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神聖の転生者  作者: 薄明
閑話2.異世界のその後
82/231

///6 洞窟探検

続けていきます!


「あ、弘樹起きたー!おっそーい!」

「ほんとだ。ねぼすけさん。」

「お前いつまで寝てるんだよ。」



食堂に入るとすでに到着していた3人から熱烈な歓迎をくらった。そういえば、最近の先生の俺らへの対応は友達関係みたいになっている。



「はは、悪い。というかお前いつ起きたんだ?」

「んー?3時間ぐらい前?」

「よくそれだけで足りたな。」

「起きたらそれぐらいの時間で二度寝する気も起きなくてそのまま今に至る、って感じかな。」

「ってことは俺が一番最後ってことか?」

「そうなるね。全くねぼすけさんなんだから。」


「やれやれ。で、今日の夕飯はなんなんだ?」

「起きて早速それを聞くか?」

「人間生理欲には勝てないもんですよ。先生。」

「まあ確かに俺も腹が減った。今日の夕飯、なんだ?」

「今日は、魔獣を結構狩れたので、ちょっと豪華にしてみました!」

「狩ったって言っても6頭ぐらいにゴブリン1頭だろ?」

「そこは気にしないの!」



香菜がそういうと仁美と七花が銅色の鍋を机の上においた。鍋の蓋に開けられた小さな穴から湯気がいい香りとともに立ち昇る。



「お?今日は、もしかして?」

「もしかしなくてもビーフシチューでーす!」

ほぼ毎日料理担当の女子三人が自信満々で蓋を開けた。



いままで外に出ることを許されなかった湯気が一斉に逃げ出す。昼ごはんを食べる機会を失った弘樹の腹の虫が音を立てる。期待に満ちた眼差しで七花を見つめると彼女は目を細め、頷いた。計6本の腕が鍋の横のお玉に伸びる。


全員分がよそわれたところで6人は一斉に皿に向かい、食べ始めた。一口食べ、彼は一言感想を述べた。


「うまい。」


他の人も同じだったようで、口々に感想を述べていった。といっても感想を述べるのが3人、聞くのが3人なのだが。七花も自分で食べて驚いていた。



「味見のときに見たけど美味しいな〜。さすが仁美。」

「いや〜、日本でさ、彼氏の好きな料理がこれだったんだよね〜。」

「え、彼氏いたの?」

「うん、いたよ〜。」



仁美自身は軽いノリだったのかもしれないが彼女の一言は場の話題を変えるのにもってこいだった。



「え、え、どんな人?」

「えー。そんなこと言われても・・・。」

「気になる気になる!よね?」

「いや、俺に賛同求められても・・。」

「気になるよね?」

「え、あ、はい・・。」



七花の「頷け」という視線に押されて渋々頷いた弘樹。隣を見ると烏山や先生は苦虫を噛み潰したような顔をしていた。



「ねね、仁美の好きな人ってどんな人だったの?!」

「うんうん!」

「なあ、弘樹、俺らは先に部屋に帰っておこうか。」

「そうだな。それが賢い判断だ。」



ビーフシチューのいい匂いの漂う食堂からひっそりと抜け出してきた三人はドアを出ると大きく息を吐いた。



「やれやれ。なんで女子はあんなに恋バナが好きなのかねえ。」

「というよりゴシップが好きなだけじゃない?」

「いや、違うと思う。」


ドアのところで言い合う三人の横を拠点保護隊の女子が二人、食堂に入っていった。おそらく食堂で七花たちの話に加わるのだろう。食堂は高校で言う休み時間のような騒がしさだった。
























