しむシュバインや門番達。

だがシュバインだけは覚悟を決めた表情で剣を構えた。化け物との戦い、この街の住人達を少しでも逃せるのならばこの命惜しくない! そう決意して。

・・・・・・向かいうる化け物がまさか最強の『月光の死神』本人だとは思いもせずに。


やがて見えてきた人影。その化け物は自分よりもかなり小さい。

先程までの魔力を感知していなければ、全く警戒などしなかったであろう。

ゆっくりと、油断なく剣を中段に構える。相手の顔が確認出来るほどの距離に来た。

と、唐突に喋り出した相手


「・・・物騒な歓迎だな」


相手の顔を見て、聞き覚えのない声を聞いて、驚愕する。

だって・・・いや、まさか。

この人は・・・世界最強の冒険者で、神殺しで・・・国王の前ですら声など出さなかったでは無いか。

まさか・・・そんな、自分は何をしている?

無意味に、しかも愚かにも剣を向けている。

シュバインは、門番達に震えながら目で合図をした。


それすなわち・・・・・・


「「「申し訳ありませんでした」」」


全ての騎士達が、一斉に頭を地に擦り付けた。

誰一人言葉を発さぬ重い空気の中、死神の鎌を首筋に添えられているような重圧に怯えている騎士達。

そこへ幼子の発した、「だあ〜?」 という声がやけに鮮明に耳に残った。

第五話、午後八時頃投稿予定となっております。

夜ご飯作って洗濯して、書き溜め五話見直しして・・・申し訳ありませんがもう少しだけお待ちください。

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