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閑話2nd 力の代償

もうっっっっしわけございませんでしたあああああああああ!

土日が忙しすぎて執筆の時間が取れませんでした。

楽しみにして頂いた読者の皆様に、誠に、誠に心の底からお詫び申し上げます。

許してくださいお願いします。


本当に申し訳ございませんでした

まだ幼きシエルが、攻め込んできた貴族達に連れ去られてから、一月が経った。


無駄にだだっ広い家に、趣味の悪い赤く染まったカーペット。

この家の持ち主はとある男爵位の貴族。

醜く肥えた、ウシガエルが人型に変身したかのような容姿。


頭部にチョロっと生えた薄ら暗い茶色の髪に汗を張り付かせ、肉に埋もれた目や口。

体は横にとてつもなく広く、優雅にソファーに腰掛ける姿はまさに『オーク』のようにしか見えない。


幼いシエルは傀儡だった。

目の前で幼馴染の死を目前にし、息を確認した訳では無いが、自分の中で死を確定させた。

そして・・・、壊れた。

心が崩壊し、何事にも気持ちが動かない・・・生きたままの死体・・・・・・『廃人』に成り下がった。



何も考えず・・・否、考えられずにただ無意味な日々を過ごす。

これといって暴力なんて振るわれたりなどしなかったが、ウシガエル、及びオークの転生体であろう『ズンダー・ブッシャー』男爵の、隠し息子としてシエルは扱われた。


村を焼き払った相手。レイシアの両親を殺した相手。レイシアを・・・大切な幼馴染を殺した、そんな貴族の息子だと扱われる。


訳の分からぬ家庭教師を付け、貴族とは何たるかを延々と繰り返す。

喉を通らぬ全体的に脂ぎった食事に、なにより一番不満だったのが私服。

全てが女子用の物だった。

水色のワンピース。同じ色の下着。無理やりメイドらしき人物に付けられた銀色の髪留め。


この家にある、何もかもに不満があった。

それでも、反抗したくとも体が動かない。空腹で・・・では無く、チラついて離れない幼馴染の焼き爛れた顔が、『お前のせいで』と、そう言っているような気がして。


ただひたすら精神的苦痛を耐える日々。

未だ幼く、なんの力も得ていない彼では何もすることが出来ない。

そんなふうに、今を今日をと暮らしていき、一月。


地獄が・・・、絶望が終わりを告げた。

────更なる過激な絶望を引き連れて。




その日の朝は、いつも通りのクソッタレな日常と同じだった。

メイドに食堂へと連れられ、家主であるウシガエルと共に朝食を食べる。

バリバリぐしゃぐしゃと貪るように食らいつくウシガエルとは反対に、ちょびっとずつ脂の極力乗っていない部分の肉をフォークで食べる。


一、二分でその脂の多さに胸焼けを起こしそうになり、食事を終え部屋に戻る。

どうせ直ぐに家庭教師の人が来る・・・そんなことを考えながら暗闇に染まった・・・・・・・自室に戻った。


「暗・・・?」


戻った部屋の状況に、シエルは困惑する。

彼の与えられた部屋は決して暗くなどない。

部屋には灯りが置いてあるし、鉄格子が嵌められているが、外に繋がる窓だってある。

今はまだ朝のはずだし、いくら何でもこんな『闇』と称せる程の暗さは有り得ない。

困惑し、辺りの闇を見渡していると、


キィィィイイイン。劈くような耳鳴りが響いた。


『力が、欲しいか?』


抗う気の失せるような、そんな魅惑的な声が脳内に響いた。


「誰」


そう聞き返すも、返ってくるのは力を望むか否かの二択の問いのみ。


『力を望むなら、自覚せよ』

「何を」

『汝が侵した、強大な罪を』


そんなことを言われても、シエルは罪など犯していない。

そう、思いたかった。内心自覚していたのだろう。

自身の罪について。


「なんで、僕なの」


幼きシエルにでも、話の内容は分かった。

力をやるから罪を自覚しろと、そう言っていたことは分かる。

それでも、なぜ・・・何故自分なのか。そう聞かずには居られなかった。


『汝、妾と同族なり』


『その他に理由などいらぬ』


『侵した罪を自覚し、力を得て妾達の悲願を果たしてくれ』


聞いている内に、どんどんと人間臭くなってきた言葉使いに、困惑する他ない。


だが、それも仕方の無いことかもしれない。初めは機械的で抑揚の無い女性の声だったのが、懇願するように、心の底から願うように強い気持ちを込めて言い放ったのだ。


機械では無い。正真正銘、キチンと心を持った存在。


「お前は・・・」

『妾は、罪を統べる七人の悪魔達の頂点。

邪神とも、破壊神とも、死神とも呼ばれる・・・堕ちた・・・神』


すべての頂点に立つ存在。神。

それも悪い方の、悪神。

マトモな人間なら、そのような存在の提案を鵜呑みにしたりなど断じてしないだろう。

それでも、今のシエルはまともでは無かった。


「何をすればいい」

『自覚を・・・。罪の、自覚を』


脳に響く声の主は、続けて言う。


『罪の数だけ、その罪の大きさだけ、汝の力は増大する』


『自覚せよ』


『全てを屠る復讐の刃となれ』



罪なら、数え切れぬほど侵した。

産まれてから、自我を得てから、侵した罪は小さいものを入れればそれこそ星の数程というだろう。


この世に産まれて、この容姿のお陰でチヤホヤされて、ワガママに・・・・・・両親に沢山迷惑をかけた。


──── 《大罪・傲慢をその身を宿しました》


成長して、レイシアと出会って仲良くなって・・・・・・ 才能に『嫉妬』した。


──── 《大罪・嫉妬をその身に宿しました》


村での幸せな生活を、なんの根拠も無いのに続くと信じていた。


──── 《大罪・怠惰をその身に宿しました》


村を焼き払った貴族と兵士達、なにより狙われる原因となった自分に、村の皆を見殺しにしてのうのうと生きている自分自身に、イラついた。


──── 《大罪・憤怒をその身に宿しました》


奴らに復讐したくて、ありもしない力を・・・願った。


──── 《大罪・強欲をその身に宿しました》


《大罪を五種、その身に宿しました。

未開眼の罪元が二種存在します。

開眼・・・罪過不足。これより、代償を変更》


《記憶、消滅デリート。大罪・色欲をその身に宿しました》


《感情、消滅デリート。大罪・暴食をその身に宿しました》


《七大罪の開眼を確認。

消失記憶、消失感情をこれに統合。

大罪の意志を背負う者、シエルの種族を【理知なき人間バケモノ】に進化》





『罪を重ねて生きよ、人の子よ』


『汝が罪を背負い続ける限り、妾達は汝の味方じゃ』


『いずれ記憶も感情も取り戻せるであろう』


『願わくば汝が、妾の・・・妾達の悲願を、果たしてくれることを切に願う』


『いつの日か、汝が最大の禁忌『神殺し』の大罪を背負うことを、願っている』


シエルは、復讐の力の代償に・・・『記憶』と『感情』を失った。


その二つが取り戻される時・・・それは、自らの罪を乗り越えた時。


そうしてシエルは、血に染まる人間バケモノに成り下がった。

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