数日が過ぎ、弘樹らがこの生活に慣れてきたころ、今日も弘樹たちは通いなれた森を歩いていた。


「私達のチームの名前、決めてみない?」

「いいね!それ。どんなのがいいんだろ?」

「いや、そこらへんは私達だけじゃなくても」

「あー、そうね。あなたの愛しの弘樹君にでも聞いたら?」

「そんな愛しの、だなんて照れるわ~。」

「「「おほほほほほほほほ」」」

「いや、どこの奥様会議だよ!」



烏山が見事?な突っ込みを披露してくれた。

それにしてもチームの名前を考えるのもいいかもしれないな、そろそろ。



「候補はどんなんだ?」

「私は弘樹に任せる。」

「それじゃ困るんだけど。」



結局その後ゴブリンが出てきたが、すぐに倒すことができ、戦闘中に考えていたのか名前も決まった。



「じゃあ、今日から俺たちは『レッドドラゴン』として活動していこう!」

「なんでお前が指揮を執るんだ、烏山?それと謎の赤竜。」

「まあ、その時の気分だよ、き・ぶ・ん!!」

「気持ち悪っ」

「それはないわ~~。」

「さあ、今日はもっと奥の方へ・・・あれ?」



烏山と喋っているといつの間にか他のメンバーがいなくなっていて俺と烏山のみになっていた。はぐれてしまったのだろう。衣良喜と一緒にいてたら良いのだが。



「はぐれちまったみたいだな。」

「そうだな。でも、ここら辺は何回も来てるし一回宿に戻ろうか。」

「それがいい。」



宿に方向転換し、元来た道に歩を進めていくうちに霧が辺りを立ち込めていった。周りが全然見えなくてそばにいる烏山の姿だけがはっきりわかる程度の。


しかし宿に向かっているのに全然開けた場所に出ない。もう1時間弱は経っている。俺の腹時計では。

烏山との会話もネタがなくなり辺りはだんだん静かになっていった。


と、前と烏山を交互に見ていた弘樹は頭に水滴が落ちるのを感じた。途端、大量の水がザーザーという音とともに二人の頭へと降りかかった。



「雨だ!洞窟を探せ!どっかで雨宿りしないと風邪をひくぞ。」

「わかってる!お、あそこにほら穴があるぞ!そこに入ろう。」

「了解!」



中は大分広く明るかった。道の端に篝火が連なっている。遺跡なのかもしれない。



「どっかの遺跡か?でも雨宿りは出来るぞ。」

「なあ、弘樹。これ、相当奥まで進むんじゃねぇか?行ってみようぜ。超気になるんだけど」

「烏山、今はとりあえず濡れた服を乾かそう。上着はそこにかけておく。」

「ああ、わかったわかった。・・・なあ、行こうぜ。」

「しょうがないな。行くか、探検に」

二人とも興味津々だった。



もちろんほかのメンバーも心配だが、そこは衣良喜を信用している。無事であろう。先に宿についているのかもしれない。だから心配よりも好奇心の方が勝っていた。


篝火を数えながら奥に進んで行くと、ごく普通の扉があった。


「やっぱり、ここは何かの遺跡か。今までで篝火は112個あったぞ。」

「一つと一つの間が5mぐらいだから全部で500mちょいか。」

「それ知ったところでどうするんだ?まあ、いいや。烏山、この扉、どっちが開ける?」

「いや、それはお前だろ?リーダーだろ!早く開けろよ。」

「今は二人しかいないからそんなの関係ねぇ。お前が開けろよ。瞬間移動で逃げれるだろ、何かあったら。」



扉を開けた時に罠がある可能性がある。二人は扉の前で譲り合っていた。この扉に罠がないと思っている人が見たら割とシュールな光景だろう。



「全然決まらねぇな。こういう時はしょうがない!じゃんけんで決めよう。もちろん、勝った方が勝ちで負けた方が扉を開ける。」

「そういうのは言い出しっぺが負けるんだぜ、烏山。いいだろう。のった。」

「じゃあ、俺が声をかけようか。最初は・・・」

「ちょっと待て!見させてくれ。」


俺は腕を考させて回し手の間の隙間を見た!


