第10話 死、からの死?
目を開けるとそこはいつも見ている天井だった。
数秒考えた後、先ほど起こったことを思い出して1階に降りた。
「あ〜、まさくん。おはよう!」
「お、おはよう。」
信じられなかった。海里には泣いた後すらなく、そして心配した感じもない。
そこで、俺が刺されてどうなったか、聞いてみることにした。
「なあ、海里。」
「どうしたの?」
「俺さ、昨日帰り道に誰かに刺されてたよな?」
「ん、何の話?冗談でも言っていいことと悪いこともあるよ。」
「どうしたの?熱が出てるの?」
「え・・・・」
「本当に大丈夫?どこかで頭打った?」
「・・・」
「ねえ。」
「あ、だ、大丈夫大丈夫」
「そう。なら良いけど。私もう行くから、あと5分ぐらいで出ないと遅れるよ?」
「わ、わかった。」
「ん、じゃあね。」
行ってしまった。海里は記憶にない様子だった。
これはどういうことだ?昨日あったことが全てなかったことになってる!なぜ?学校で確認のために神村にも聞いてみるか。
教室に着くと、カミが話しかけてきた。
「よう、マサ。」
「よ、よう、カミ。お前さ、怒ってないか?」
「何に対して。」
「昨日の俺に対して。」
「昨日?自己紹介しただけじゃないか。怒るも何もねぇよ。」
「え、自己紹介?」
やはり昨日のことが忘れ去られていた。
これはどういうことか?
いくら考えても答えが出ないのであれば、仕方がない。このことは家に帰ってから考えよう。
家に帰ると、見知らぬ男が海里を包丁で刺していたところだった。
包丁で刺していた、だと!?
「お、おい!海里!大丈夫か!?今、助ける!警察と救急車を呼ぶ!」
「お、お前がまさくんとか呼ばれてたやつだな。この状況を見たらもうだめだな。お前も殺してやる。」
「やれるもんならやってみろ!」
俺は見知らぬ男に飛びかかった。見知らぬ男もまた俺に飛びかかってきた。
そこから1分が経つと、戦いの結果は現れていた。
「ふん、弱いな。少し前に「やれるもんならやってみろ!」と息巻いていたやつがもう死にかけてる。まあ、最期ぐらいは妹と一緒に死にたいだろうから妹はくれてやる。ほれっ!」
掛け声とともに海里が倒れてる俺のところにやってきた。
「まさくん、私、あなたのことが好きだった。まさくんと心中できて本当に良かった。ありがとう。」
という声を聞いたところで、俺の意識は闇に落ちていった。
目を開けるとそこはいつも見ている天井だった。
「海里は?生きてる?俺も海里もともに死んだんじゃ・・・。」
海里、生きててくれ、と思いながら下へ降りていくと海里はいた。
新聞を読んでくつろいでいた。
「海里!」
「!びっくりさせないでよ、まさくん。どうしたの?パジャマのままで出てきて。」
「痛くなかったか?」
「何が?」
「あの男は誰だったんだ?」
「男って?」
「生きててよかった!」
「ねえ、さっきから何の話?全然身に覚えがないんだけど。」
ん?これは既視感だな。
俺はある可能性を見つけて海里に聞いた。
「なあ、一昨日って何があった?」
「え?入学式だけど。」