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冒険始めたけど、最初からLv.120だった  作者: 雨音きつねこ
第1章 伝説の幕開け
2/11

2話 冒険始めました

 洞窟で、夢で出会った魔獣を瞬殺し、美少女を助けたシオン。

 助けた少女と一緒に少女の家に帰ることにしたシオンだが、待ち受けていたものはあまりにも長い『旅』だった。




 洞窟の外に出ることができた。まだ日が照っている。


「森?」


 シオンは辺りを見回す。木々が生い茂っている。針葉樹だろうか、先の尖っている木ばかりだ。周りには集落のようなものは見られず、人気もない。


「あ、あのさ、ちょっと聞いてもいい?」


 隣に立つ少女に話しかける。あまり同年代の異性と話した経験のないシオンにとって、美少女に話しかけるだけでも手に汗を握ることである。


「どうかした?」


 少女がこちらの顔を覗く。彼女の顔が目に入るだけで顔を赤くしてしまったシオンだったがすぐに冷静さを取り戻す。


「こっから君の家までどんくらいかかる?」


「うーんと、だいたい3日くらいかな」


「ああ、3日か、3日ね。分かっ……は!?ごめん、聞き間違えた。もっかいお願い」


「ここからだいたい3日くらい、遠いかな?」


「遠い!すげぇ遠い!」


 3日という短いようで移動するには長すぎる時間を聞き意気消沈するシオン。


「で、でも森を抜けたら私騎馬車が待ってるから大丈夫、そんなに落ち込まないで」


 膝をつき頭を抱えるシオンに優しく声をかける少女。


「とにかく森を抜けなきゃね、ついてきて」


 少女に置いていかれそうになり慌てて歩き出す。

 周りを改めてよく見ると見たことのない植物が所々に生えている。明らかに食べてはいけない色をしているキノコや身長176cmのシオンとほぼ同じくらいの大きさの植物などがそこら中に根を張っている。

 20分ほど歩き、やっと森を抜けた。そこには少女の言っていた通り、鎧を身につけた白馬が繋がれている『騎馬車』があった。2人ずつ向かい合わせで座れる座席をしている。シオンは少女と向かい合わせで席に座った。


「そういえば、名前聞いてなかったっけ」


 こんな美少女に会うことは千載一遇だと確信したシオンは自意識過剰な自己紹介に打って出た。


「俺の名前はネコツキ・シオン!勇猛果敢、質実剛健。超絶紳士!惚れちゃっても知らないぜ?」


 少女は急な自己紹介に唖然としている。


「んで、君は?」


 急な聞き返しに少し戸惑いながら少女は口を開く。



「私は……ルアメル。ルアメル・アストロエよ」


 まさに異世界を感じさせる西洋風な名前だった。自分の名前をあれほど堂々と言ったことが後悔される。


「ルアメル……か。いい名前じゃん、よろしくな。」


「え……今なんて。」


「だから、いい名前じゃんって、俺みたいな名前より全然マシ、羨ましいくらいだよ。」


 ルアメルは頰を赤らめて目を細くする。


 「ありがとう、シオン」


シオンの見ながらルアメルは言う。あまりの可愛さにシオンも頰を赤く染めてしまう。


「いやぁ、そんなに感謝されると困るなぁ、照れるなぁ」

 