「はあ、そんなんで何も変わんねぇんだよ。それで何が分かるのかが分かんねぇ。」

「これは一種の儀式みたいなものだ。もういいぞ。」

「じゃあ、やるぞ。」

「あ、ちょっと待ってくれ!」

「またかよ。今度は何だ?」

「神に祈らせてくれ。」


俺は適当に手を合わせると目をつぶった。


「お前どこの誰に手を合わせてるんだよ!」

「お前の墓。冗談。なんとなく。そういうもん。」

「フラグ立てるな!お前が死ぬぞ。まあいい、行くぞ!最初はグ」

「ちょい待ち!」


俺はもう一つの神聖な儀式を忘れていた。


「なんでじゃんけんだけでこんな時間取らせてんだよ!もうめんどくせぇから俺がこのドア開けるわ!!じゃんけんだけでこの好奇心を抑えられねぇんだよ!いいか!!??」

「どうぞ、どうぞ。」

「っっ!お前、最初からそのつもりでいやがったな!!」

「もう言質は取ったから、開けろよ。」

「くそっ、してやられた!我が友人ながら見事だ。」

「なんだ?中2病か?」

「うるせえな!わかったよ、開けりゃいいんだろ!はいはい、開けます開けます」


烏山に勝った俺は扉に手をかけようとする男から急激に距離を取る。


「おーい、もう開けていいぞー!」

「お前、どんだけ距離取ってんだよ!!死ぬときはお前も道連れだぞ。」

「えー?何か言ったかーー?」

「もういいよ!!こんなとこでコントやってる暇なんかねぇんだよ!!」


烏山が勢いよく扉をあけ放ち俺が地面に手をついて立とうとする瞬間、辺り一面が真っ白に染まった。様に思えた。








「おーい、烏山ー、いるかー?」

「何でお前はそんな暢気なんだよ。おい、弘樹戻ってこい!」


今なんて言ったのかな?俺もどうなったのか知りたいから烏山の所へ慎重に行ってみる。


「それで、どうなった?」

「弘樹、あれを見てみろ!」


烏山が指で示した扉の先に広がるものに目を向けてみる。そこで俺が見たものとは・・・


「えええええええええええええええええええ!!!!!」


そこには金銀財宝がザックザク!ではなく、老人が住むようなこぢんまりとした和室があった。


「で、何でこんなとこに日本の部屋なんかあるんだ?ここ異世界だぞ。」

「それはあれだろ。広場においてある石碑に書かれていたやつが創ったんだろ。」

「なるほど。それはあるけど、とりあえず休憩しよう。疲れた。物色するのはあとにしよう。」

「物騒だな、言葉が。お前はいつからそんなネタばっか突っ込むやつになったんだよ。」

「ちょっと何言ってるかわからない。」

「はあ、もういいや。一旦寝るわ。おやすみ」



この和室にはこたつがあったりもする。なんて快適な部屋なんだここは。ここでずっと住みたいわ。寝よう。

静かな和室には二人の寝息とドアの方からのカチッという音が聞こえていた。















しばらくの後、弘樹は意識を呼び起こした。ぼんやりした視界の中、すべてが横に傾いていた。


「ん・・・。ここはどこだ・・・?」


数秒後、頬が妙に冷たいのに気が付き、自分がなにかにもたれていることを悟った。顔を引きずり、体を起こす。


「あ、そっか。和室みたいなのがあって寝ちゃったんだっけ・・。」


少しずつ冴えてきた頭を動かし、こたつから抜け出す。小さな掛け声をかけながら立ち上がった彼の目に寝転がって熟睡する烏山の姿が見えた。弘樹は小さな笑いをこぼすと和室の中を散策した。だが扉の外に出ようとした時、それに鍵がかかっていることに気がついた。



