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冒険始めたけど、最初からLv.120だった  作者: 雨音きつねこ
第1章 伝説の幕開け
3/11

3話 緊張の帰宅

ーーーハーレム

 1人の男を美少女たちが囲む。一度は体験してみたいとは思ったことはないだろうか。シオンもそのうちの1人であった。

 そんな夢を見ていた彼に千載一遇のチャンスが到来する。叶うかどうかは別であるが。

 勇者の挑戦が、始まる。





 初めて少女と同じ部屋で寝た宿屋を出て、騎馬車に乗り再びルアメルの家へと向かう。


「シオン、昨日はよく眠れた?」


「ああ、おかげさまで。いい夢見れたぜ」


「おかげさまって、私何かしたっけ?」


 手をあごに当てて首を傾げるルアメル。


「君の存在が何よりの癒しさ」


 声のトーンを低くして言うシオン。はいはい、と呆れる顔をするルアメル。


「もう、釣れないな」


 苦笑いをするシオン。そんなシオンを見ながらルアメルが言う。


「早く帰らないとね、待ってる人がいるから……」


「……え」


 シオンは聞き捨てならない言葉を聞き硬直する。『待ってる人』。まさか。シオンのテンションは急転直下する。


「あ、正しくは待ってる人たち、か」


「ええええ」


 『人たち』!?ルアメルがイケメンたちに囲まれる逆ハーレムを想像する。今からその人たちに混ぜてもらう。なんて考えるだけで目眩がする。


「あの、ルアメル先輩、ちょっといいですか」


「どうかした?もしかして、女の子たちに囲まれるの嫌だったりする?」


「いや、その家で待ってる……女の子たち!?」


 まさかの自分がハーレムになる立場とは考えておらず目が飛び出るシオン。


「やっぱり嫌かな?嫌だったら家の外の倉庫にでも……」


「いや!全然いい!喜んでお邪魔します!」


 今度は自分が美少女たちに囲まれるところを想像する。このラノベにありそうな展開に興奮するシオン。


 ーーー騎馬車に乗ってから3時間近くたった。時刻は太陽が真上にあるから正午くらいだろう。


「お、街だ。少し休もうぜ」


 うとうとしているルアメルに言う。


「うん、わかった、シオン」


 寝起きのような声を出すルアメル。最高に可愛い。


 街の馬小屋に騎馬車を預け、店が並ぶ道に入った。腹が鳴ったことに気づき昼食をとれる食べられる店を探す。


「シオン、あそこの店で休も」


彼女の指差す先にレストランと思われる建物があった。


店に入り、2人席に座る。


「デートしてるみたいだな、これ」


「でーと?シオンの国の言葉?」

 

「うん、すっげー楽しいこと」


「じゃあ、今シオンは楽しいの?」


 僅かに頰を赤らめながら聞いてくるルアメル。


「ああ、最高に楽しいよ」


 少し照れているルアメル。そこに店員が割り込んでくる。


「いらっしゃい、これ、メニューね。決まったら呼んでね」


 居酒屋のようなノリで話しかけてきた女店員からメニューを受け取る。メニューを開き料理を選ぶ。

 実のところ、シオンはこの世界の文字が読めなさそうで、読めるのだ。字は、ひらがなに似ている。違いといったら、全ての字が一筆書きで書かれているところだ。

 シオンとルアメルは同じものを頼んだ。これでこそデート、と感心するシオン。


「食った食った、ごちそうさまでした。」


「はい、お粗末様でした」


 まるで母親のような口調でルアメルが言う。


「よーし、十分休んだし、もう行くか。」


 机に手をつきながら立ち上がるシオン。


「盗人だ!誰か捕まえてくれ!」


  急に聞こえてくる叫び声。シオンの勇者スキルが発動して衝動的に駆け出す。


「あっ、ちょっとシオン!」


 店を出て周りを見渡す。こちらに向かってくる漢が数十メートル先に見える。左手には、ナイフが。


「凶器はずりぃよ……クソジジイ」


 声を低くして小さく呟くシオン。

 漢との間の距離はすでに10メートルを切っている。


「どきやがれ、刺し殺すぞ!」


 漢は走りながら声を荒げる。シオンはビクともせずにその場に立ち尽くす。シオンは恐怖など感じていなかった。全身に力が入る。


「止まれ、悪党がぁぁ!」


 漢の左手首を掴み、背負い投げをする。漢の体は地面に打ち付けられ、口からは泡が出てきている。


「おおおー!」


 周りから歓声が上がる。一斉に大勢の人たちがシオンを囲む。


「やるじゃねぇか、兄ちゃんよ」


 シオンを取り巻く人混みの中から茶髪のいかつい男が近寄ってくる。捕まえてくれと叫んでいた男だ。


「あんた、この町の警備隊に入らねぇか?」


「ありがたいけど、ちょっとやるべきことがまだあってな。気が向いたらまた顔出すよ」


「そうか、それは残念だな。また会おうぜ、達者にな」


 そう言って彼は人混みの中に紛れ、見えなくなった。

 優越感に浸るシオンはふと思い出す。


「ルアメル!」


 人混みを抜け、走って店に戻る。

 

