第2話 グッド!!
リビングに行くと、お父さんが親指をあげてグッド、としていた。ついでに歯を少し出していたが、全然かっこよくなかった。
「海里と正弘がイチャイチャするのはあとででいいから、先に今後の予定を話しておこう。」
これ、あれだよね。俺らがというより俺が話すのを邪魔したの、わざとだよね。さとられまいと、話変えたよね。
さっきから語尾に”ね”ばっかりついてるような気もするが、無視しておこう。
「予定とは?」
「うむ、よくぞ聞いてくれた。これから、月に一回家族会議を開くことにする。だから、行われる日は家にいとけよ。」
この人、時々おかしくなるな。
「ちなみに、俺の職業は中学・高校の体育教師だ。お前らが次に入学するところのな。そこの中学はなぜか中学と高校だけつながっている。私立でもないのに。こんなおかしいことはあるのか?いや、ないだろう!そもそもここの校長は・・・・・・・。」
校長に対する説教が始まった。なぜ、そんな話に?
やっぱり、この人、少しおかしいな。
2時間後。
「だから、やっぱりここの・・・・・・・・・。」
まだ話していた。右手を見るといつ出したのかビールが握られ、左手にはお茶が握られていた。
お茶?
どっちを飲みたかったんだ?ってか、どうやったらそんなふうになる?
結論が出た。
この人には深く突っ込んではいけない。ツッコみすぎると、自分の身が持たなくなる。
「海里、母さん。これって自分の部屋に帰ってても気づかれないのでは?」
「あ、そうだね。私は先に部屋に戻って荷物の整理をするわ。」
「じゃあ、私は買い物に行ってくるわね。」
結局何が言いたかったのかわからないまま、お開きになった。
30分後
誰も聞く人いがなくなったリビングで右手にビールを、左手にバナナを持った体育教師が長くなった話を終わらせようとしていた。
「・・・・・・だから、俺が担任になるかもしれないが、改めてよろしく!・・・・・海里?正弘?圭織さん?あれ?俺は誰に向かって話していたんだろうか。」
その夜。
「じゃあ、風呂に入ったら、正弘は俺の部屋に、海里は圭織さんの部屋に行くこと。解散!」
「あ、私一番ね。」
「じゃあ、お父さんは最後な。」
「なぜ??」
「私は卓人さんの前ね。」
「ていうことは、俺は2番だな。なんかどこかの問題みたいだな。
お父さんは一番最後です。海里さんは1番目です。お母さんは3番めです。さて、正弘くんは何番目でしょう。」
「小学生でも解けるわよ。その問題。」
正弘に対する圭織のツッコミで部屋は笑いに包まれた。今までの家庭では到底ありえない光景だっただろう。そう考えると圭織の再婚は少なからず正弘と圭織に笑いをもたらした。解散とは口先だけで団欒が始まってしまった。
幸い次の日も学校はなく、夜更かししても構わないのだがこの日に限って眠気が襲ってきた。
「あ、俺一番でいい?風呂。」
「いいけどなんで?」
「眠くなってきた。」
「じゃあ今夜はそのまま寝ようか。」
「そうだね。じゃあおやすみ。」
「はーい。」
卓人の一声で4人はそれぞれ散らばった。
部屋に向かおうとした正弘の袖を海里が引っ張った。
「うちのお父さん、ころころ話変わるでしょ。」
「ああ。授業中に普通に釣りの話とかしそう。」
「うちのお父さん釣りはしないよ。」
「例えだ。」
「じゃあ、私はお母さんと少し話してくるから、おやすみ。」
「ああ、おやすみ。」
海里と別れたあと、俺は自分の部屋に行くとベッドに倒れ込んでしまい、そのまま寝てしまった。
「海里と圭織さんは仲良く談笑してるのに、なんで正弘は来ないんだろうか?」
リビングでは無視をされ続けてきた男のつぶやきが漏れていた。