「おい、烏山。」


こたつで相変わらず熟睡している友人を揺り起こす。烏山は揺らされる手を払いのけると睡眠を再開した。


「こいつ、寝ぼけて手を払い除けやがった!」


小さく息を吐くと先程見ていなかった部屋の奥の小さな扉を引いてみた。扉はうめき声を上げると開いた。


「あ、開いた。ってことはここに入れってことか?」

「ふにゃあ。」



日頃のキャラとは全く違う寝言とともに寝返りをうった烏山に一瞬驚き、笑った。彼の姿にしびれを切らし、頭を叩いた。



「起きろ!いつまで寝ぼけてんるんだ!」

「うるせえよ・・。何だよ・・・。」

「魔獣だーーーー!」

「ええ!やばいやばい!おい、大丈夫か!」

「ようやく起きたか。ねぼすけさん。」

「おい、魔獣はどこだ!?」

「いねえよ。寝ぼけてるお前を起こすための口実だ。」

「っくそ。騙された。もう一度寝ようか・・。」

「させるかーー!」



もう一度こたつの中に潜り込もうとする烏山の肩を無理やり引き出すとその場を引きずり回した。あえて畳の向きに垂直に引きずる。



「痛い痛い痛い痛い痛い!!!」

「起きたか!ねぼすけ野郎!」

「起きた起きたから!やめろ!」

「はい。よく言いました。」



烏山の降伏宣言を聞き、弘樹は烏山の肩から手を話した。彼は畳に崩れ落ちると、立ち上がった。



「で、何のようだ?」

「なんのようだ?じゃねえよ。今どこにいるのかわかってるのか?」

「え?宿舎じゃな・・・。あ、どっかの和室で寝落ちしたんだっけ?」

「いつ襲われるのかわからないこの状況で脳天気にふにゃあ、とか言って寝てる場合か?」

「お前のほうが先に寝落ちしたんだろうが。」

「俺のほうが先に起きたけどな。」

「関係ないだろ。」


「まあな。で、この先どうする?」

「この部屋の奥に扉があった。その先に空間があったからそこに行ってみようと思う。」

「あの扉はだめなのか?外に出られるが。」

「あの扉は鍵がかかってた。何者かによって。そういう魔法かも知れないけど。」

「閉じ込められたってことか。」

「だろうな。俺らが寝てるときに。」



弘樹の一言で二人は笑い出す。小さな空間に笑い声が満ちた。二人は例の扉の前に立つと一度深呼吸をした。



「行くか。」

「ああ、気持ちの準備は?」

「お前が寝てる間にできてるよ。」

「その話は葬り去ってくれ。」

「嫌だね。墓場まで持っていくさ。」

「よし、行くぞ!」



烏山の声で弘樹は扉を開け放った。一瞬視界が真っ白になった。そして二人はひどい咳に見舞われた。



「ゴホッゴホッ!」

「うわへぇ!なんだこれ!」

「ホコリか!」

「何年使ってないんだここ!」



白いホコリの幕が晴れるとその先が見えた。

そこいあったのは、まだ新しそうな本を祀る祭壇で、その先にも少し小さい扉があった。



「なんだ?この本は。」

「おい!そのタイトル、日本語じゃねぇか?今まで日本語以外見てないけど。」

「なんて書いてあるんだろう。えーと、・・・『英雄のひみつ』だって。これ、漫画みたいだぞ。」

「タイトルの下に小さく学〇まんが、って書いてあるじゃないか、パクリだな。」

「そうだな、パクリだな。中身は・・・」



俺はその漫画をぺらぺらとめくっていき最後の方を見ると、まとめが書いてあった。

まとめがあるんだったら、この漫画いらなくね?誰が書いたんだ?と思いながら、烏山に伝える。



「どうやら、この先の扉を開けたところに刺されている剣を抜くことができたら、その剣で魔王を一撃で倒せるらしい。そのときの能力とかはこの先の部屋にあるって。」

「無駄だな、この部屋と本。いらねぇだろ。」

「じゃあ、このドア俺が開けるぞ。」




俺はドアノブに手をかけた。すると、どこかから歪な声が聞こえてきた。その声も徐々にクリーンになっていき聞き取れるようになった。


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