「いない……!」


店のカウンターにいるオーナーに叫ぶ。


「紺色の髪をしてて、えーと、超可愛い女の子どこに行ったか分かるか!?」


「あの子ですか、確か数分前に慌てて店を飛び出していきましたよ。まだ街の中にいらっしゃると思いますよ」


「そうか、ありがとな!」


 そう言い放って店を飛び出すシオン。


「おーい!ルアメル!」


 大声で叫ぶシオン。しかし街の賑わいのせいか、全く声が遠くに届かない。


「くそ、探すしかねぇか」


 小さく呟き、広い街を全速力で駆け出す。







「うぅ、ママ……パパ……」


 5歳の彼は迷子になっていた。大型デパートでの迷子は大人でも探すことは困難なことである。何をすればいいのかわからなかったシオンはたださまよっていた。

 つい先程まで、おもちゃを買ってくれない両親を嫌に思っていたシオンだが、今は会いたくて仕方がない。横を通っていく大人たちは彼を目にも入れずに歩いていく。


「ママ……パパ……」


 もうこの言葉しか口からは出なくなっていた。

 すると、カバンの店に両親と思われる男女がいた。


「ママ!パパ!」


 万遍の笑みをして駆け寄っていく。

嬉しくて、嬉しくて。


「どうしたの?迷子かな?」


 人違い、だった。ついにその場で泣き崩れてしまったシオン。

 その後、迷子の放送をしてもらい両親に会うことができた。


「もう、心配したでしょう!これからはしっかりママと手を繋ぐこと、分かったね?」


 母親に優しく叱られるシオン。おもちゃの件とは違って素直に頷いた。


「さぁ、家に帰るぞ」


シオンは両親と手を繋ぎ駐車場へ向かう。会えた喜びが心を満たし、背の低いシオンは両親を見上げて言った。


「ママ、パパ、ありがとう」







ーーー1時間が過ぎた。なかなかルアメルが見つからない。


「全く見つからねぇ」


 息を荒い。もう足が棒のようだ。しながら再度周りを見渡す。

小さな店の前に紺色の髪をした少女が立っていた。


「ルアメル!ったく、探したぜ」


 少女が振り返る。違う。人違い、だ。額に汗をかく。


「ごめんなさい、人違いです」


 それだけ言ってまた走り出そうとする。


「うわっ!」


「きゃっ」


 誰かにぶつかった。目も合わせないでお互いに謝る。


「ごめんなさい、ちょっと今人を探してて……」


「わ、私こそごめんなさい、私も人を探してて……」


 偶然だな。なんて思っていられなかった。


「は!?」


「え!?」


 同時に声を出す。そこに、彼女はいた。


「ルアメル……見つかった……」


 その場に倒れこむシオン。


「だ、大丈夫!?シオン!」

 

「大丈夫だよ、んなことより…どこにいたんだよ。死ぬほど探したよ」


「私も探したんだから!心配したんだから!……シオンのバカ」


「な、バカって……とにかく見つかってよかった」


 シオンは彼女の手をとって立ち上がり、はぐれないように、その手を繋いだまま馬小屋へ向かった。


 あたりはもう暗い。空にはシオンのいた世界では見られない星々が輝いている。

 周りに宿屋がないことから今夜は狭い騎馬車で夜を過ごすことになった。

 今日の迷子で疲れたルアメルは既に夢の中にいる。

 シオンは美しい夜空を見ながら深い眠りへと落ちていった。


ーーーーーーーーーー


「…きて、ねぼすけさん」


 目を開ける。椅子に横になって寝ていたためか腰が痛い。目の前にはルアメルが座っている。


「おはよう、ルアメル」


 大きなあくびをしながら起き上がるシオン。


「もうすぐ着くよ、お家」


「マジか!」


 一気に眠気を吹き飛ばすシオン。

頬を両手で叩き、顔を引き締める。


「ど、どうしたの?急に気を引き締めて」


「人生初のハーレムだ、絶対にかっこよく決めてやる」


「はーれむ……どういう意味があるの?」


 興味を示すルアメルにシオンは堂々と答える。


「男の夢、と言っておこうか」


「男の人の……夢……なるほど」


 なぜか納得できているルアメル。


「あ、あれが私たちの家、大きいでしょ」


 少し自慢げに言うルアメル。彼女が指す先には


「でかい、洋館……」


があった。


今回も読んでいただきありがとうございました!シオンのハーレム作戦はうまくいくのか…今後にご期待ください!

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