第14話 異世界部
遅くなりました。
翌日、彼は学校の端にある物置のような教室の扉を開けた。
カーテンを締め切った薄暗い部屋に僅かに聞こえる声。ろうそくの火が揺れる。耳をそばだててみると・・
「我と契約せし堕天使よ、我を異世界へと召喚せよ!」
耳に入ってきた言葉に半ば呆れつつ、黒い服を来た人物に声をかけた。
「あ、あの。」
「私は今忙しいのだ。後にしろ。リットリオ。」
そう吐き捨てるとその人物は再びろうそくになおった。
リットリオはおそらく契約した堕天使の名前だろう。いや、まず堕天使って存在するのか?
「我を異世界に召喚せよ!」
部屋の入り口に釘付けにされている正弘を完全にただの背景としか見ず、ひたすらに契約したらしい堕天使が異世界へ召喚してもらうのを待っている。
流石に待ちきれなくなった正弘は一歩踏み出した。が、
「あれ?正弘?」
甲高い声が響く。
声の主は聞かなくてもわかる。この学校で俺に喋りかけてくる声の高いやつは海里しかいない。
(面倒くさいところに捕まった。)
心のなかでそうぼやくと海里に体をむけた。
「どうしたの?」
「いや、正弘が教室の入り口で突っ立ってたからどうしたのかなと思って。」
「なんか面白そうだったから覗いてた。」
「そこ、異世界部だよね?そういうの、興味あるの?」
知られていたことに驚き、慌てて否定しようとした。
「やっぱりそうだよね。まあそういう年頃だし仕方ないよね。」
そう言って踵を返した海里にせめての弁解をしようと試みた彼は教室から出てきた人物に阻まれ、できなかった。
「さっきからうるさいんだが何してるんだ?」
「え、あ、いや、なんでも。」
「なんでもないならどっかに行ってくれ。」
解放され、海里を追いかけようとするもすでに彼女は何処かに消えてしまった。
(あ〜もう。くっそ。誤解だってのに。いや、あながち間違いでもないか。)
「いや、なんでもある。この部の見学をしに来た坂田正弘です。この部活を見学に来ました。」
「そ、そうなのか!?まさかこの部活に新入部員が入るとは思わなかったんだが・・・。」
(いや、じゃあ、作るなよ。ネーミングがまんま中2病要素全開じゃねぇか。)
「入ってくれるのか。そうか・・・。わかった。」
「いや、まだ入るとは言ってねぇし。」
心で叫んでおくつもりがつい声に出して言ってしまった。
「え、入ってくれないのか??」
崩れ落ちる異世界部の部員。
かわいそうになってきたので半ばあきらめ気味に声をかけた。
「わかったわかった、入るから。」
「おお、ありがとう!!」
さっきの行動が嘘だったようにその部員の姿勢が元に戻った。
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