第15話 勝負からの?
遅くなったとぼやきつつ砂浜を歩くとまどかが尊敬の目で見つめてきた。
「なんでそんなに速く泳げるの?」
「そんなこと言われたって。まどかも練習すれば速くなるよ、僕より。」
「どうしたの?」
「何が?」
「いきなり、自分のこと僕って言っちゃって。」
「いや、たまたまだよ。」
全員分測り終わり、ご飯と昼寝(?)の時間も終わり、午後の練習になった。午後は平泳ぎで100mも泳ぐ。明日はクラスの中で班対抗レースを行うらしい。だから今日は、その練習だ。
「おい、正弘、お前が勝ったらなんでも言うことを俺の周りのやつに聞かせられる。その代わり俺が勝ったらその反対な。」
また面倒くさいことを・・。
颯太と正弘は呆れた。
「明日は班対抗だ。どちらが速いかなんてわからないだろう。」
「今日、今からやるんだ。」
「懲りない奴ら。」
どうやらあれだけ絞られても懲りないらしい。
というかもと水泳選手の俺に勝負をのぞむとか馬鹿かよ。
いくら高校の時、選手だったとしても小学生の体格ではそんなに早くは泳げないのだが自覚していないようだ。
しかもなんと新井先生もあっさり許可してしまい、レースをやることになった。種目はクロール100メートル。しかも自分で言いだしたのだ。
どうやら彼は以前、水泳教室に通っていたらしく、自信がある様子だった。
「とはいえあいつ、午前の個人メドレー、俺より遅かったんだよね。」
「行きます!よーい。」
ふと横を見ると自信満々の顔があった。
「ドン!」
の声で防波堤を蹴ると潜って前進した。100メートルは軽いものだった。だが
「ん?」
進めない?!
いたずらに足をかいても進めず、焦った正弘はひとまず浮上することにした。
「何が起きて!」
見ると細い紐が足にかかっていた。その先は防波堤のちかくの消波ブロックへとつながっていた。紐を必死で取ろうとする正弘を尻目に紘毅はゆうゆうと泳いでいた。
「クソっ!」
だからこんな条件を持ちかけたのか。最初からこうさせるつもりで。
紐は固結びされている上に水を吸って固くなっていた。ハサミを持ってこようにも周りには誰もいず、呼びようがない。
「あれ?もしかして。」
泳いで消波ブロックまで行くと紐のが結ばれているところを見た。
「あ、これはずれるんじゃん。」
外し全力で泳ぐもときすでに遅し、紘毅はゴールしてしまっていた。
あわててゴールした正弘を見下しつつ、紘毅は無情にも言い放った。
「俺の勝ちだな。」
「てめえ。せこいことしやがって。」
「気づかないほうが馬鹿なんだよ。」
「うるせえ!」
「じゃあ夕食のときに何してもらうか言うから楽しみにしとけよ。」
悔しくて唇をかんだ正弘の後ろで大笑いしながら去っていく紘毅たちの姿があった。
OH,NO!!