第26話 カウントダウン2-0
第1章より大分短くなりましたが、もうそろそろ第2章が終わります。
第3章はもっとゆっくりになると思います。ご了承ください。
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卒業まであと2日になった日、小学校生活最後の授業が終わった。
「今日の授業が最後です。皆さん、ありがとうございました。」
最後は新井の算数だった。とはいえ授業ではなく、クラスの中で写真撮ったり、今まで行事ごとに撮ったビデオを見て騒いだいただけだった。今振り返るといろいろなことをやってきたのかと懐かしかった。
(多分授業中にこうやるのはこれが最後かもしれないな。)
「あ、正弘くんコケてますよ。」
「え?どこ?」
「あそこです。」
写っている映像の左の端を颯太が指差す。
なるほど、1人コケている。
「あ、あの運動会のときか。徒競走で前のやつの足が絡まったんだよな。」
「そうでした。ダサいなと思って見てましたけどね。」
「うるさい。」
ふたりで言い合っているとクラス委員の1人がこう、提案した。
「ねえ、みんなで学校探検行かない?」
「学校探検って小1のときにやった?」
「うん。卒業の前にみんなでやるの。」
「いいね。」
「行こう。懐かしいしね。」
誰からともなく廊下に出て歩き始めた。
日光に反射する廊下、水が滴り落ちる手洗い場、点滅を繰り返す電気、ほこりが横に溜まっている階段、いい匂いの漂う給食室、少し古臭い図書室。今思えば何気ない部屋でも見落としているところがたくさんあった。
「楽しかったな。」
「はい。」
(結局正弘くんに告白できなかった。)
感慨にふける二人の後ろで密かに唇をかむ海里。
彼らの小学校の物語はあと1ページで終わりを迎える。
「今日は卒業式です。服装を正してくださいね。」
「はーい。」
数刻の後、体育館から出て来る約90名の小学生。
「みなさーん!並んでください!」
頭の寂しいカメラマンが大声を張り上げ、泣いている子、笑っている子、校舎を見上げる子らを並べる。
3月18日、桜の舞う中、正弘は人生2回めの小学校卒業をした。