///1 物事の始まり
閑話2です。
あらすじは
「リクがタグリアで死んだ後のタグリアの話、正確にはリクが死んで次の災厄が訪れた時に召喚された勇者の話。」
リクとは全然違う別の主人公がいて、そこが舞台の中心となるので、気をつけてください。リクの話ではありませんからね。
目を開けるとそこには何かが書かれた巨大な石があった。目を細め文字を読む。
が、読めない。どうも現世にはない文字のようだ。と思い、下の方に目を向けると何行にも渡り、いろいろな国の言葉が書いてあり、そのなかに日本語もあった。
次に周りを見渡してみる。すると、やはりクラスメイトがいた。
時間は少し戻り、場所は1-3教室。そこでは数学の授業が行われていた。
「え〜。角Aが60°なのでここの三角比はsin60°とわかるな。じゃあ谷松、sin60°は?」
「えっとー。2分の√3です。」
「うん。正解だ。」
「なあ、机の下に何か書かれてないか?」
「机の下なんかに誰が何を書くんだ?お前、大丈夫か??さっきまで寝てただろ。」
「寝てねぇし、俺はちゃんと授業を聞いてましたー。」
「そこっ!何を喋っている?」
「先生!!床に何か変な模様がありませんか?」
「変な模様!?寝ぼけてるのか?立て!」
「えっ、そんな~~。寝ぼけてませんって。」
首をかしげながら仕方なく立つ。
「寝てるやつ、起こせよー。・・・起きたか―?じゃあ、進め『キーンコーン、カーンコーン』チャイムが鳴ってしまったか。じゃあ、この続きは明日やるということで。級長、号令!」
「起立!」
寝ていたやつがゆっくりと立ちだした。
「気をつけ!」
先生も気をつけをする。
と同時に床になぜか刻まれている五芒星が光りはじめた。それにクラスメイトは気づくも級長の号令がかかる。先生もうろたえている。
教師が級長に手で止めるサインを出す。そして教師は先程立て、と命令したやつを見た。
「このことか!!」
首を縦にふりかけて刹那、五芒星の輝きは頂点に達した。目を抑える間もなく教室はまばゆい閃光に包まれ、周りが見えなくなった。
そして、今。地球とは異なる世界にある英雄の森と呼ばれる場所には42名の人間が巨大石板がある広場に寝ていた。
周りのやつらが起き始めた。俺は何か引っかかりながらもそれを無視してクラスメイトより先に立ち上がり、巨大石板に書かれていた日本語を目で追った。すると、そこにはこう書かれていた。
『この場に来たものは勇者としてこの世界を救うために召喚されたものであり、この文章の下にある能力一覧表に載っている能力を使ってこの森を突破し、ふもとにある村へと進まなければならない。
道中、魔物や動物がいるが、それらを倒し、麓の村に着いたものだけが勇者の資格のあるものらである。なお、裏切り又は暗殺、討ち死したものについては数時間後に元の世界へ戻されるが、この世界と地球は時間軸が違うゆえにいつ戻るかはわからない。
地球の者たちよ。お互いに切磋琢磨し合っていざ麓の村へ行け!
また、自分の能力を見たいものは『ステータス』と言うと、見れる。』
「あ〜面倒くせえ。」
途中まで読んでいるといつの間にか隣に立っていた烏山が呟いた。
「こんなやつ勝手に押し付けても俺はやらねえぞ。早く地球に帰せよ。」
「そんなこと言わなくてもいいじゃないか。俺はやるぞ。・・・・ほら、あそこに能力一覧がある!俺は何の能力かな~?俺TUEEEEしてぇな~。」
「おい、葉鳥、それはライトノベルの読みすぎだよ。」
「えーと、は・・・は・・・・葉鳥・・・あ、あった!!能力は・・・。」
「パンツ盗み。」
「はあああああ?!」
烏山はあざ笑いながら葉鳥を見る。
「ははは。かわいそうに。」
「くそっ!!これは剣術を覚えないとやべぇな。ま、この能力は使わせてもらうけど。」
隣で騒がれているうちに俺は自分の能力を見てみる。
「斉田はさ行だから・・・お!!闇魔法か!ラッキーだな。ちなみに、烏山は・・・瞬間移動か。」
隣のケンカ?が激しくなるにつれてうるさくなっていき、広場に寝ていた男女が起きだしてきた。
そして大半、いやほぼ全員が我が目を疑っていた。目をこするもの、頬をつねってもらい、いたがるもの。逆にその中で冷静で入れたのはごく数人程度であった。全員が自分が林に囲まれた広場だと理解したときには様々な反応が見られた。
前の石板に書かれた違う言語を見て異世界に来たと喜んだものは地球でオタクと呼ばれていたものとそれに準ずるものだけだ。俺もその一人である。
