第三話 最強、名付けする
不安そうに顔を曇らせていた娘を、父親らしく(?)、優しく包み込んだ俺は、改めて現実と向き合った。
前世の名前は真白というらしい。
記憶を覗いたが、見えたのは殆どが前世のものばかりでこの世界での記憶は朧気にしか見えていない。
あんな苦しいことを体験した世界の名前なんて、嫌だし思い出したくも無いだろう。
記憶を消そうと思えば消すことなど容易だが、娘本人がそれを拒んだ。
そのため、この娘は苦しい過去を背負って生きる覚悟などとうに出来ているのだと感じた。
さて、娘の名前だがいかんせん自分は尽く戦闘以外のセンスは皆無だ。
それはもちろん、名前をつけるなんてことも壊滅的なので、変な名前にしたらすまんと先に謝っておいた。
まあ、涙目になって首を横に降っていたが。
まあ、最初は無難にどう育って欲しいかだな。
強くなってほしいのなら『ゴッター』とかどうだろう。神の呼び方を古代魔法言語で読み取り少し変えてみた。
娘に言うとゴミを見るみたいな目で見られた。
神、なかなか強かったんだけどな。解せぬ。
花のように美しく・・・ダメだ。花なんて一度も美しいなんて思ったことねえわ。
そういや俺の見てた世界って色褪せてたな。ホントになんで今まで生きてこられたんだろ。悲しい。
娘の見た目に注目。
前世の引き継ぎで細胞が死んだままなのか、色素の薄い・・・いや、薄すぎる白髪に、赤子特有の産毛。ハゲではない。
その柔らかそうなほっぺたは餅のようにプニプニしてそうでとても愛らし・・・いかん。
瞳は俺と同じで真紅に染まっている。母親も目、赤かったのかな?この世界で純粋な赤い目ってかなり珍しいんだけどな。
今は眠そうに細まっているが、先程までのぱっちり開いた大きく愛らしい瞳。
流石俺の娘だな。可愛すぎる。
まるで『永遠の兎』のようだ。天使って言うなよ?あいつらは常に鉄仮面だから。表情全く動かないから。
同族嫌悪激しかったんだからな、あのときの俺。
永遠の兎って言うのは、全体が真っ白で大きな赤い目を持つ兎だな。
もちろん超かわいい。俺は思ったこと無かったけど、今になって思い出せば超かわいい。
そのキュートな毛皮に包まれた脚から繰り出される蹴りは光の速度を超え、高ランク冒険者の強靭な鎧共々風穴を開ける。
可愛くて強い・・・この娘にはそうなってもらいたいものだ。
ちなみに、名前『エターナルラビット』で提案すると、ペチって叩かれた、頬を。
痛くないけど心に来る。これはかなり。
強いんだよ、本当に。ラビットって何なのって感じで。
その閃光の蹴りは、当たった者を永遠の眠りに誘う。
『永遠の兎』。SSランク指定の殺戮兎なんだけどな。
うーん、そうだな・・・白い、白・・・
「・・・ブラン」
「・・・・・・!」(キラキラ)
おお!始めての反応だ。さっきまで眠そうだった目がキラキラしてる。
かわいい、超かわいいぞ。
ブランって言うのは、古代神葬言語で白とか純白って意味だったはずだ。
古代神葬とかいう物騒な言語は・・・まあいい。
「じゃあお前は今日からブランな。ブラン・オールス」
「・・・・・・」(コクコク)
そうして、娘に名前ができた。
行頭マス明けしてるのに反映されない・・・。
次話の投稿は明日の午後になります