第16話 いじめ・・・・・・反撃?
「さて、みなさんお待ちかねの発表タイムです。」
思いっきりハイテンションで宣言する紘毅サイドの反対側では卓真と海里が青い顔を、まどかと颯太は睨み、正弘は白くなるほど拳を握っていた。
もちろん先生がいるはずもなく、ご飯が終わったあとの大広間でやっていた。
「おい、卓真、俯けになりな。」
紘毅がいい、部下たちが無理やり地面に引きずり倒した。紘毅は女子にも海里を襲わせようとしていたが流石にそれは長い長い説得によってなくなった。
「こいつを蹴ってやれ。」
紘毅がいうと部下の1人が卓真の口に綿を突っ込んだ。声が周りにもれないようにするためらしい。全員が卓真を囲み、蹴り始めた。頭、顔、腹、股間。足を踏むやつもいた。そのたびに卓真は絶叫した。
「あいつら!」
飛びかかろうとした颯太とまどかを部下が倒し、こけさせた。
もはや大広間は地獄へと変化していた。殴る音、声にならない声、紘毅たちの笑い声。
「全員」
正弘の口からつぶやきが漏れた。
「なんだって?」
「死ねええええ!」
「は?」
颯太が訝しむのと正弘が飛びかかるのはほぼ同時だった。
止めようとした部下を投げ飛ばし、部下の一人に当てるとその場に置いてあったお盆をフライングディスクの要領で投げ、また1人に当てた。
「よっしゃ!行くぞ!」
正弘の獅子奮迅の動きを見た颯太が動き、部下を投げ飛ばした。
「こいつら、鎧袖一触だ!」
もはや鬼である。まどかもお得意の合気道が爆発し、どんどん投げ飛ばしていった。紘毅たちも黙ってやられるわけにはいかないと立てかけてあった箒で応戦したがふいをつかれて取られ、足をすくわれひっくり返った。
扉の隙間から覗いていた新井は不安になった。
「いつ飛び込んで止めようかな・・・。」
結局怒り狂った正弘が危うくテーブルをひっくり返しかけたところで新井に止められ、事態は収束した。ただ旅館からはしっかり怒られたが。
紘毅たちは正弘が逆鱗にふれたところを見てしまったことにより、怯えて何もできなくなった。この大乱闘は新井と数人しか知らぬまま闇に葬り去られた。
翌日行われた班対抗リレー。スタート直前、堤防の上に佇む複数の人影。紘毅たちは前日の大騒ぎを引き起こしたとして立たされていた。
水泳できず悔しそうな顔をする紘毅たちを眺めながら正弘は冷たい海に飛び込んだ。
噂では遠泳合宿で乱闘騒ぎを起こしたため、先生方にみっちり絞られたらしい。
そして次、何か起こせば修学旅行は行けなくなる、とまで言われたそうでかなり大人しくなった。
あ~あ、逆鱗に触れちゃったよ。