しかし、それ以外の一般学生は混乱していて泣く者や喚き散らす者、ここにはいない誰かに怒る者、と様々だ。
ちなみに、先生は妻と子の名前をぼそぼそとつぶやいていた。かわいそうに思えてくる。
そう考えていると、隣で起きていたケンカがいつの間にか終わっており、級長の西山が
「皆、注目!」
と言っていた。
西山はクラスの皆に慕われており、このクラスには珍しい真面目くんだ。だが俺しか知らない裏の顔もある。
ゲームセンターに入り浸ってはやってくる挑戦者をゲームで叩きのめしていた。偶然そこを通りかかった俺は彼の手際に驚いた。彼の十八番は音ゲーのようだった。手が生き物のように動き、叩いていく。彼が負けたのを見たことがなかった。
「全員いるか?もしいないやつがいたら言ってくれ。」
見渡しながら西山が大声を放つ。
ざわめきかけたとき、地面がゆれた。地震の多発している日本に暮らしている彼らは少しの地震ではあまり驚かなかった。だが、それは地震ではなかった。木々をなぎ倒しながら現れたのは巨大な犬。だがそれでは表現しきれない危険さを感じた。
「なあ。これって相当ヤバイ状況じゃね?」
「それを言う前にこの森から出る道を考えろ。」
広場で震える人間どもをその魔獣は見下ろすと、踵を返した。あっけに取られる彼らの前でゆっくりと森に消えていった。
彼は胸をなでおろすとともに何が起きたのか必死で考えていた。だがわからなかった。どう考えたって現世とは違うのである。さっきの巨大な犬も秋田犬に似ているといえば似ているかもしれないが突然変異であれほど大きくなるものか。
この広場にいたものは自動的に悟っていた。ここは地球ではないと。俺たちをここに呼んだ目的を果たさないと、日本には帰ることができないのだと。
西山はみんなが落ち着いたと思って、石版に書かれている日本文を読み始めた。
「ではここに書かれている文を読むので、静かに聞いておいてください。
『郭歴2400年
この場に来たものは勇者としてこの世界を救うために召喚されたものであり、この文章の下にある能力一覧表に載っている能力を使ってこの森を突破し、ふもとにある村へと進まなければならない。
道中、魔物や動物がいるが、それらを倒し、麓の村に着いたものだけが勇者の資格のあるものらである。なお、裏切り又は暗殺、討ち死したものについては数時間後に元の世界へ戻されるが、この世界と地球は時間軸が違うゆえにいつ戻るかはわからない。
地球の者たちよ。お互いに切磋琢磨し合っていざ麓の村へ行け!
また、自分の能力を見たいものは『ステータス』と言うと、見れる。
また、この世界を救えなかった場合、君たちの故郷ではこの世界の危機に相当する何らかの災害が起きることとなる。
私は郭歴2000年にこの世界に転生させられた。
日本で生活していた身体のままで。私はこの世界で生きていくためにそのころ脅威と言われていた”危神”を仲間たちとともに倒し、その後は1人の仲間と結婚してこの森に住みついた。
ある日の事、英雄と呼ばれていた私は次にこの世界にやってくる脅威のためにこの森をダンジョン化し、闘いに慣れていない人たちへの本格的な訓練場と個人個人の固有スキルを書いた石板を作った。
そうやってこの森で生きていき、郭暦2300年頃、私は死んだ。
今、これを書いている理由は今後ここに来た者の参考となるように配慮をしたいからだ。
私が日本にいた頃に流行っていたものは多分君たちの親世代だろう。もしかしたら先生と同じかもしれない。なぜこの情報が分かっているのかは神様に聞いてくれ。
閑話休題。
君たち勇者にはここにいる仲間やこの世界の仲間と結託してこの世界からその脅威を取り除いてもらうように頼む。
それでは説明に入ろう。
今回の取り除くべき脅威は『魔王ギぺルド』だ。
この魔王は私たちが住む人間界と魔界の利益ある貿易に反対をするものだ。その実力は魔界のトップであるカナティアよりも強く、反対派の仲間たちを引き連れて魔国を乗っ取っている。
魔国は以前までいろいろな種族が住む国家であり、王はその種族から数十年に1回、一人ずつ選ばれてきた。
しかし、ギぺルドがこの国に来てからはギぺルドが王となり、支配をしているうえに我々人間界を犯そうとしている。勇者にはそれを食い止めてほしい。
詳細は国王に聞いておいてくれ。
それでは固有スキルを見せよう。