「私、あんまり人に褒められたことなくて……」


 そういえば、とシオンは思い出す。


「怪我は治りそうか?」


「うん、回復魔法の治療を宿屋に着くまでにするから大丈夫」


 怪我の問題が無さそうで胸をなでおろす。


「それじゃあ、出発するからね。しっかりつかまっててね、落ちたら体バラバラになっちゃうからね」 


「さりげなく怖いこと言うな!」


「だって心配なんだもん」


 ぷい、と頰を膨らませて横を向くルアメル。そんな彼女を見ていると


 ガタン


 急に騎馬車が出発した。


 油断をしていたシオンは勢いで前の押し倒されそうになる。視界が暗くなる。いい匂いがする。そして右手には何か『柔らかいもの』が当たっている。


「ん?なんだ」


 状況を整理できないシオン。ゆっくりと前のめりになった体をゆっくり起こす。自分の右手がルアメルの胸に触れていることに気づき慌てて右手を引っ込める。

 彼女の顔は真っ赤に染まっており、眉を寄せて困った表情をしている。彼女の『柔らかいもの』は十分な大きさだ、と確信した。


「っ!その……ごめんなさい」


頭を下げるシオン。なかなか頭を上げられない。気まずい空気が流れる。


「も、もう、あれだけ注意したのに…トンチンカンなんだから。」


「悪かった悪かったって、これから気をつけます、先輩!」


「分かったならよろしい」


 そんな会話をしてるうちに日が沈む時間になっていた。


「今日はあそこの宿屋に止めてもらいましょ」


 彼女の指差す先には木でできた小屋のような建物がある。


「あれが宿屋なのか?」


「うん、あれが今日泊まるところ」


 あまりの小ささに目を疑うシオン。

あの大きさじゃせいぜいベッド2つ入って限界だ。

 近くに来てみてもやはり小さい。本当にここに泊まれるのか。しかし、そんな考えは宿屋の扉を開けた瞬間に消えた。


「異世界ぱねぇ……」


 思わず声を出してしまうシオン。何せ目の前には広すぎる宿屋のロビーが広がっていたからだ。

 しばらくするとルアメルがフロントから帰って来た。何故か彼女の頰がひどく赤い。


「部屋は取れたのでもね、でも……」


「なんだよ、どうした?」


「部屋が一部屋しか取れなかったの」


 ギクッとなるシオン。こんな美少女と2人きりで同じ部屋に泊まる。思春期真っ最中の彼には多事多難なことである。


「悔やんでてもしょうがねぇ。とりあえず部屋に行こうぜ」


下を向き顔を真っ赤に染める彼女に言う。


「わ、分かった」


 部屋の扉を開ける。その光景にシオンは愕然とした。


「ベッドが……1つ」


 シオンの部屋より一回り大きな部屋にダブルベッドが1つ。


「一緒に……寝なきゃね」


「なんかいけないことする気分なんですけど」


 渋い顔をするシオンを見て不思議そうに首を傾げるルアメル。


「と、とにかく部屋に入ろうぜ」


 唾を飲み、深呼吸をしながら部屋にはいるシオン。靴を脱ぐところがない。西洋式だ。


 2人はベッドに座って大きなため息をつく。長旅に疲れたのだ。


「まず、どっちから……」


 言葉を発し、急に言葉を止めたルアメル。シオンは首を傾げる。


「どっちからお風呂……入る?」


「あ、ああ、お風呂ね、お先にどうぞ。俺、後でいいから」


「わ、分かった」


 そう言って立ち上がるルアメル。


「覗いちゃダメだからね!」


「んなことしねぇよ!」


 バスルームに向かう途中、シオンを振り向き注意するルアメル。


 15分強が経ったところでシャワー音が止まった。女子って風呂の時間こんなに長いんだと少し驚くシオン。


「シオン、次……どうぞ」


タオルで体を巻いたルアメルがバスルームから顔を覗かせている。鼻息を荒くし、興奮しかける自分を落ち着かせる。


「ああ、了解」


 風呂場に入る。いい匂いが充満している。ボディソープやシャンプーはあまり変わったところはない。

 4、5分でシャワーの音を止め、すぐに宿屋の寝間着に着替える。


 ベッドを見るとすでにルアメルが半分スペースを残して横になっていた。ベッドはダブルベッドくらいの大きさで半分に分けるには十分とはいい難いが寝ることはできそうだ。


「あ、シオン。ゆっくりできた?」


「ああ、ゆっくりできたよ」


 満足そうな顔をして答えるシオンを見て少し嬉しそうな顔をするルアメル。


「横……来て……寝ていいよ」


 少し恥ずかしそうに言うルアメル。


「ひゃっ!」


 ルアメルの横のスペースにダイブする。驚くルアメルに軽く謝る。


「もう、びっくりするからやめて」


 寝ながら女子とこうやって話すなんて、人生の中で一度もできないと思ってた。


「そういえば、シオンって少し変わった服装してたけどどこから来たの?」


 答えにくい質問だ。ここはシオンにとって異世界。国が違うなどの問題ではなく世界が違うのだ。


「遠く離れた世界から来たのさ」


「もう、変なの。ふふふ」


 微笑むルアメル。彼女の微笑みはシオンの疲れを癒してくれる。


「よーし、明日も頑張って、家に帰ろうぜ。おやすみ!」


「うん、おやすみ、シオン」


 そう優しく微笑み目を閉じる。


 彼、ネコツキ・シオンの冒険はまだ始まったばかりである。


読んでくださりありがとうございました!今後のストーリーの展開にどうぞご期待ください。

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